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「愛佳さん、あの・・・よかったら、こちらに」

お嬢様は軽く腰を浮かせて、二人を手招く。

「・・・どうしたんでしゅか、本当に。今日のちしゃとは変だと思う」

着席してすぐ、舞ちゃんが口を開いた。
以前、頭に血が上ったままの私は、即反論する。


「変なのはそっちだかんな。お嬢様の心を乱してるのは、愛佳さんじゃんか。
勉強のことだってそう、さっきだって、キツい言い方してさ」
「てか、それは栞菜の意見でしょ?ちしゃとは?」

一斉に、お嬢様へと視線が集中した。


「キャーまーちゃんみんなに見られてますね」
「おめーじゃねーよ」
「怖いです」

すると、業を煮やした様子の舞ちゃんが、おもむろに席を立って、お嬢様の隣に腰掛ける。
その勢いのまま、膝枕のマサキちゃんをごろりと床に転がしてどかした。


「あーれー!あひゃひゃひゃ」
「まあ、舞ったら!」
「いいの。ちしゃとは舞の!・・・てか、愛佳は舞の大事な友達なんだよ。ちしゃとにも仲良くなってもらいたいじゃん・・・」


その言葉に、ライバルであるにも関わらず安心してしまった自分がいることに、私は少々驚かされた。
お嬢様に関しては競い合っている仲だけれど、やっぱり居てもらわなくては困るのだ。張り合いがないというもの。

「おいで、マサキちゃん。面倒みてやるかんな」
「まーちゃんのおかげで元気になりましたね」
「はーん?・・・てか、なんであたしには膝枕求めないんだよ」
「それはいらないです。ふかふかしてないです」
「なんだとコラ(ry」

機嫌を直した私と、マサキちゃんとの小競り合いをよそに、お嬢様はまたしばし考え込んでいるご様子だった。

それを至近距離で見つめる舞ちゃんに、少し離れた場所から目を細めてじっと待つ愛佳さん。・・・わかってる。おそらく、舞ちゃんは自分と似たところがあるから、愛佳さんを・・・。


「ちしゃと、愛佳はね、舞がサマーキャンプで他の子と揉めた時とか、ちゃんと舞の話聞いてくれたの。引率の人とかは聞いてくれなかったけど。
舞が途中で帰ろうとしたら、“ならウチも一緒に帰るわ”って言ってくれたし」
「そんな昔のこと覚えてるん?舞はすごいなぁ」
「舞は嬉しかったことは、いつまででも覚えてるよ」
「まーちゃんと同じですね。わーい」
「・・・・・・・・・まあ、だから、ね。愛佳は絶対間違ったことなんて言わないから。だって、舞の友達だもん」


――正直、舞ちゃんがここまで、お嬢様以外の誰かのことでムキになっているのは初めて見た。
具体的には語らないまでも、ほかにもたくさんのエピソードが、舞ちゃんが愛佳さんを慕う強い理由としてあるのが窺い知れるようだ。

警戒心が強くて、なかなか人を信用しないタイプの舞ちゃんだから、一度この人と決めた人には、こうして強い愛着心を見せるんだな、と思った。
特別に大切な人っていうのは、傍にいる誰かのことだけを指すんじゃなくて、いつまでも心に寄り添い続けてくれる人のことでもあるんだろう。

そう、それは、お嬢様にとっての・・・

「・・・そうね、舞の言うとおりだと思うわ」

その深い茶色の瞳をゆっくり瞬かせると、お嬢様は愛佳さんと舞ちゃんを交互に見た。

「今日は、おかしな態度をとって、不安にさせてしまって、ごめんなさい」
「ああ、そんなんええよ。うち、何かいっつもいらんこと言いすぎるから」
「そうではないの。私がおかしかったのは、愛佳さんのせいではないのよ」

すると、私にべったりひっついていたマサキちゃんが、再びお嬢様の隣へパタパタ移動した。


「ダメ、ちしゃとは舞のだってば!」
「怖いです」
「ほらマサキ、こっち来な。千聖お嬢様に迷惑かけたらあかんよ。ほら舞、早く隣いかんと、マサキにとられるで」
「じゃあまあちゃん、愛佳ちゃんでいいですよ」
「おいっ」


――ああ、なんか。
なんか、わかってたけど、やっぱりいい人なんだよな、愛佳さん。
私一人がプリプリ怒ってるだけで・・・私一人が大人げないだけなのかも。


「・・・最近、ずっと考えていたことがあって。
もう、千聖も高等部の1年生でしょう?それなのに、どうしてこんなにも子供っぽい振る舞いをしてしまうのか、悩んでいたのよ。
その、えっと、舞に、勉強を教えてもらっていたり。私は年上なのに」
「別に、舞の方が勉強はできるんだからいいじゃん」



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