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「てか、当事者たちは結局どうしたいわけ?」

すると、今度はしばらく押し黙っていた萩原さんが口を開いた。


「舞もちしゃとも、もうほとんどかんけーないよね?あとは関係ある子たちで話し合えばいいんじゃないでしゅか」

萩原さん・・・心底どうでもいいと思っているのね、そういうマイペースなところも素敵。
少しでも、千聖お嬢様を悲しませる要素からは遠ざけたいという意図も感じる。いつも以上に硬い表情は、そのせいでもあるんだろう。

うふふふふ、千聖お嬢様以外のことは本当に関心がなさそう。こんなに綺麗な方なのに、萩原さんに恋をなさっている方がいるとしたら、ご愁傷様ですね。うふふふ
(少А年)<ヘックショイ!!


「私はもう少しだけ、佳林やみんなのお話を聞かせてもらいたいわ。舞も、千聖と一緒にいてくださるとうれしいのだけれど」
「・・・わかった、まあ、ちしゃとがそういうなら」

でもその鉄の鎧も、お嬢様のふわふわボイスの魔法の前では、簡単に脱がされてしまうところもなんだかいいな。私もいつか、そんな風に思われてみたい、とか言ったりして。


「さっきは、強い口調になってしまってごめんなさい」


千聖お嬢様は席を立つと、未だうつむいて泣きじゃくる小もぉさんたちのほうへと歩み寄っていった。


「素敵なリボンね。ももちゃんを思い出すわ」
「え・・・」

髪を纏めるリボンを、軽く結びなおしてあげて、千聖お嬢様はにっこりと笑う。
それだけで、いくらか小もぉちゃんたちの顔の強張りも解消されたように見える。


「構わなくていいのに、あんな奴ら」

うふふ、遥ちゃんたら。
彼女たちへの憤りもあるのかもしれないけれど、しっかりとヤキモチが顔に現れちゃってる。可愛い子。


「このリボンをつけていなくては、佳林はあなたたちのお友達に戻れないのかしら?」
「あ・・・あの、私たち」
「ウフフ。佳林もこちらにいらっしゃい」


お嬢様からの手招きで、小もぉちゃんたちへとおずおずと歩み寄る佳林ちゃん。
佳林ちゃんと小もぉのみんなはしばらくぶりにちゃんとお話するのか、交わされた目線はどこかぎこちない。


「・・・コート、踏んでごめんね」

やがて、蚊の鳴くような声で、背の高い小もぉちゃんがつぶやいた。


「謝ろうと思って、礼拝堂に行ったの。ずっと後悔してた。ごめん、佳林」


佳林ちゃんの表情は見えないけれど、背中に緊張が走っているのがわかる。


「・・・みずきちゃん、あたしちゃんと我慢してるからな。いちいち暴力に訴えないでよね」
「うふふふ、大丈夫よ。遥ちゃんも学習したのね」

私たちの視線の先で、対峙する人達。
そして、佳林ちゃんがやっと重い口を開いた。


「・・・私ね、本当は最初から、千聖お姉様しか見えてなかったの」


んん?と生徒会長が首をひねる。
無理もない。事情がわからなければ、佳林ちゃんのこの発言はあまりにも唐突で、何の脈略もないものにしか聞こえないだろう。


“佳林は、おか・・・いさんの気を引くために、仲良しのツグナガってひとの真似をしてたんだよ。でも、なんか知らんけどいきなり辞めたからハブられたっぽい”


私は遥ちゃんから、そういう説明を受けていたからわかるけれど・・・。萩原さんも、なんとなく察知したみたいで、皮肉交じりに片眉をあげてにやりと口をゆがめている。さすが天才さん。


「お姉さまと仲良くなりたいから、リボンをつけたの。あの口調や仕草を真似して、お姉さまに見止めてほしかった。
でもね、そんなことは無駄だって、嗣永さんから直接言われて」
「それで、私たちを捨てたんだ、佳林」
「捨てた?…何言ってるの、みんなが私を見放したんでしょう?」
「違うよ、私たちのせいにしないでよ。佳林が急にいなくなっちゃったから、小もぉ軍団だって壊滅の危機に陥ってるのに」
「だってそれは・・・」
「・・・」
「・・・」


また沈黙が訪れる。
“こうしたい”と彼女たちが願っている未来はきっと同じはずなのに、ほんの少しの意地の張り合いで、最後の一歩が踏み出せないのだろう。

よーし、そういう時は・・・

「あの、熊井s」
「よし、ここはカリスマ友情修復師のうちにまかせて!」


――あらあら、私が口をはさむまでもなかった。
うふふふ、熊井さんたら、寝起き…じゃなくて、悟りを開いたばかりのしゃきっとしたご様子。
それにしても、色々な肩書をお持ちで。眠・・・瞑想していた時のお顔とは正反対に、凛々しくていらっしゃる。

無言で双方を見遣るその視線に、あわてて小もぉさんたちが再びしゃべり始めた。


「だってさ・・・佳林、もううちらに付き合ってらんないっていったじゃん」
「そんなこと言ってないよ」
「言ったもん。たしかに聞いたんだから」
「はいはいはい、ストップ!」


またも言い争いになりかけたところ、切れ味のいい熊井さんが割って入る。


「いい、かりんちゃんさん。いくら言ってないって言っても、みんなは聞いてるんだから、それは言ったってことになるんだよ」
「でも、」
「それから、もものレプリカさんたち。いくら聞いたって言っても、かりんちゃんは言ってないっていうんだから、それは言ってないってことになるからね」
「えっ」
「えっ」


「熊井ちゃん…お願いだから、あと58秒ぐらいだまっててもらえるかな」

生徒会長ががっくりと肩を落とし、萩原先輩がさもめんどくさそうに後ろ頭を乱暴に掻いた。



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