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その楽しそうな小春ちゃんを見ていると、ちょっと心配になったことがある。
小春ちゃんが学園に行ったのは、苦情の呼び出しを受けて、だよね。

苦情を受け付けるなんて、そんな殊勝な態度を小春ちゃんが取ることなど出来たんだろうか。
相手の苦情なんて全く聞かずに、そんな場でさえ自分の話しばっかりしてきたんじゃないでしょうね。

小春ちゃん、学園に行ってなかさきちゃんの心証をますます悪くしてきたりはしていないよね。・・・・心配だ。


「小春ちゃんが苦情を聞きに学園に・・・ 大丈夫だったの?」
「私のこと心配してくれるの? 
それがね、すっごく丁重な扱いだったの。生徒会長さんと副会長さんたちが、出迎えてくれたんだよ。
そんな幹部の人たちが揃って出迎えてくれるなんて、何だかわたし偉くなった気分になっちゃったよー!」

僕の質問を勘違いした小春ちゃん。
大丈夫だったの?と僕が心配したのは、その対象は小春ちゃんじゃなくて、小春ちゃんの相手をする(させられる)風紀委員長さんの方だったんだけど。
どうやら僕の心配は的中しそうな感じだな、この小春ちゃんの話しぶりからすると。


「こっちは小春ちゃんで、学園側は生徒会長さんと副会長さん? えっと、生徒会長は茉麻さんだよね。副会長って・・風紀委員長さんは居なかったの?」
「もちろんいたよ。だって、今回の主役だもん。なっきぃは風紀委員長と副会長を兼任してるんだよ」
「そうなんだ。兼任とは、さすが優等生」
「あと、今回ね、もう一人の副会長さんに会ったの!」
「もうひとり?」
「鈴木愛理ちゃんっていう、この子もまた優等生でねー」
「へー、愛理ちゃん、副会長なんだ」
「なに?愛理ちゃんも知ってるんだー。ずいぶん学園の事に詳しいんだねー。そりゃ、そうか!苦情が来るくらいつきまとってるんだからw」

そうだった。
その場でのお話しっていうのは、僕に関することなんだった。

しかも、その内容たるや・・・耳を覆いたくなる。
そんな話しが愛理ちゃんの耳に入ってしまったというのか。

僕を憂鬱にしてくれるネタが、またひとつ増えてしまった。
声を大にして言いたい。それは全て誤解なんだよ、愛理ちゃん!


そんな僕のメランコリックな心持と対照的に、話しを続ける小春ちゃんは実に楽しそうだった。


「愛理ちゃんね。もうすっごくかわいいの!」

「あんなかわいい子がいたら、いつも一緒にいたくなっちゃうよね」

「彼女と一緒に何かをやりたいなー、なんて思っちゃって!!」


小春ちゃん、本当に苦情を聞きに行ったんだろうか・・・
学園側の3人はこの人にどういう反応を示したのか、知りたいような知りたくないような。

それとも、ひょっとしてそれほど深刻な話し合いでは無かったのだろうか。
小春ちゃんのこの話しぶりだと、案外そうなのかもしれない。
それなら、ちょっと一安心だけど。

でも、小春ちゃんだからなあ。
この明るい小春ちゃんだけ見ても、その場の実際の空気感がどうだったかなんて分からないよ。
うん、やっぱり、空気の読めない小春ちゃんに困惑している学園の生徒会幹部の人たち、そっちの光景の方が容易に想像できるだろ。

「あのさ小春ちゃん、愛理ちゃんは、その話し合いを聞いててどういう反応だった?」
「愛理ちゃんのことだけ聞くの? やっぱり気になるんだ、かわいい愛理ちゃんの反応は」

小春ちゃんに図星を突かれてしまった。
だって、その苦情話しの内容が内容だけに、愛理ちゃんの反応は気になるんだよ。
だが、ここは質問を重ねてごまかしを図ることにする。

「ち、違うよう。反応が気になっただけだよ。じゃあ、生徒会長さんはどう? 怒ってた様子だった?」
「茉麻?別に普通だったよ。愛理ちゃんはね、終始ニコニコしてた」

茉麻さんは普通で、愛理ちゃんはニコニコしてた? ってことは、とりあえずドン引きしてたってわけじゃないんだな。
ホッと胸をなでおろす。


でも、ちょっと気になることがある。
だから質問を重ねてみた。

「じゃあ、なかさきちゃんは?」
「別に? 普通の感じだったよー」

・・・・そんなわけない。
百歩譲って他の2人が普通の反応だったとしても、なかさきちゃんだけは話し合いを普通の態度で流すような、そんな軽い反応になるわけがない。
僕の高校の生徒会を学園に呼び出すぐらいの怒りのテンションなんだから。

「何か言ってたでしょ。生徒会長さんなんかは場をまとめるようなことを言ってたんじゃない? 結局その話し合いはどういう結論になったの?」
「どうだったかなー? 憶えてないや。あははは」

小春ちゃんの語ることを聞いていて感じた漠然とした疑問は、いま確信へと変わった。
間違いない。小春ちゃんは、向こうの人たちの言いたいことを、全く受け止めていない。

学園に何をしに行ったんですか、小春ちゃん。
こんなんで果たして学園の生徒会幹部の人たちは納得してくれたんだろうか・・・

まぁ、いいか。
小春ちゃんのその個性で、とりあえず皆を脱力させて気を削ぐ事には成功したとも言えるだろう。
むしろ小春ちゃんのおかげでうやむやに出来たとすれば、僕的には美味しいと言えなくも無い。

もういいや、それで。



「ところで小春ちゃん、あの学園に行ったときに舞ちゃんとは会えた?」
「舞ちゃんとはね、会えなかった」
「そうか・・・ それは、残念だったね。なかなか会えないね・・・」
「うん。でも、いつか会えるよ。いつか必ず会えるって、私はそう思ってるから」

自然に出会えるのを待っているような、そんな姿勢の小春ちゃん。
やっぱり小春ちゃんは舞ちゃんのことを特別な存在だと思ってるんだろうな。
だから、無理に会おうとしなくてもきっと会えるって、そう信じてるんだ。
そこまで思えるなんて。
信じる、ってことを体現してる小春ちゃんに大人っぽさをとても感じるよ。


そんなことを思ってちょっと尊敬の眼差しで見ている僕に、小春ちゃんの話しは楽しげに続く。

「でも、その分、なっきぃとはいーっぱいお話しできたから。楽しかったなー」

この人が自分でこう言うぐらいだから、それは本当にいっぱいお話しをされたんだろう。
お話しというと聞こえがいいが、小春ちゃんは人の言うことをほとんど(全く)聞かないのだ。お分かりのように。

小春ちゃんのマシンガントークに付き合わされたのか・・・
なかさきちゃん、大変だったろうな。

重ねて言うけど、小春ちゃん苦情の呼び出しを受けて学園に出向いたんだよね・・・
どうやら僕の確信した通りで間違いなかったようだ。小春ちゃん・・・何というか、さすがだよ。



「そうだ。学園のことに詳しいなら、学園で一番有名な人のことは知ってる?」
「学園で一番有名な人?」
「千聖お嬢様っていう人のことだけど、ひょっとしてお嬢様のことも知ってるの?」
「お嬢様のことなら、多少は存じ上げております」

どういう話しの展開になるのか分からないから、ここは控えめに言っておこう。
千聖お嬢様のことを小春ちゃんがどう語り始めるのかも興味あるし。

「やっぱり知ってるんだ! 本当に詳しいんだねw そう、そのお嬢様にもね、会えたんだよ!」
「お嬢様にお会いしたんだ。小春ちゃんはお嬢様とは知り合いなの?」
「うん。でも、お嬢様と会うのはとっても久し振りで、2年ぶりぐらいなんだ。
お嬢様ね、小春が来てるのを聞いて会いに来てくれたんだって。
『小春さん、お久し振りです。千聖のこと憶えてますか?』って!」


「小春のこと憶えててくれて!嬉しかったなー!!」


そうそう忘れたりしないと思うよ、小春ちゃんのことは。
お嬢様も、動物園にパンダがやって来たから見に来た、みたいなノリで会いに来たんじゃないの?

お嬢様と小春ちゃんか。
全くペースの違う2人だと思うけど、どういう話しをするんだろう。
ちょっと興味があるな。2人が顔を合わせているシーンには。


「2年間も会えなかったんだから積もる話しもたくさんあってねー、お嬢様と一杯お話ししちゃったよー!」

2年分の話しを一方的に話しかけられたのか・・・
お嬢様、小春ちゃんの話しを聞くだけでも、それは大変だったでしょう。
小春ちゃんの話しは終わらないですからね。
今もこのように・・・

「千聖お嬢様、すっかり大人っぽくなってたから驚いちゃった。
でも、子犬みたいなところは変わってなくて、もう本当にかわいいの千聖お嬢様!
それを見てつい抱きしめちゃったんだけど、そしたらお嬢様固まっちゃって(笑) そっか、そこは変わってないんだって思って。
お嬢様ね、なんかとても明るくなった。前に会ったときは本当におとなしかったんだよ。どこか寂しげで。
私が何を言っても、ずっと黙って聞いてるような子だったの。だから私はそのときお嬢様にry


お嬢様のことだ、柔らかい微笑みを浮かべながら、小春ちゃんの終わらない話しを最後まで聞いて下さったんですね。
なかさきちゃん同様、本当にお疲れ様でした。
そのとき僕の脳裏には、あのお嬢様の上品なお顔が固まっている様子が、目に見えるようにはっきりと思い描けたのだった。



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