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「ようこそ、フルーティーズ2名様!」

・・・怖。

キュートの楽屋に入ると、超不自然な笑顔の舞美が出迎えてくれた。目が笑ってない舞美スマイルは恐ろしい。
無意識なんだろうけど、左手をバタバタさせて、奥にいる千聖を私達の視界から遠ざけているようだ。

「桃ちゃん、久しぶり!舞、桃ちゃんに話したいことがあるんだ!」
「えー?珍しいねぇ。何の話?」
「・・・なんだろう。別にないかも。」
「・・・」

キュート、嘘つけなさすぎ!


私はともかく、梨沙子はもうおなかを抱えて笑い出しそうになっている。
あわててお尻をペチンと叩くと、うらめしそうにこっちを見ながら、なんとかこらえてくれたみたいだ。

「こっちおいでよ梨沙子。この雑誌、梨沙子の好きそうな魔女グッズが載っててさあ」
「うん!」
こちらは自然な感じで、愛理と栞菜が梨沙子を呼び寄せた。

さてと。

千聖は年長組と舞ちゃん、なっきぃに挟まれている。
全員でさりげな・・・くないけど、身を挺して千聖を守っているようだ。
何だろうこれ。ミーアキャットの群れみたい。もしくは、カバディ。

こんなに仲良しで結託しているキュートを見ていると、ちょっとだけ意地悪してやりたくなってきた。


「千聖、ももと2人で話そう。ちょっと相談に乗ってほしいの。」
「ももちゃんが私に?全然役に立たないかもしれないよぉ?」
きょとんとした顔で、千聖が小首をかしげた。
へー・・・。
全然、前の千聖と変わらないじゃない。梨沙子から情報がなければ、こんなふうに千聖の態度をいぶかしむこともなかっただろう。
もし本当に人格が変わっているのだとしたら、かなりの役者だな、千聖は。

ただし。

「あーちょっちょっ待って.。むしろその相談にはウチがのりたいなあ。」
「いやいや、ももち!普段まったくかかわりのない私の客観的な意見こそ参考になるよ!キュフフ!」
「いや、ここはお姉さんズで話すべき!小娘はひっこんでな!とかいってw」
「みぃたんひどい!なっきぃのことハブんなよ!」


千聖じゃなく、周りの演技力がヒドすぎる。
愛理はもはや天を仰いでいるし、栞菜はオロオロしている。
梨沙子はもういいでしょももー。と目で訴えかけてきていた。


「ももちゃん。あっちで話す?」
その時、千聖がスッと前に出てきて、ごく自然な仕草で私の腕に手を絡めてきた。
「へへ。久しぶりだねー」
屈託のない表情。キュートのメンバーの保護をあえて辞してまで、私のところに来てくれたと思ったら、ちょっと嬉しくなった。

「ちょっと、千聖ぉ。」
「ももちゃんと2人で話すんだから。絶対誰も聞いちゃだめだよ!」

千聖、結構チャレンジャーだね。


奥のソファまで移動すると、千聖はさっそく「相談って、なに?」と少し表情を改めた。


「うーん・・・ないっ!」
「えっ!」
「千聖と2人になりたかっただけ。だから、相談は、ないっ!」


ふはっ



えりかちゃんが噴出した後、一瞬間をおいて、千聖が抱きついてきた。

「ももちゃぁ~ん!何だーびっくりしたぁ!」
「ごめんごめん!だって今日なんかキュートみんな怖い顔してるからぁ~ちょっと嘘ついちゃった!」


まっすぐ私を見つめていた深い茶色の瞳が、長いまつげに縁取られた瞼の中にキュッと仕舞いこまれた。
私はこの笑顔が大好きだった。
たとえ全てが演技だったとしても、この笑顔は邪悪な人間ができるものじゃない。

「ねえ、千聖。ももは、千聖が好きだよ。昔も、今も、これから先の千聖のこともずっと好き。どんな千聖でも、ももは大好き。」
「ももちゃ・・・・」

私の名前を呼びかけた唇が、とまどいに震えて、静かに閉じられた。
私の知らない表情をした千聖が、そこにいた。

千聖の被った仮面が、壊れかけた瞬間だった。



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