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「愛佳ちゃんは悪い子でしたか?それなら、まぁちゃんが謝ります」
「ちょ、ちょっと待ったかんな」

たまらず、私は口をはさんだ。


「まさきちゃんの気持ちはわかった。
でも、ああいう言い方をしたら、お嬢様が傷つくんだよ。
愛佳さんがもし、悪いと思ってるんだったら、本人が謝らないと意味ないじゃん」
「でも、可能性は無限大です」
「意味わかんないから」


「・・・怖いです」


私の詰問口調に、マサキちゃんは不服そうに眉をしかめながら、お嬢様の背後にまわってしまった。


「まあ、栞菜ったら。意地悪をしてはだめよ」
「お嬢様はぁーん・・・」

そんな私たちを困ったような笑顔で見つめていたお嬢様は、ふと真顔に戻り、しばらく黙り込んでしまった。


「・・・」
「・・・・・」
「まーちゃん眠」
「うるさいかんな」
「うー・・・」

年下の子の扱い方、よくわからない・・・。
まあそれはともかく、考え事に耽るお嬢様の横顔、相変わらず美しいかんな・・・なんて、場違いな感想が頭をよぎった。

一見すれば、悩みなんて何もなく、のほほんぽわぽわと生きてそうな千聖お嬢様の、誰も寄せ付けないような二面性を感じさせる表情。
私はこれを横で見るのが好きだった。
今、お嬢様の心の中には何が映し出されているんだろう。
その言葉を待つように、じっと傍で待機する。


「ありわらさん遊びましょう」
「・・・・・今あたし、結構センチメンタルなこと考えてたんだけど。あと業平じゃねえよ」
「怖いです」
「・・・まぁちゃん、ちょっといいかしら」


いい加減、かみ合わない会話に私がやきもきし始めたころ、お嬢様がようやく視線をあげてくれた。


「千聖とお話してくれるかしら?」
「はーい」


すっかり定位置となった、お嬢様のおひざにごろごろと頭を乗っけて猫みたいに甘えるマサキちゃん。
その黒々した髪を手櫛で整えながら、お嬢様は口を開いた。


「私は、愛佳さんを嫌っているわけではないのよ、まーちゃん」
「よかったです」
「そうではないの。ただね、ただ・・・」

お嬢様の声が途切れる。


言いにくいことを言葉にしかねている、というよりは、まだお嬢様の中で整理しきれていない感情があり、ためらっているように見受けられた。


「愛佳ちゃんは優しいです。怖いけど」
「ええ。私は、あの・・・」


――コン、コン


再び、ノックの音。



「ちしゃと、起きてるでしょ?」

ちょっと舌たらずな声。
はぐれ(ryの片割れだからわかる、その不機嫌そうな音色に、あわててドアの前に立ちはだかる。


「…今取り込み中だから」

数センチだけ開けたドアの隙間からそう告げると、萩原の目じりが露骨に吊り上っていくのが分かった。


「てか、なんで有原が仕切ってるんでしゅか。ちしゃとは・・・」
「舞、忙しそうならええよ」
「あ・・・」

どうやら、渦中の彼女もご一緒のようで。


正直なところ、私の一存ならば、通したくはない。
だって、私のお嬢様にあんな言い方。


「愛佳ちゃん」


姿なんて見えない距離だろうに、マサキちゃんが嬉しそうな声をあげた。



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