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「どーぞ、汚い部屋ですが」

部屋に入るなり、ももは奥にあるふかふかビーズクッションにダイブした。

「いやーん、やっぱこれ気持ちいい~!ふわっふわで、羊さんみたぁい」
「・・・てか、うちらしかいなんだから、いちいちそっち系になりきらなくていいから」
「そっち?どっちかにゃ???」

――もものやつ、大学生になったら落ち着くかと思ったら・・・。よっぽど、高校のときと違って、ちやほやしてくれる人がいないんだろうな。珍獣扱いというか。


「素敵なお部屋ね、ももちゃん」

一方、岡井さんはものめずらしそうに、私の魔女ルーム(弟は紫ババアの部屋と呼んでいる・・・)を見回している。


「でも、ちょー狭く感じるでしょ。岡・・ちさと、の部屋の半分もないんじゃない?」
「いいえ、そんなことはないわ。この水晶玉やステンドグラスのパーテーションも、とても綺麗。ね、ももちゃん」

――ん?なんだろ、褒められてるのに、なにかが頭に引っかかる。・・・もっと言ったら、微妙にイラッと来る感じ。
そして、それは会話を重ねていくごとに増幅していくようだった。


「お菓子、全然高級品とかじゃないけど食べて?あのチョコのお菓子の新フレーバーで・・・」
「とても美味しいわ。ね、ももちゃんもそう思うでしょう?」
「・・・夏焼先輩の写真、見る?」
「ええ、ありがとう。ももちゃんも一緒に」


「ねー、ちょっとなんなのさっきから!!」

ついに、私の中の違和感が爆発し、ミニテーブルをバンと叩いて立ち上がった。


「ウフフ、やーだぁ、梨沙子ったら。何怒ってるのぉ?」
「あ、あの、あの、えと」
「だってさぁ!」

よっぽど引っかかっていたのか、こんなことで・・・と思うけれど、なぜか涙がにじんできた。
あー、もう。いったん感情的になると、すぐこれですよ。よくないってわかってるんだけど・・・。


「ほら、おいで梨沙子。千聖も。ウフフ、しょうがないなぁ」
「・・・うん」


こんな時は、ももの変わらない態度がとてもありがたい。
ももを真ん中に、3人して大きめのビーズクッションにすっぽりとお尻を落ち着けた。


「おっきいこえ、出してごめんね」

ひとしきりキーキー喚いてみると、なんだか心が落ち着いた。私はおか、ちさとにぺこりと頭を下げた。


「あ・・・そんな、私」
「それで、梨沙子は、何で怒ったのかな?」


ももがまるで、幼稚園の先生みたいな口調で問いかけてくる。そういえば、教職の勉強してるって言ってたっけ。


「だってさぁ・・・」

おk・・・千聖は少し涙目になって、私をじーっと見ている。俄かにそわそわと胸がざわめく。
魔女の宝石の瞳。いつもよりきらきらしていて、その力が、より増幅されているみたいだ。
私はあわてて言葉を紡いだ。


「だ、だって、全然私のこと呼んでくれないじゃん、梨沙子って!ももばっかり!うちに来たんでしょ!なんでももとかどうでもいいじゃんか!」


言い切ってから、まるで小学生のような自分の主張に、じわじわと恥ずかしさがこみ上げてくる。
だけど、言葉にしたことで、自分が思っていることが、正確に認識できたようにも思う。
そうか・・・私、寂しかったのかもしれない。


「だってだって・・・。名前で呼び合うって決めたのにさ、岡・・・千聖、話しかけたら逃げるようになっちゃったし。
てか、全然呼んでくれてないじゃん。今も、ももにばっか話しかけて」
「違うの、それは、すぎゃさ、あの・・・えっと・・・」


また岡井さんは、顔を赤くしてうつむいてしまった。
こういう事態になると、本当に思い知らされる。
私って、気を使われることはあっても、使うことがほとんどないんだな、と。現に、今どうしたらいいのか全くわからない。


「うっふっふっふー♪」

でも今日は、異様に察しのいいももが手を差し伸べてくれる。

「だからぁ、もぉわかっちゃった!千聖、もう“梨沙子”呼びやめたいんでしょー」
「ええっ!」

いや、それはさすがに・・・だって、あんなに梨沙子梨沙子梨沙子って手紙に書いてきたのに。これはももの読み違いというものだろう。


「・・・あの、じつは、ももちゃんの言うとおりで」
「あってるのかよ!」


本当、岡井・・・千聖って、何考えてるんだか。それを察してしまうももも大概おかしいけど、まったくついていけない。一般人の私では。


「どうして呼びたくなくなっちゃったの?」
「えと、それは・・・だって・・・」


岡井さん、ああもう!千聖は、近くにあったコウモリモチーフの人形を抱きしめると、上目づかいで私を見つめてきた。・・だから、そういう態度が有原さんと舞ちゃん(ry


「だって・・・」
「だって、なによ」
「・・・・・・・・・はずかしくて・・・」

言い切ると、岡井さんは完全にお人形に顔をうずめてしまって、もじもじと小さく身を捩り、ついには私に背中を向けてしまった。


「は、恥ずかしいってなにそれ。友達じゃん」
「でも、寮の皆さんはまた違うのだけれど、学校のお友達で、千聖にそんな、お名前を呼ばせてフガフガフガ」
「わかんないよぉ~」

すると、待ってましたとばかりにももがドヤ顔を見せ付けてきた。

「ウフフ、だからー、要はね?千聖は梨沙子とより仲良くなれたって思ってぇ、嬉しくなりすぎちゃってぇ、わけわかんなくなっちゃったんだよね?」
「・・・ええ」
「ええ!?意味わかんない!」


背中を向けたまま、ちらちらとこっちを見てくる岡井さ、千聖はまるで子犬みたいだ。・・・じゃっかんちょっとアホな子ね。


「で、梨沙子も」
「私?」

いきなり呼ばれて、反射的に背筋が伸びる。

「梨沙子、ぶっちゃけ、千聖のこと名前で呼ぶの疲れてきたんじゃない?」
「うっ・・・」

いきなり、核心をつかれた。
ももは岡、千聖とは違うタイプだけれど、やっぱりエスパーさんだから、ごまかしなんて通用しない。
私の考えている事を、いとも簡単に言い当ててしまった。


「千聖の存在が、うっとうしいものということなのかしら・・・」
「違うよ、なんでそう重く取るかな!そうじゃなくてあばばば」

あからさまにシュンとした顔をされて、この私があわあわとフォローに回ることとなってしまった。


「・・・別に、岡井さん、のままでよくない?もう、呼び方で関係が変わるほど、浅い仲じゃないじゃん、私たち」
「すぎゃさん・・・」
「そうそう!そのほうがいい!スギャとか意味わかんないけど、岡井さんは岡井さんで、私はすぎゃさんだよ。ねえ、もどそ?呼び方」

言い切って、なんだかすっきりした気分になった。のどにひっかかったラーメンの麺が、するりと抜けた感じ。


「・・・ええ、わかったわ」

岡井さんも、やっと笑顔でこっちを向いてくれた。


「梨沙子、って呼ばせてもらえて、嬉しかったけれど・・・ちゃんとすぎゃさんの目を見てお話できないのなら、あまり意味がないものね」
「うんうん、そうだよ!」

ほらみろほらみろ!熊井ちゃんめ、人の友情に変な口挟むから、どうでもいいことでこうやって・・・


「それより梨沙子ぉ、もぉおなか減っちゃったよー」
「えー?しょうがないなぁ」

もものワガママきっかけで、ママにお願いしてラーメンを部屋に運んでもらう

「ウフフ」
「いひひひ」

もう、全然変な感じじゃない。以外と切り替えが早く、あっさりしている岡井さんだから、いつまでもうじうじと引きずらないところには助かる。

そして、あきらかに普段よりグレードの高いチャーシュー、コクのあるトンコツスープ、喉越しまろやかな生麺・・・。あきらかに、岡井さんに合わせた感満載。イヒヒ、今日はいろんな意味で、来てもらってよかった。とかいってw


「おいしい?」
「ええ。細麺ながら、噛みごたえのある麺、それから新鮮なおネギの食感がシャッキリポンと(ry」

どこぞの料理マンガみたいな斬新な感想を交えつつ、岡井さんがとても上品に、麺をするすると音を立てずに啜っていく。

ほんと、こんなちょっとのことでも、育ちの違いを感じるけれど、やっぱり私は彼女のことが好きなんだと思う。・・・それに、岡井さん、って呼び方、堅いかもしれないけど、結構気に入ってるんだから。


「おかわりいっちゃう?」
「まあ・・・それでは、お言葉に甘えて。ウフフ」
「えー?もぉおなかいっぱいなんだけどー!よく食べるなぁ」

早々リタイア状態のももをおいてけぼりに、私と岡井さんはその後も、替え玉3玉ずつ、ラーメンを堪能したのだった。


ムチムチ リ ・一・ リ テカテカ<ただいま♪今日のお夕食は何かしら?
(o・ⅴ・)<・・・

(o・ⅴ・)<寒天!寒天!寒天!!!
リ ・一・# リ<キーッ!!!


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