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「ちしゃと、愛佳が話したいんだってさ。部屋、入っていいよね?」
「いや、明日でよくない?」

私と舞ちゃんの間に、見えない火花が散ったような気がした。

さっきの、お嬢様の茫洋とした表情・・・。それに、この人はまた、お嬢様を動揺させるようなことを言い出すんじゃないかという嫌な予感がする。

さっきマサキちゃんが言っていたように、おそらく、光井さんは何の悪気もなかったのだろう。
あるものをあるがまま、感じたままに言葉にした。ただそれだけ。


「・・・でも、そういうのが一番タチがわるいかんな」
「何さっきからぶつぶつと。そこどいてよ、愛佳はちしゃとに用があるんだから」
「ディーフェンス!ディーフェンス!」
「あきらめたらそこで試合終了ですね。まーちゃんは3ポイントシュートが」
「うるさいかんな」
「怖いです」
「うっざ・・・なんなの、ちょっと!有原!」


「…栞菜、いいわ。上がっていただいてちょうだい」


必死のスラムカンナの背中に、お嬢様からねぎらいの言葉がかけられる。


「いいんですか?」
「ええ。どうぞ」


お嬢様がそうおっしゃるのなら仕方がない。
道を開けた私を威嚇しながら入室する萩原、そして飄々とした表情の愛佳さん。

「お茶やお菓子の準備がなくて、ごめんなさいね」
「当たり前やん、こんな遅い時間なんやし」

あ、また。何でそんな風に言うんだろうな。

お嬢様は少しさみしそうに微笑すると、お膝のマサキちゃんを撫でた。


「今、まーちゃんワンちゃんですね。わんわん」

マサキちゃん・・・この状況でニコニコしちゃって、ほんとに場の空気なんか全然読めない子なんだろうな。
すっごくもやもやした気持ちでいる自分がバカみたいに思えて、よくわからない自己嫌悪。

そして、そのなんともKYな振る舞いのまま、マサキちゃんは突然爆弾を落としてきた。


「わんわん!…愛佳ちゃん、おじょーさまが悲しそうです。まーちゃんと謝りましょう。
愛佳ちゃんはごめんねしにきたんですよ」


一瞬、沈黙が部屋を駆け抜けた。

――いや、それはわかってたんだけど。なんとなく。
もうちょっと言い方というものが・・・案の定、愛佳さんは目を丸くしている、


「・・・別に、愛佳が謝ることなんてなんもないと思うけど」

いち早く我に返った舞ちゃん・・・いや、萩原が、そんなことを言ってくる。


「本気でいってんの?見損なったかんな」

徐々に、自分の頭がヒートアップしていくのがわかる。


「はあ?何なの、かんけーないじゃん、栞菜には」
「栞菜、いいのよ」
「よくないかんな。・・・なんでそんなに愛佳さん庇うの。
ずっとそうじゃん、そりゃ間違ったことは言ってないのかもしれないけど・・・でも、愛佳さんがお嬢様に悲しい顔をさせてるのは事実でしょ。あたしたち、はぐれ悪魔超人コンビじゃなかったのかよ!!!」
「・・・は?」



――あ、ちょっと今のはおかしいかんな。やり直したい。


「なりひらさんはやっぱりあくまだったんですね」
「もはや有原の面影もねえよ」
「怖いです」


「…よかったなあ、マサキ。いいお姉ちゃんができて」


その時、やっと光井さんが重い口を開いた。それも、ほんわかのんびりした、まるで何事もなかったかのような穏やかなテンションで。


「人傷つけといて、それはないんじゃないですか」

思わず、私の方がキツイ口調になる。


「あはは、そうやな。有原さんの言うとおりや」

人懐っこそうな犬顔をくしゃっと笑顔にした愛佳さんは、その次の瞬間、ふっとそれを自嘲気味な笑みに変えた。


「今お部屋にうかがったのは、うち、もうここでお暇させていただいた方がええのかと思って」
「まあ・・・どうして?」
「そうだよ愛佳、なんで?明日も舞と語る約束してたじゃん」
「そうやけど、どうもあかんわ。うちは、お嬢様を傷つけるようなことばっかり言ってしまうみたいやし」



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