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小春ちゃんが楽しげに話す学園での様子。
学園に行ってきた理由についてはともかく、小春ちゃんから聞いた学園の話は僕を羨ましがらせるに十分だった。
そんなにたくさん学園の生徒さんとお喋りが出来るなんて、いいなー。

そういえば、僕がこの渉外部に入ってから、まだ一度も他校への訪問ってさせてもらってないな。


「小春ちゃん、この渉外部の活動なんだけど、他の学校にも行けるとか言ってたのに僕は全然連れて行ってもらえないんだけど」
「それなんだけどね、女子校に行く時はさ、やっぱり女子生徒だけで行くことになってるらしいんだよねー」
「えー? 話しが違うじゃん・・・ それじゃ、僕がこの生徒会に入ってる意味がないんだけど・・・」
「楽しかったなー。愛理ちゃんとまたお話ししたいから、近いうちにもう1回行こうかなー。 ん? 何か言った?」

小春ちゃん・・・
僕の言うことをまるで聞いてない小春ちゃんの反応に、つい口を尖らせていじけてしまう。


「そのうち行けるよ。がまん、がまん。そんなことよりさー、このあいだ漬けた梅干が見事な出来でね(ry」

自分で勧誘しておいて、僕のする生徒会の話は“そんなこと”扱いですか・・・

そうだよな、他人の言うことなんか全く聞いてない小春ちゃんだもんな。
そのうち行ける、とかそんな気休め言っちゃってさ。
だって、男子生徒は行けないんでしょ、いま自分でそう言ったじゃん。

「僕はさ、あの学園・・・ゴホン、他の学校と交流できたら楽しそうだな、と思ったから渉外部の仕事を引き受けたのにさ」
「そうなんだ! じゃあ、そういうこと小春が何か今度考えてみるね」
「え? 小春ちゃんの裁量でそういうことができたりするの?」
「そりゃ私は部長だからねー。そういう権限もあるんだよ。だから、何をするのが一番いいのか、そういうことはいつもしっかりと考えてるよー」

そうだったのか。
全くそんな風に見えなかったよ、小春ちゃん。うん、全くね。

「それならさ、男子も女子校に行けるようにしようよ!小春ちゃんの権限でさ!!」
「なるほどねー。そういうのも交流の一環としていいかもしれないね」
「でしょでしょ! しょうがない。僕がじきじきに学園に行って色々とお手伝いしようと思います」
「まずは学園からなの? じゃあそれを実現するには、まず学園の風紀委員長さんの許可を貰わないとね」


・・・絶望的だ。
そんなこと、我が校に苦情を入れてくるほどのあの風紀委員長さんが許可するわけがない。
自業自得、なのかもしれないけれど。


上がりかけたテンションが、一気に萎えた。
がっくりと肩を落とした僕に、小春ちゃんが明るい声で話しを続ける。

「そういう生徒会活動も内申点に評価されるからねー。張り切ってるのは、ひょっとして推薦で進学とか狙ってるの?」

「そういうわけじゃないよ。推薦なんか元から考えてないし。だって、僕の成績じゃあ推薦とか絶対無理だから」
「そういえば、今日の指導では進路のことも話し合ったんでしょ。進路のことはどういう話しをしたの?」
「それが、今日は生活指導だけで時間がたっぷりかかったから、進路指導はまた後日なんだって。そんなの僕だけだよ」

そう、進路指導はおおまかな将来の希望を聞かれただけで時間切れだった。
僕は将来の進路をどう考えているのか聞かれて「将来的には製薬会社に入りたいと考えてますのでそっち方面の大学を」と言ったんだ。
そうしたら、僕の成績表を見ていた担任の先生の顔が途端に厳しくなった。
夢を見るのは素晴らしいことだけれども、現実を直視することも大切だぞと滔々と諭されたんだ。

まぁ、今の僕の成績では確かに難があるのかもしれないが、それはあくまでも現時点における学力のことだ。まだ全然本気出してないし。
この僕がちょっと本気で勉強に打ち込めば、見る見るうちに成績もアップするだろう。
(その根拠の無い自信はどこから出てくるんだケロ)


進路をどうするのか、か。
僕もそろそろ具体的に考えなきゃなあ、真面目に。



そういえば、小春ちゃんが進路をどうするのかって聞いたことないや。
小春ちゃんはもう3年生だけど、進路に対して今どのように取り組んでいるのだろう。
目の前にいる小春ちゃんに聞いてみた。

「ところで小春ちゃん、進路はどうするの?」
「まだ決めてないよ!」
「えっ? 決めてないって、もう3年生なのに?」

次に返ってきたのは、久住小春という人の凄さを余すところなく盛り込んでいる答えだった。

「いま考えてるのは、新潟のおばあちゃんのところで農業をしようかなと思ってて」


・・・・農業?


農業だって!?

まっっったくイメージが違うんですけど。
自由奔放な小春ちゃんのことだから、モデルになりたい!とかぶっ飛んだ答えを言ってきても驚かないけれど。
それでも、農業とはさすがに予想外の答えだった。

そういえば、自分で健康オタクだって言ってたっけ。
有機農業がどうのとか熱く語ってくれたこともあったな。
好きなのかな、そういうの。


「有機農法を真剣にやりたいんだ。そしてね、そんな農業のことをもっと人々に広く親しみを持ってもらいたいな、って考えてるの」

スケールの大きい話しを始めたぞ。さすが小春ちゃん。

「そのためには、どういう事が出来るかなって考えたりしてるんだけど、
例えば、女性アイドルを呼んで農業を体験してもらうっていうのはどうかなー。それで、その様子を番組として放送するの。面白そうじゃない?」

えー・・・ そうなのかな?
僭越ですが意見を言わせていただくと、これは言いにくいことだけど、たぶん、すごくつまんない番組になるよ、それ・・・
うん、間違いなく退屈な番組になるだろうな。
だって、そんな番組作っても番組の主題と視聴者層のミスマッチになるでしょ。
視聴者の求めているニーズをちゃんと把握して番組は作らないと・・・

だいたい、女性アイドルなんかどこから連れてくるつもりなんだろう・・・
小春ちゃん、何かツテでもあると言うんだろうか。
突拍子もないことでも、この人が言うと何故か実現してしまいそうな気に陥ってしまう。



それにしても、うちの高校からいきなり農業って。
自由にも程があるよ小春ちゃん。
そりゃあ、その答えはとっても小春ちゃんらしいけどさ。


確か、小春ちゃんはうちの学校の中でも優秀な成績の方だったと思ったけど。
だから相当難関の大学だって目指せるはずなのに。
それなのに、進学しないつもりなのか。

うちの学校で進学希望じゃない生徒なんて、今までにいたんだろうか。
ましてや、農業をやりたいとか。
それを聞いた進路指導の先生は腰を抜かしただろうな。


「小春ちゃん、進学は考えてないの?」
「今は考えてないよ。でもわからないけどね。小春ね、やりたいことがたくさんあるんだ!」

キラキラした表情でそんなことを言う小春ちゃん。
その顔を見ていると、この人は「何か」をやってくれそうな感じが漂っていて。
なるほどね、この人が何でミラクルと言われているのかよく分かる気がする。

『可能性は無限大』

それは、この人のためにある言葉なのかもしれない。

「だから、まだ決めたりなんかしない方がいいかなって思ってて。自分の人生なんだから、あせって決めたりはしたくないでしょ?」

そんなセリフ、勉強が出来る優秀な人だから許されるんだよ。
僕も1回でいいから、そんなことを決め顔作って言ってみたいものだ。

もう3年生の夏だというのに、この小春ちゃんの自由さ。
この人は、間違いなく大物になるだろうな。どんな道に進んだとしても。
それだけは僕にも分かる。


「進路指導で何か言われたりするかもしれないけど、進路は自分で納得できる道をしっかりと決めるようにした方がいいよ」
「いや、僕は普通に進学希望なので、そんなに先生から何かを言われたりはしないと思うけど」


「それに、何が決め手になるかなんて分からないものだよ。思ってもみなかったことで、自分の進路が決まったりすることだってあるかもしれないしね」
「はぁ・・・」
「だから、人生って面白いよんだねー!」

明るく話す小春ちゃん。
この人は人生を存分に楽しんでるんだろうなあ。
そんな、先輩の言っていたことは、平凡な一般人である僕にはあまり当てはまらないのではないかと思っていた。


ところが、小春ちゃんの言うことは、正しかったのだ。



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