※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



僕とつばさ君の言い合いがようやくひと段落する。
そんな僕らの言い合いをどこまで聞いていたのか、お嬢様が穏かな口調で僕らに話しかけてくる。
(僕らの言い合い、お嬢様はどこまでお聞きになっていたのかは今でも不明)

「お2人でサッカーをしていたのね。千聖もご一緒したかったわ。空翼がどれくらい上手になったのか見てみたいし」

お嬢様のその言葉を聞いて、すごく嬉しそうな顔になったつばさ君。
でも、何故かすぐに口を尖らせてムスッとした顔を作った。

「ねーちゃんももう16になったんだからさー、少しぐらい女の子らしくしろよ」
「あら、女の子だってサッカーをするのよ。今では女子のサッカーもとても盛んになってきているじゃない」


ちょっと待て。
つばさ君、いま何ていった?
お嬢様、16歳になった? そう言ったよね。

「お嬢様、16歳になられたんですか?」
「えぇ、16歳になりました。21日が誕生日でしたから」
「そうでしたか! それはそれは。お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとうございます。ウフフ」


「お嬢様のお誕生日って6月21日なんですか!」
「えぇ」

なんと!
お嬢様のお誕生日って、僕の誕生日と結構近いじゃないか。
そんなに誕生日が近いなんて、何かの縁を感じてしまったりする。

「じゃあ僕と一週間も変わらないんですね。僕もこのあいだの誕生日で17歳になったばかりなんです」
「あら、そうなんですか? ももちゃんさんのお誕生日はいつだったのかしら?」
「15日です。6月15日」
「まあ!! じゃあ私たちは同じ双子座なのね」


別に誕生日が近いからって、どうってことないことなんだけど、何かとても幸せを感じるよ。
だって、今お嬢様は、こう言われたのだ。
「私たちは同じ双子座なのね(嬉しいわ)」って!
そんなこと言って喜ばれたら、そりゃ嬉しいに決まってる。


「千聖のひとつ上の学年ということは、お生まれは1993年ですよね?」
「えぇ」
「それじゃあ、お誕生日は1993年の6月15日なのね」
「はい、そうですが何か?」
「ウフフフ、じゃあ同じ誕生日なのね。それは奇遇ですこと。面白いわウフフフ」
「??」

同じ誕生日って、誰とですか。
頭の中で疑問に思っていると、その僕に対して突然大きな声が背後から聞こえてきた。
その特徴的な声色。

「ふざけんなオメー! 誕生日変えろ、今すぐ!!」

いきなり怒号を受ける。な、何事だよ・・・
それと同時にケツに衝撃を受けた。

突然後ろから現れたのは栞菜ちゃん。
いきなり現れるや言ってくるのは誕生日変えろとか、相変わらずの無茶振りだな。有原の奴。
しかも、今お前、蹴っただろ、僕のことを。


「有原さん、だろ」

見下すような表情で僕を見て、心の中を読んでくる有原さん。
また、この展開か。もう、うんざりだ。

「いいか、明日までに変えて来いよ。わかったな、この女好き。オメーどんだけなんだよ本当に」


言いたい放題の栞菜ちゃん。
でも、彼女の挑発に乗るな僕。
ここはひたすら無心を保つんだ。


「栞菜?」
「お嬢様ぁ。もう大丈夫ですよ。さぞ怖かったでしょう。世の中、善人だけとは限らないんですよ。
でも、この栞菜が付いてますから。こんな男どもからは私が守ってあげますからね」

僕はツッコみたいのをひたすらこらえていた。
お嬢様が栞菜ちゃんに続けて尋ねる。

「もう栞菜ったら。さっきから姿が見えないから心配してたのよ。どこへ行っていたの」
「つばさお坊ちゃまの姿が見えたから、お嬢様とお坊ちゃまに兄弟のお話しの時間を与えて差し上げようと思いまして」

(クソガキと話しをするほど私はヒマじゃないかんな)

会話の行間がテレパシーのように聞こえてくる。


「まぁ、栞菜は本当に気が利くのね」
「その間にちょっと先に戻って部屋を片付けてたんだかんな。このあと私の部屋で世界史の勉強を一緒にする約束ですからね、お嬢様ぁ」


栞菜ちゃんがお嬢様に言ったそれらの言葉。
それを聞いたつばさ君が忌々しそうに小さい声で呟く。

「慌てて部屋に戻って何を片付けてたんだか、この色欲魔め・・・」
「はーん? 何か言ったかんな、つばさお坊ちゃま」


栞菜ちゃんの言ったことに、言い返さないつばさ君。


あれ?僕に対するときのような力強さが鳴りを潜めてるぞ。
どうした、ツバサ。

彼は口を真一文字に結んで栞菜ちゃんのことを睨みつけていた。

栞菜ちゃんが表情を変えて、お嬢様に向き直る。
僕らに見せていた表情がウソのように、そのにこやかな顔つき。

「でも、なかなかお戻りにならないから迎えに来たんだかんな」
「そうだったわね。ごめんなさい。勉強の約束を忘れていたわけじゃないのよ。思ったよりもここで道草をしてしまって」
「いいんですよ。お嬢様は悪くなんかありませんから」


お嬢様に見せる満面の笑顔を引っ込めると、今度は僕にその顔を向けてきた。
僕には、お嬢様に向けた表情とは全く違ったジトッとした顔を見せつけてくる有原さん。
そして、いつものように僕との会話は悪態をつくことから入ってくるのだった。

「悪いのはオメーだよ。おい、この女好き」

お嬢様の前だというのに、そんな品の無い発言をするなんて。
信じられないこの人。そういう言い方はホントやめてほしい。

こういう人は、黙っているとどんどん付け上がってくるから、とりあえず反論を試みる。


「お、女好きとは何だよ。そういう変な言い方は本当にやめてくれないかな」
「女好きに女好きと言って何が悪い。それじゃあ聞くけど、女の子のことが嫌いだとでも?」
「そりゃ、好きだけどさ」

自分の素直な性格が、こういう時は裏目に出る。
獲物を捉えた、と言わんばかりに有原の表情がニヤリと歪んだ。



TOP