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「今でも軍団のリーダーはももの方がいいと思ってるんじゃない?」

そもそもリーダーはいつ変わったんだろう。そんな事実は存在するんだろうか。
素朴な疑問が浮かんでくるが、話しを面倒くさくしたくないのでそれを口にはしない。

もぉ軍団のリーダー論、その話題は非常にデリケートかつ高度に政治的な問題なので、僕に話しを振らないで欲しいです。
軍団のリーダーはどっちがいいなんて、それは僕が答える立場にはありません。そのような判断は分を越えてます。
それに、例えどっちの人の名前であっても、僕にはそれを答える勇気を持ち合わせてはいない。
だからその質問に答えることが出来ず黙っていると、熊井ちゃんは僕のそんな葛藤には気付きもしない様子で話しを進めていく。

「この間だって、うちが親切心からいろいろ注意してあげてるのに、その度にももの方ばっかり見てたじゃん」

いや、それは熊井ちゃんから説教されてる間ずっと僕のことをじーっと観察してる桃子さんが気になってただけだから。
単にそれだけの意味であって、それ以上でもそれ以下でもありません。


「ひょっとして、もものことが好きなの?」


なんでそうなるんだよ・・・


「ち、ち、ち、違うよ」

自然な感じで否定しようとしたが、やはり動揺してしまったんだろうか。思わずどもってしまった。
動揺するってことは、心の深層ではそんなこと少しは思ってたりとか? 

なんて、まさかねw
うん。思いもよらなかった質問に驚いただけ。

でもそんなこと改めて聞かれるとやはり平穏ではいられない。

桃子さん、か・・・
まぁ、僕にとって特別な存在の人には違いないけど・・・


即座に否定した僕の発言に、熊井ちゃんにとっては何もひっかかることは無かったみたいで。
それほど真剣にその質問をしたってわけじゃないのだろう。まあ当然といえば当然か。
だいたい、熊井ちゃんに僕の心の中を見抜かれるはずもない。

「まぁ、そうだろうけど。ももは変わってるからねー。あんなんで大学では上手くやれてるのかな、ももは」

他人様の心配よりも御自身の心配をされたほうが・・・


さっきからずっと、僕は心の中で熊井ちゃんの言うことにツッコみ続けている。
そうやって心の中で反論することで精神のバランスを取ることが出来ているのだ
熊井ちゃんは、僕の心の中を読み取ってくるような有原的変態ではないから、僕は心の中でだけは自由でいられる。
彼女との会話はそういう意味でのストレスはたまらない。

ただ、パワーハラスメントというかそっち系のストレスは尋常じゃないほど感じるけど。
このように。

「いい? うちの言うことは絶対なんだからね!!身の程を知りなさいよ!!」


(くまいちょーに優しくしてもらいたいなら、優しくしてあげることだね)

目の前の恐ろしい形相とそこから放たれる信じられない暴言の連続、僕には桃子さんの言ったことが信じられない。
本当に、くまいちょーは優しい子なんですか、桃子さん?

「もっとキッチリと教育してあげた方がいいのかな、やっぱり。まぁ、でもそれもリーダーとしての責任か・・」

自らの発言によって興奮度を高めてしまっている様子の熊井ちゃん。

「黙ってないで何とか言いなさいよ。まさか、うちのこと怖がってるの?」

うん。とても怖いです。

「いい? これはリーダーとしての責任感があるから、うちがここまで言ってあげてるんだからね!!」
「そ、そもそも、いま何の話しをしてるの?」
「ほら、全くうちの話しを聞いてないんじゃん!! だからこんなに言ってるんでしょ!!!!11」

「うちとの約束を破ってどこに行ってたのかって、それを聞いてるの!!」

そうだったのか・・・・
一周回って話しはそこに戻っていたのか。
話しが脱線しまくるし一貫性も全く無いんだから、真面目に聞いてる人間にはその熊井的展開は分かりにくいよ。
なんでこの人はこんなに面倒くさいんだろう。

「結果的に約束を破ったのは申し訳なかったと反省しております」
「そんな形式的な答えは聞きたくないんだけど」
「いや、本当に反省はしてるんだ。だって、熊井ちゃんから頼まれたことをさ、約束を守れなかった訳で」
「そうやって言えば、席取りもせずに逃げたことも許されるって言うわけ?」
「違うよ、逃げただなんてそんな・・・」
「そんな情けない考えだから逃げ出したりするんだよ! もう頭に来た!!覚悟しなさい!!」

僕が逃げ出したくなるとするなら、そんな感じのあなたが怖いからなんだよ。
それでも、僕は逃げたりはしないで今ちゃんとここに来ているんですけど。
その事実は熊井ちゃんの中では無かったことになってるのだろうか。僕は君の目の前にいるというのに・・・

「ふんぬー!!!」

もうダメだ。
これ以上黙っているわけにもいかないだろう。
ここは事実をありのままに正直に話すしかない。
でないと話しが逸脱したまま熊井ちゃんの暴走がどこまで続くのか分からないから。

腹をくくった僕は、彼女のテンションに負けないように力をこめて言葉を発した。

「だから違うんだって、熊井ちゃん!!」


僕の剣幕に熊井ちゃんの動きが止まった。
そして僕の顔をまじまじと見てきた。


「・・・実は、さっきまで舞ちゃんに会ってたんだ」
「舞ちゃん?」
「う、うん」

熊井ちゃんの目の色が変わった。
ますます怖い。
だが、意外なことにその表情は怖い顔ではなく柔らかい表情へと変わったんだ。

そんな熊井ちゃんを見て、前に梨沙子ちゃんが言ってたことを思い出した。

(熊井ちゃんはああ見えて青春っぽいことが大好きなんだゆ)

これはひょっとして危機的状況を脱することができそうか? 助かるのか?
やっぱり、僕を守ってくれたんですね、舞ちゃん・・・ありがとう。


「そっかー! 舞ちゃんに会ってたんだ!!」

目を輝かせている熊井ちゃん。テンションが上がってきたようで。
これはこれでやっぱり怖い。

「それならそうと、最初からそう言えばいいのに!」


そうなの?
舞ちゃんと会うから行けなくなりました、と言ったら果たしてそれは許可されたんだろうか。
いま熊井ちゃんはそのようなことを言ったが、それは信じてもいいのか?

とりあえず、抹茶のお菓子を先に食べさせたのは正解だったと今つくづく思った。今ようやくその効果が表れてきたようだ。
うん、食べさせておいたからこそ、さっきまでの彼女の暴走だってあの程度で済んだんだろうし。


「舞ちゃんに会うのって久し振りなんでしょ。それで舞ちゃんとはどんな話しをしてたの?」

・・・言えるわけない。
熊井ちゃんのやることを四六時中しっかり見張ってろ、なんて舞ちゃんから厳命されたなんて。


「そ、そんなこと、プライベートなことなんだから熊井ちゃんに言う必要は、な、無いよね」
「うちはね、心配してるからこんなこと言ってるんだよ。ただでさえコミュニケーション能力が欠如してるんだから、もう」

機嫌の良さそうな熊井ちゃんの様子が逆に怖い。
その優しい声がかえって僕の恐怖心を煽る。

そして、その恐怖は次に彼女が言った言葉により絶望へと変わっていくのだった。

「なかさきちゃんとだって、まだこじれてるんでしょ」

話しが飛んだ。
しかもよりによって僕のデリケートな話題に。
非常に危険な兆候だ、これは。

やっぱりなかさきちゃんとのことは熊井ちゃんの耳に入ってしまっているのか。
まぁそれも当然のことではあるが、いまこの状況でその話題が出るのは最悪の状況に近いだろう。

お願いだから、僕となかさきちゃんとのことには関知しないで下さい。本当、お願いしますお願いします。

不安におののく僕の心持とは対照的に、熊井ちゃんの表情はすっきりと晴れ渡っている。
それを見るとますます気が滅入っていくのは何故なんだろう。
熊井さんはこんなに明るい顔をしているのに、なぜ僕の心はry


「でも大丈夫」

「なかさきちゃんとのことも、うちが全部しっかりと面倒見てあげるから安心して」

ニッコリと微笑んでいる熊井ちゃん。
僕の不安は膨らむ一方。

「さっそく明日にでも、うちが直接なかさきちゃんに会って話しをするね。それで、まずなかさきちゃんの言い分を聞いてー、それからー」

ご自分の中では素晴らしいプランニングが出来ているのだろう、御満悦のその表情。

すでに熊井ちゃんは、僕のことを思ってなんて、そんなことは全く考えてないはず。
ただ御自身にとって楽しいことに思い当たったから、張り切っていらっしゃるのだ。
その証拠に、固まってしまっている僕の様子なんか全くお構い無しに、熊井ちゃんのセリフだけがこの空間に響いているじゃないか。

「カリスマ友情修復師のうちがついてるから、何も心配しなくていいよ! ツイてるね君は!!」

真っ直ぐに僕を指差す熊井ちゃん。
僕の不安感は頂点に達した。

「佳林ちゃんの件もうちの活躍により見事に解決したし、うちにうってつけの事案が続くね。うち大忙しだ!あははは」

誰だよ、かりんちゃんって。
僕の知らないところで熊井ちゃんがまた何か変なことをしていたのか。
そのかりんちゃんとやらは無事に済んだのだろうか。他人事ながら心配になって仕方が無い。

熊井ちゃんにうってつけの事案とか、マジで勘弁してください。
現実逃避をしてしまいたい僕の頭の中を、「寝てる熊井を起こすな」「熊井元気で留守がいい」といったことわざがグルグルと回る。
熊井ちゃん、いいから僕らのことは放っておいて。

なかさきちゃん・・・
彼女とはただでさえ泥沼状態なのに。
いま張り切っているこの熊井ちゃんを見ると、それが底なし沼へと悪化するであろう展開が容易に想像できる。

お願いだから、お願いだから僕となかさきちゃんのことにあなた方(嗣永&熊井)は関わってこないで下さい・・・

得意気な顔をしてふんぞり返っている熊井ちゃん。
この絶望的状況、どうやら僕の不安は現実のものとなることが決定してしまったのかもしれない。
カリスマ友情修復師さんとやらの、その恐るべき手腕に僕は振り回されることになるのだが、その話しはまた機会があればその時にでも。



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