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ホームルームのあと、今日は進路指導があった。
あらかじめ届け出ている志望をもとに、進路の方向性を具体的にある程度絞り込んでいくのだ。

もうそんな時期に来ているんだな。

進路指導を行うという今日の二者面談。
他の生徒の面談は順調に進んでいたようなのに、僕の面談だけは何故か異様に長かった。




長い進路指導の時間を終えると、僕は生徒会室へと向かった。
今日は生徒会の仕事があるのだ。

生徒会室のドアを開けると、そこには小春ちゃんがいた。

「進路指導、いま終わったの? 遅かったねー」
「うん。なんか、たっぷり説教されちゃったよ・・・」
「説教って、進路指導じゃなかったの? そんなに成績悪かったんだ」

まぁ、確かに僕はそっち方面でも先生から説教受けそうだけど、いま受けてきた説教はその事では無い。

「進路指導のはずだったのに、その前にお前には生活態度のことで聞きたいことがたくさんあるとか言われて」
「そうなんだー。それは長くなるはずだね」

小春ちゃんの顔が、わくわくとした楽しげな感じに変わってきた。

「最近遅刻はやたら多いし、生活がたるんでる証拠だって言われた。
応援団の上級生からも目を付けられてるようだし、あろうことか警察から電話はかかってくるし、どうなってるんだって。
まずそういう態度を改めて、学生の本分とは何かを真面目に考えろって言われた」

なんで、この僕がそんなことを言われるようになってしまったのだろう。

僕は、どっちかというと入学以来ずっと真面目な方のキャラクターだったはずだ。
先生の手を煩わせたりすることなど殆ど無い、ごくごく普通の善良な一般生徒だったはず。
そんな僕が、どうして生活態度を改めろなどと言われるようなことになっているのだろう。
生活態度が悪いなんて、去年の面談では一回も言われたことなんか無かったのに。

「1年の頃はこんなこと無かっただろ。何かあったのか?」

とか、先生から真顔で聞かれる始末。
心当たりは、あります。
ありますけど、言ってもしょうがないことは言ってもしょうがないことだ。
運命だと思って、あきらめて受け入れるしかないんだ。



「そんなこと言われたんだー。あははははは」
「笑い事じゃないよ、小春ちゃん」
「だってさー、面白すぎだよw 小説でも読んでるみたい。ある時期を境に謎のキャラ替え。あははは」
「キャラ替えって・・・僕はいつだって変わらず僕のままなのに」
「でもさ、先生からそんなこと言われるなんて、そんなのむしろ光栄でしょ? うちの学校はやったもん勝ちの校風なんだから」
「まぁ、そうなんだけど、言われるにしても内容が何と言うか僕的に不本意っていうか・・・」

「大体なんで僕は、こんなに校内のいろいろな人から目を付けられてるんだろう」
「いろいろな人って?」
「まず先生でしょ。それから応援団の人たち」
「応援団の人たちとも関わってるんだ」
「関わってるというか、マークされてるみたいなんだ。あの日以来ね」

そう、あの日。
熊井ちゃんがこの学校に乗り込んで来たあの日から、この学校での僕の立ち位置が変化したのだ。

「あの人たち礼儀作法にうるさくって。会ったら直立不動で挨拶しなきゃならないんだよ。
何で一般生徒の僕にまで・・・今までは全然関係無かったのに」


「あとは、親衛隊の人たち・・・」
「親衛隊?」

うん、そうだよ。小春ちゃん・・・


「小春ちゃん、あの人たち、なんとかならないんですかね」
「なんとかって?」
「なんか、あの人たちからずっと見張られてる感じがするんだよね。怖くてしょうがないんだけど」

「会うと露骨に睨んでくる奴もいるし。でも、睨みつけてくるだけで直接は絡んできたりしないんだけどね」

久住小春親衛隊の連中、僕のことを恐れているんだな。
まぁ、硬派で知られるこの僕には、さすがの久住小春親衛隊の連中も手を出せないってことだ。

「ま、親衛隊といえど、この僕にケンカを売ろうなんて、そんな度胸のある奴はそうそういないだろうけどさ(キリッ」

実は、親衛隊の人達が僕に直接的に手を下したりしてこないのは、もちろん別の理由があるからなのだ。
その理由を、このときの僕は全く知らなかった。

それは、あの時僕と一緒にいた彼女のおかげだということ。
あの出来事のあと、泣く子も黙る久住小春親衛隊からもすっかり一目置かれる存在となっていた彼女。

そう、熊井ちゃんの存在こそが、彼らのブレーキになっているのだった。
親衛隊の人達から僕を守ってくれているのが熊井ちゃんだなんて。

それを知るのは、この後ずっと時間が経ってからのことになるのだが、今の僕はそんなこと全く知る由も無いのだった。



「そうなんだー。でもあの人たち、私にはすっごく親切にしてくれるんだよ」
「そりゃそうだよ。小春ちゃんのことを絶対神だと思ってるような人たちなんだから」
「まぁ、仲良くね。みんなで楽しくやろうよ」

それは僕ではなく、是非彼らに言ってあげて下さい。
小春ちゃんの言うことなら素直に聞くだろうから。


「そんな感じでさ。応援団に親衛隊。この人達のせいで僕の学校生活は毎日緊張の連続なんだよ」

自分の学校の中でぐらい、リラックスして過ごさせて欲しいんだよ。
ただでさえ、毎日毎日緊張から開放されない日々を送ってるんだから。

それもこれも原因は全てあれだ。
あの日この学校に殴りこんで来た熊井ちゃん、あの人が全ての元凶なのだ。

熊井ちゃん、本当に頼むよ。
なんで彼女は他校である僕の学校でそんな原因をつくってくれるんだ。
そして、何でこの僕がその影響をモロ被りすることになるんだ。



僕がため息をついていると、小春ちゃんが突然思いもかけないことを言い出した。

「その人達以外にも、不安材料はまだあるでしょ?」
「え?」
「ついこの前、うちの生徒会にあの学園の風紀委員長さんから直々に呼び出しがあってねー」

学園の風紀委員長さんって、それってなかさきちゃんのことじゃないか。
呼び出し? なーんか嫌な予感がするぞ。


「それでね、わたしが学園に行って話しを聞いてきたんだけど、うちの学校の生徒が学園の生徒につきまとったりしてて、とても迷惑してるんだって」
「そ、そんなことする人がいるんだ・・・」

「それでね、そういう風紀を乱す行為をする生徒を厳罰に処して欲しいっていう苦情だったんだけどね」

ニコニコ顔の小春ちゃんが顔を近づけてきた。
これすごく嬉しいんだけど、いま僕は小春ちゃんの言ったことに動揺を隠せず、それどころでは無かった。


「あははー、やっぱり心当たりがあるんだ!」


「学園の風紀委員長さんに名指しで苦情を入れられるなんて、そんなの初めてだよ。あはははは」
「名指し・・・なかさきちゃんが僕のことを名指しで・・・・」
「なかさきちゃんって、なっきぃのこと? そうやって呼ぶんだ」

「でも、そんな名前で呼ぶほどの仲なのに、なんでそんな苦情が来るようなことになってるのー?」
「僕にもよく分からないんだけど、いつのまにか事態が泥沼化してしまってて・・・ 本当に何故なんだろう」


本当に、どうして僕の学校生活はこんな風になってしまったのだろう。
校内を歩けば、応援団やら親衛隊だのといった余り関わりたくないような人達が僕のことをジロジロ見てくるし。
そして、ついに他の学校から名指しで苦情を入れられるようにまでなってしまった。


高校に入ったばかりのころ、僕の毎日はこんなでは無かった。
もっと落ち着いた、平凡だが平和な毎日を送っている、そんなごく普通の高校生だったはずだ。

それが、どうしてこうなった・・・


「色々な人達から目を付けられたりして、ホントに楽しそうだねー」

明るく笑う小春ちゃん。
僕にとって笑い事じゃないんだよ、本当に、もう。
楽しくなんか無いから、全然。



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