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つばさくんとやりあっていると、そんな僕らに声をかけてくる女性がいた。
声を掛けられたのは、僕の目の前にいるこの憎たらしい男子だった。

「空翼お坊ちゃま、お一人でこんなところに来ているんですか」

その女性が丁寧な言葉遣いでつばさ君に聞いてくる。
チラリと僕のことも一瞥した彼女、見たところとても落ち着いた女性のようだ。
大人っぽい人だな、っていう第一印象。

いや、いま大事なのは、そこじゃない。
今こいつ、お坊ちゃま、って言われたぞ!


お坊ちゃま?


この子は、いいところのお坊ちゃまだっていうのか。
確かに顔立ちからしても上品な感じはするけれど。

でも、それにしてはこいつの口の悪さはなんなんだ。こんな奴が本当にいいところのお坊ちゃまなのか。
いいところの上品な人って言うんなら、千聖お嬢様ぐらいちゃんとした言葉遣いをしろって言うんだ。


「いいだろ、別に。村上さんに迷惑かけてるわけじゃねーし」
「お坊ちゃま、何ですかその口の利き方は」
「別に。普通だし。村上さんこそ仕事はどうしたんだよ。サボってるのかよ」
「高校のスクーリングの帰りです。今日は非番を頂いておりますから」

つばさ君のその反応にも全く動じることなく、村上さんと呼ばれたその女性は続けて僕のことに言及してきた。

「こちらの方は?」
「知らない人。オレがサッカーしてたら、近づいて来たんだ」

僕のことを顎で指したつばさ君がニヤリと笑った。

「不審者じゃねーの。見るからに怪しいし。村上さん、助けてよ」

なに言ってるんだ、こいつは!?

それを聞いて彼女が僕に視線を向けてくる、僕の素性を見抜こうとするようなその表情。
ちょっと怖い。


でも、なんとなく彼女のその大人っぽい表情は、僕の周りにいる怖い人(例:熊井)から受ける怖さとは少し違っていた。
この人は不条理に人を責めるようなことは決してしない人だ。なんとなく分かる。

実際、つばさ君の言ったことを聞いても、彼女は闇雲に僕を疑うようなことはしなかった。
このクソガキの言うことなんか、この彼女にはお見通しなんだろう。
どうやら、見た目どおり冷静な視点を持ち合わせている人のようだ。助かった。

じっと僕の顔を見ていた彼女。


カッコイイ女性だな。

本当に大人っぽい人だ。
こういう落ち着いた女性って僕の周りにはあまりいないタイプなんで。

でも、さっき高校の帰りって言ってたよな。
高校生なのか、この人・・・・

どう見ても20歳は過ぎてそうに見えるのに。
これはたぶん、言いにくいことだけど、この人2年ぐらいダブってるんだろう、きっと。


あぁ、そうか、スクーリングってことは通信過程かな。
なるほど、働きながら学んでいるのかもしれないな。
それなら20歳過ぎの人だっていうのも納得だ。


それにしても、どういう関係なんだろう、この2人は。
村上さんと呼ばれたこの女性、ひょっとしてつばさ君の何か特別の人なんだろうか。
この落ち着いた雰囲気の女性と、言葉遣いもなってないクソガキ。2人の関係性がちょっと思いつかない。


小声でつばさ君に尋ねる。

「おい、この人とはどういう関係なんだよ?」
「うちのメイドだよ。すげー、つえーんだぜ」


メイド?
そんな人までいるのか、君の家には。
それは萌、じゃなくて、凄いんだな君の家は。

あらためて彼女に目を向けると、そんな僕と彼女の目が合った。

すると、村上さんは僕の顔をじっと見ていたと思ったら、軽く微笑んでくれた。
ただし、その微笑には何となく意味ありげな笑みが含まれていたんだ。

どういう意味なんだろう、それ。


そのとき彼女がほんの小さく呟いた言葉があったのだが、それは僕の耳までは届かなかったのだった。


(あぁ、この少年、あの時の。萩原さんにコクってた・・・ 生きてたのか)



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