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舞様が僕のために時間を割いてくださるなんて。

しかも、ここでは話してる時間が無いなんて、そんなに込み入った話しなのか。
ひょっとしたら、これはひょっとして・・・
舞ちゃん、僕のことを、ついに・・・


舞ちゃんの問いに対して、僕は直立不動で返答した。

「も、もちろんです。僕の予定はいつでも舞ちゃんに合わせますから」


あ・・・
今日の放課後・・・

今日は特に熊井ちゃんから直々に頼まれたことがあったんだっけ。

どうすればいいんだ、これは・・・


なーんて。
そんなのは悩むまでも無いことだ。

もちろん舞ちゃんの方を優先するに決まっている。即決だ。
何とかーず、っていうそんな訳の分からないユニット、心底どうでもいい。
そんなものには関わらずに済ませたいし。ちょうどいい。

まぁ、後のことを考えると恐ろしいことになるのは間違いないんだが、今はそんなこと言ってる場合ではない。
だって、いま僕の目の前にいるのは舞様なんですよ。
僕にとって最優先事項が何であるかなんて、そんなの分かりきったことじゃないですか。

それでも返答のあと一瞬あいたその間に気付いたのか、再度舞ちゃんが聞いてきた。

「なにか用事でもあった?」
「いえ、とんでもない。何にも予定なんか最初から全く全然入ってないですから。大丈夫です」
「そう。じゃあ放課後、あのカフェだっけ?そこに行けばいい?」

舞ちゃんと一緒にカフェでお話し!!
夢のような話しでとても心がときめくんだけど、その場所はダメだよ。あそこはもぉ軍団のすくつなのだ。
そんな危険な場所へ舞ちゃんに来て頂くことは出来ない。

あそこでは僕が舞ちゃんと素敵な時間を過ごしているところに、余計な登場人物がやってくる可能性を否定できない。
というか、そういう時に限ってあの人たちはやってくるのだ。
そんな所で舞ちゃんと僕の落ち着いた時間が確保できるはずも無いだろう。間違いない。

第一、今日は何といっても熊井ちゃんが新しいグループを作ったとかで何かえらい張り切ってるのだ。
だから、あそこはダメだ。絶対にダメ。


「いや、あそこはちょっと・・・」

しばし思案する。
放課後に高校から向かう僕と学園から向かう舞ちゃんが会うには、いったいどこがいいのだろうか。
僕らの逢瀬に相応しい場所とは。

必要条件は、学園からカフェに向かう熊井ちゃんに絶対に会わずに済んで、なおかつ大学から向かってくる桃子さんのルートからも外れている所。
そして、雰囲気の落ち着いた場所がいいな。そう、恋人同士が待ち合わせをするような。
僕の優秀な頭脳がフル回転して、いくつかの候補の中からその条件を満たす最適な場所を抽出する。

「じゃあ、お屋敷のそばのあの公園。そこの噴水広場ではどうでしょう?」
「いいよ。じゃあそこで」


* * * *


今日は一日、授業中もずっと上の空だった。

放課後になれば舞ちゃんに会えるのだ。
まさに、輝け!放課後。


さっきは舞ちゃんのお願いだから、後先考えずについそっちを優先する返事をしてしまった。
でも、その時の興奮が落ち着いてきた今、事の重大さを考えるとじわじわと恐怖心が湧き上がってくる。

熊井ちゃんから直々に頼まれたことを反故にする。

その文字列を見るだけでも、体の芯から震えるほどの恐ろしさが襲って来る。
あとですげー怒られるんだろうな・・・
どんな恐ろしい制裁が待ってるんだろう。想像するだに恐ろしい。

でも、舞ちゃんが僕に会って欲しいと言って来たんだ。
僕は例え槍が降ってこようとも、舞ちゃんに会いにいくだろう。
まぁ、天から降ってくる槍よりも、憤激しているだろう熊井ちゃんの方がずっと怖いけど。

それにしても、舞ちゃんが僕に話しって、何だろう。
舞ちゃんがわざわざ僕を呼び出したりするなんて、どういうことなんだろう。
何も無いのにわざわざ呼び出したりするはずがないよね。何かあるんだ。何かが。


もしかして、舞ちゃん僕の気持ちに応えてくれる決心がついたとか・・・


うん、そうかもしれないな。
だって、僕が舞ちゃんに告白して以来、初めて舞ちゃんが僕と2人っきりで向き合いたいって言って来たんだから。
それを彼女の方から言ってくるなんて、これはもう間違いないでしょ!



昼休み、級友と弁当を食べているときも、僕の脳内はお花畑だった。

「おい、さっきから何だその顔は・・・ 弁当食いながら気持ち悪い顔するのはやめろよ」
「え? だって、いま僕は本当に幸せだなあと思うんだよね。ムフフフ」 
「おまえ何を言ってんだ?遂にイカれたか。まあいい。それより3組でクラスの女子かわいい子ランキングの投票やったんだってよ!
その得票数1位の子を見に行かないか。本当にかわいいらしいぞ」

相変わらずどうしようもないやつらだ。
お前らの頭の中には、かわいい子に関することしか興味が無いのかよ。
(といいつつ、彼らの情報のお陰で僕も校内のかわいい子事情には事困ることが無かったりする)

「なぁ今日の放課後見に行こうぜ」
「今日の放課後? ダメダメ。行かなきゃならないところがあるんだ。大体そんなの、僕を待ってるであろうことに比べたら余りにも取るに足らないことだ」
「なんだよ、そのキリッ顔は・・・」
「君達ももっと自分の人生というものを考えて行動した方がいいぞ。男なら勝負すべきところってのがあるんだから、うん」
「なんだお前、今日は何か変なモノでも食ったのか??」

ホームルームが終わるやいなや、ダッシュで学校を後にした。
会ってはいけない人に会わないように、周囲に気を配り細心の注意を払って行動する。
その甲斐あって、無事誰にも会わずにここへやって来ることが出来た。

よし、順調だ。
こういういいリズムのときは、何をやっても上手くいきそうな予感がする。
そして、僕はそのいい流れのままに、これから舞ちゃんと会うのだ。ムフフフフフフフフフフ


* * * *


公園の噴水広場。
舞ちゃんはまだ来ていない。

良かった。女の子を待たせるなんて最低だからな。
速攻で来て良かった。


舞ちゃんはなかなかやって来なかった。
もうかれこれ30分は待っている。
でも、舞ちゃんを待つこの時間、僕は嬉しくてしょうがない。
だって、僕がいま待っているのは、あの舞ちゃんなんですよ!

遅いな舞ちゃん。
まぁ、でも女の子ってそういうものだ。
女の子っていうのはいつだって彼氏を待たせるものなんだから。
いや、彼氏だなんて、そんな!ちょっと!!ムフフフフ

待っている間も、もうずっと舞ちゃんのことを考えていた。
彼女のことを考えると、気持ちが昂る一方だ。
待っている時間が全く苦にならないほど、いま僕は幸せを感じていた。

なかなか来ない舞ちゃん。
舞ちゃんのことをずっと考えていると、僕の脳内はだんだん妄想の世界へと導かれていく。


そうか。
舞ちゃん、ついに僕の気持ちを受け止めてくれる決心がついたのか。


「舞ちゃん、僕の気持ちが通じたんだね」
「うん、決心したでしゅ」
「舞ちゃん・・・」
「でも、あと2年待って。舞が16になるその時まで・・・」
「舞ちゃんが16歳になるまで?」
「16になれば法的にそれが可能になるから」

その大きな瞳を潤ませて、上目遣いで僕を見つめる舞ちゃん。

「その頃は大学生になってるんでしゅか?」
「2年後なら、たぶんそうだろうね」
「いろいろなこと、教えてくれる? 舞に・・・」
「舞ちゃん・・・」


僕が空気を抱きしめていると、いきなり背後から声をかけられた。


「なにしてるんでしゅか」


うわあ!!!!!!11
舞ちゃんが来ていたことに全く気付かなかった。
この僕が天使の接近に気付かなかったなんて。
つい妄想に夢中になりすぎてしまったようだ。


舞ちゃんと向き合うのは、あのお屋敷の前で告白したとき以来のことになる。

目の前の舞ちゃんは、さっきの僕の妄想の世界とはだいぶ雰囲気が違っていた。まぁ、当たり前のことだけど。
不機嫌そうに見える舞ちゃん。無表情だとこういう雰囲気になるんだよな、舞ちゃんは。
でも見たところ今が特別に不機嫌ってわけでもなさそうだし、つまり今はそのように単なる無表情だということなんだろう。
僕も多少は舞ちゃんの気持ち、その辺の判断が出来るようになってきたようだ(エッヘン)。


現実の舞様を目の前にして、僕は緊張の余り固まってしまう。
そんな僕に対して、舞様が先に話しかけて来て下さった。


「あのさ、いったい何をやってたわけ?」
「い、いや、べ、別に何も。変な事考えて一人で盛り上がってたりしたわけじゃ無くて・・・!!11」
「違うよ。いま何をしてたかなんて、そんなのどうでもいいから。この間の休日は何をしていたのかと、それを聞いてるの」

良かった。
僕が考えていたことを悟られたりはしていなかったみたいだ。
一瞬安堵した僕に対して、舞様はその怖い表情を崩さず重ねて僕に聞いてきた。

「え、どういうことでしょうか?」
「前に舞がお願いしたことがあるよね。それ、憶えてる?」



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