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「認めたね。はい17時40分、逮捕」

意味不明のことを言いだす栞菜ちゃん。
こういう理解不能の人を相手に、常識人の僕はどう対応すればいいのか分からない。


「オメー、なっきぃにも手を出したんだってな。そんなの前代未聞のことだかんな、学園の風紀委員長に手を出す他校生徒なんて」
「・・・出してないから。まさか、なかさきちゃんにも変なこと言ってないだろうな」
「危うし風紀委員長! 本能むきだしで迫ってくる男子。しかも変態!? ひぃぃ、怖い!!」
「・・・・・・」


アホ、なのか、この人は・・・

一人で盛り上がっているこの有原さんを見ると、バカバカしくて反論する気力も失われてくる。
そんな脱力気味に陥っている僕を尻目に、有原の独壇場は続く。

「信じられないかんな。不潔よ!ちょんぎられちゃえばいいのに!!」

お嬢様がいらっしゃるというのに、よくもそんな事を口に出来るな・・・


恐る恐るお嬢様を見ると、村上さんとの談笑に夢中でこちらには意識をしていない御様子。
それが、この場のせめてもの救いだった。

ハイテンションで聞くに堪えない妄言を言いたい放題の有原。
気が付くと、つばさ君が僕のことをじっと見ている。
有原の奴、こんなところでそんな言葉を並べ立てるなんて、子供の教育上、問題があるだろうが。

「つ、つばさ君、この人の言うことに騙されちゃダメだよ!」
「あぁ、わかってる。こいつのことはオレもよく分かってるから」

楽しそうな表情の栞菜ちゃん。
今つばさ君の言ったことを聞くと、その楽しそうな表情を今度はつばさ君に向けた。


「そういえば、つばさお坊ちゃま。坊ちゃまのお部屋の、例のアレの隠し場所のことだけど」
「なんだよ、いきなり。なんの話しをしてるんだ?」
「引き出しにわざわざカギを付けるなんて、バレバレだからやめた方がいいかんな」
「!!! な、なんのことだよ!」
「老婆心ながら忠告しておくけど、あれでは“ここに(ピーッ)本を隠してます”って言ってるようなものだかんな」
「なんでそんなこと知ってるんだよ! まさかオレの部屋に勝手に入ったりしてないだろうな!」
「あ、当たりなんだ」

栞菜ちゃんのかわいい顔がいやらしく歪む。
つばさ君・・・相手が悪かったな。
顔を真っ赤にして体を震わせているつばさ君。


そんなつばさ君に、栞菜ちゃんは容赦しなかった。

「カギが付いてると余計開けてみたくなるし。それにカギなんか付けたって、そんなの開ける方法はいくらでもあるんだから全く無駄なことだかんな」
「まさか・・・開けたのかよ・・・」
「ご想像におまかせします。あれ?ひょっとして、何か見られたらまずいものでも入ってるって言うんですかあ?」
「・・・・・」

「まあ、何も恥ずかしいことでは無いかんな、そういう年頃なんだから。何ならそこの女好きにも聞いてみればいいかんな」

僕に話しを振るなよ。
てか、その僕の呼び方は本当になんとかしろ。
彼女の言った内容については、その通りだと思うけど。男である以上、それはそういうものだし。
だが、ここはつばさ君には何も聞かないでおこう。武士の情けだ。


栞菜ちゃんが楽しそうな顔で僕らを見下している。

そんな彼女のことを、僕とつばさ君は同じ表情でもって睨みつけていた。
これは彼女のお陰と言っていいのか、僕とつばさ君の間には共通の敵を発見したということで、ある種のシンパシーが生まれていたのであった。

だが、その僕らの反応は彼女にとっては滋養にしかすぎないのだろう。
勝ち誇ったような栞菜ちゃん。そのデカイ態度。
こういうところが、いかにも有原らしい。


ひと通り僕ら相手に暴れまくって満足したのか、そこで真面目顔に戻りお嬢様に向き直った。

「こんな男どもの相手はこの辺で切り上げて、お屋敷に戻りましょうお嬢様。さあ、栞菜との楽しいお勉強タイムの始まりだかんな」
「そうね、そろそろ戻りましょうか。空翼はどうするの。一人で外を出歩かないように言われているのでしょう?」

「空翼様には私がお付き添いして帰りますので、どうぞお嬢様方は先にお屋敷にお戻り下さい」
「じゃあ、お願いするわ。それでは皆さん、ごきげんよう」

そんな2人を僕とつばさ君は、ぐったりとした表情で見送るしかなかった。

お嬢様と栞菜ちゃんが去ると、村上さんととつばさ君が僕の前に残った。

魂を抜かれたかのように放心状態の僕とつばさ君だったが、そんな僕らを村上さんが見守るような視線を向けてくる(どことなく楽しそうな感じもするけど)。

「さて、お坊ちゃま。どうなさいますか。まだ遊んでいきますか」
「いや、何だかどっと疲れたから、もう帰る」
「では、帰ったら何かお飲み物をお持ちしますね。戻られた後は、お部屋にいらっしゃいますか」
「ああ。部屋の方に頼むよ」

こいつ、本当にお坊ちゃまなんだな。
人を使うということが嫌味にならずごく自然な態度で行えている。
今のやりとりを見ると、普通に上品に見える。
悪態をつかなければ、この外見だ。ちゃんとお坊ちゃまに見えるじゃないか。

だが、それは悪態をつかなければ、という限定つきだ。

「おい、お前!」
「なんだよ」
「また会えるかな?」
「つばさ君が僕のことを友達みたいに思ってくれるなら、いつでも」
「そっか。じゃあお前、これからもオレと口を利くのを許可してやるよ。ありがたく思え」

それって、僕を友達って思ってくれるってことなのか?
この場合、僕が「ありがとうございます」って言うべきなのかな。

それぐらい偉そうな彼の態度。それはやっぱり僕にはとっても憎たらしく感じられたのだった。

「今度一緒にサッカーやろうぜ!」
「あぁ、楽しみにしてるよ」

「じゃあな」
「うん。じゃあね」
「あと、友達の大きな熊さんによろしくなw」

僕に対して上からという態度を露骨に見せながら軽口をたたいてくるつばさ君。

でも、そんなこと言っていいのか?
本当によろしく伝えるぞ?一字一句そのまま。
調子に乗ったこと言っちゃって、その時になって後悔しても知らないからな。


「じゃあ帰ろうぜ、村上さん」
「はい、お坊ちゃま」

そう言って二人は僕に背中を向けた。
僕の前から去っていくつばさ君は、その半歩後ろを歩く村上さんに話しかけているようだった。

「なあ、ひと休みしたら後であそぼーぜ。何して遊ぶ? そうだ!あの執事呼んでくれよ!SPから教わった必殺の護身術を奴で試してみよーぜ」



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