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みおんちゃん、と名乗ったこの子。
その人懐っこい笑顔でお話しをしてくれる。

「みおんちゃんは3歳なんだ」
「そ。みおんには、おねえたまがふたりと、おにいたまがひとり。それから、あと2年するとおねえたまがひとりふえるからねってききまちた」

お姉さんが増える、ってどういう状況なんだ?
こういう上流階級の家柄だけに、僕のような平民には想像もできないような何か複雑な人間関係でもあるのだろう。

貰った冷水を飲んだりしたら、少し頭がスッキリしてきた。
そんな僕に、みおんちゃんが言ってきたことがある。

「ね、おままごとしよ」
「おままごと?」

僕は今仕事中なんだけどな。
でも、こんなかわいい子に頼まれたら断ることなんか出来ないじゃないか。
第一、倒れていた僕を助けてくれた恩義がある。
僕は受けた義理は必ず返す主義なのだ。本当に真面目だな、僕って。
(※注・仕事をサボりたいだけです)

「そ、おままごとしよ。みおんはおやしきのおじょうさま。あなたはツンデレっこのりょうせいのやく」

いきなり難しい設定を付けてくるみおんちゃん。
僕が女の子の役を演じるのか。
ツンデレっ子ってどうやって演じればいいんだ。
難しそうだな、それは。

『べ、別に付き合ってあげてもいいんだからね。でも、勘違いしないでよねー』

こんな感じかな? でも、照れてしまって上手く言えない。
どうも役柄に入り込めずセリフが棒読みになる僕に、かわいい演出家のダメ出しが入る。
僕の演技には大いに不満だったようです。
だが、みおんちゃんのその口調を聞いて僕の顔は引きつってしまった。

「なにそれー。うんこだろおまえ。つかえねーなー」
「み、みおんちゃん!? その言い方は・・」
「おにいたまのくちぐせ。おもちろいいいかただからよくまねするの」
「あ、あまり、そういう言葉遣いはマネしない方がいいと思うよ。みおんちゃんはお嬢様なんだから」


「やっぱり女の子やくはむりがあるみたいだから、じゃあ、せっていをかえてみまちゅ」

そうして頂けると助かります。

「じゃあね、そのツンデレりょうせいにこいをしてしまったおとこのひと、っていうせっていね」

近頃の3歳児の考える設定は、随分と凝ってるんだな。
ツンデレの寮生に恋をした男子、の役ね。

『僕は君から例えそんな冷たい目で見られたとしても、それさえ僕には幸せを感じるんだ。というか、その目でもっと僕のことを見て欲しい』
「いいかんじー。うまい、うまい」

キャッキャッとはしゃぐみおんちゃん。
かわいい・・・・
それを見て、その設定への感情も入った僕のテンションは急上昇していく。


「みおんちゃん、そこで僕の求愛を受け入れる感じで続けてみて!」
「きゅうあいをうけいれる?」
「そう、ついにその子は僕に心を開くんだ。僕のその思いに応えてあげるでしゅ、って方向のセリフを入れてね。じゃあ僕から行くからね」

『夏休みに入って君に会えない毎日がこんなに苦しいとは。もう僕は君がいないと息が出来ないんだ。だから今日から僕と付き合ってください!』

「ここでみおんがそのセリフを言えばいいの?」
「そうだよ。さあ、早く!」

『分かったでしゅ。そんなに思ってくれるなら、応えてあげないこともないでしゅよ。ふふん』

「みおんちゃん、上手い! なんか彼女の雰囲気が出てるよ!」
「かのじょってだれのことでちゅか?」
「いや、それはこっちの話しね。あぁ、そんなこと彼女から本当に言ってもらえたらなあ!!」

みおんちゃんがその円らな瞳で僕のことをじっと見た。


「ひょっとちて、セリフのいいかたがとてもおじょうずなのは、だれかすきなじょせいがいるの? だからかんじゅういにゅうができてたのね」

今時の女の子は小さい頃からそんなことまで分かるのか。
この子がませているのか、それとも女の子ってのは持って生まれてこういうものなのだろうか。

相手が小さい女の子ということもあって、僕は気軽に本心をさらけだしてみた。


「うん。おにいちゃんはねー、好きな女の子がいてねー。でも、なかなかその子は僕のことを構ってくれないんだ」

「どうすれば、彼女の心を僕に向かせることができるんだろうね・・・」

「でもね、それでもいいんだ。おにいちゃんはね、その子のそばにいてその子の笑顔を見守ること、それこそが僕の幸せなんだよ」



「みおんちゃんにはまだ難しいかな」


「ほんとうにすきなんでちゅね、そのひとのことが」
「うん、僕は本当に彼女がだいちゅきなんだけど、彼女は違う人のことしか見てないんだ・・・」
「かのじょはべつの人がすきなの?」

みおんちゃんの言ったことに僕は黙ったまま頷く。


「どうすればいいんだろうね」


なんで僕は3歳児に恋の相談をしているんだろう。

でも、この子が相手だからこそ、話したところで別に恥ずかしい思いをすることもなかったわけで。相手は幼女なんだから。
そのお陰で、心の中のことを洗いざらい話すということが出来て、なにかスッキリとした気分になれたんだ。
それに、僕は本心をさらけだすことで、自分の思いを再確認することもできた。

「でも、それでもいいんだ・・・彼女のその気持ちも含めて僕は彼女のことを・・・
「そこまで好きなんだったら、かのじょをうばいとっちゃえばいいじゃないでちゅか。かのじょが見てるその人から」

僕の言おうとした言葉を遮るように、そんな大それたことを言ってくるみおんちゃん。
奪い取るって・・・ 近頃の3歳児・・・


みおんちゃんの言ったことに思わず固まってしまった僕。
想像してみる。僕が彼女を奪い取るその相手は誰なのか・・・

そんな僕の極度の緊張感なんか全くお構い無しに、みおんちゃんはもう次の話題に行っていた。
打って変わったその話題を、楽しげな声で僕に話しかけてくるみおんちゃん。

「みおんね、夏休みに入ったから、もうすぐおねえたまたちのいる本当のおうちに行くの」
「本当のお家?」
「うん。みおんの本当のおうちはここじゃないの。そこにはおねえたまたちがすんでいるの」
「そうなんだ。家族で別々に住んでいるんだ」
「でも、おねえたまたちはいつもてがみをくれるから、みおんさびしくないよ」
「お姉さんたちも、みおんちゃんに会うのをとても楽しみにしてるだろうね」
「うん。おねえたまたちや、あとね、まほうつかいのおうちのひとたちにもあえるの。みおん、すごくたのしみ」

魔法使いのおうち、って何だ?
絵本の世界か何かとごっちゃになってるのかも知れないな。
やっぱり3歳児なんだ。微笑ましいw

「そうなんだ。それは楽しみだね。その本当のお家ってのは、どこにあるの?



僕がみおんちゃんにそう聞いたその時、ゴツン!という音がして頭頂部に激痛が走った。


「くおらぁ!お前、仕事もせずに何をやっとるんじゃ、コラ!!」

親方が怖い顔して立っていた。

「その方を誰だと思ってるんだ。言った筈だぞ、お屋敷の方と口を利くことはお前には許されてないんだ。覚悟しろ、ゴルァ!!」

また鉄拳制裁か。親方が拳を握り締め、それを頭上に振りかぶった。
思わず目をつぶった僕の耳に、入ってきたのはかわいらしいそのお声。

「ちがうの。みおんがあいてをちてもらっていたの。だからおこらないで!」

みおん様が僕を庇ってくださった。
親方も目を丸くしていたが、お嬢様から言われた言葉には従わざるを得なかったようだ。

「そうでしたか。それではお嬢様の仰せの通りに」

そのときのみおんちゃん。
僕はびっくりした。こんなに小さい幼女なのに、威厳というものが既に備わっていて。
この子、やっぱりこんなお屋敷のお嬢様だけのことはあるんだな。

みおんちゃんに恭しく頭を下げた親方が僕に向き直る。

「さぁ、仕事だ。持ち場に戻れ」
「はい」

最後にお嬢様にきちんとお礼を言っておけよ。なんていいながら親方は行ってしまった。

僕は言われた通り、みおんお嬢様にきちんとした挨拶をするため背筋を伸ばした。

「お嬢様、色々とありがとうございました。それでは仕事に戻らせて頂きますのでこれで失礼します。」
「とてもたのしかったわ。それでは、ごきげんよう」

こんな小さい子なのに、見事なまでに上品さを感じるみおんお嬢様の仕草。

あれ?
なんだろう、いま千聖お嬢様のことがふと頭に浮かんだんだけど。
みおんちゃんのその姿が千聖お嬢様と重なって見えたんだ。
気のせい、だよな。
っていうか、単にお嬢様つながりで連想したってだけのことなんだろう。単純だからな、僕は。



「リップ、おいで」
「ワン!」

ミニチュアダックスを引きつれ歩いていくその小さい後ろ姿。
いつまでも見ていたくなるような、そんなかわいい後ろ姿に僕は癒されたのだった。


みおんちゃん、かわいかったなー。
またいつか会えるといいな。

って無理だよな、そりゃw 
住んでいる世界が違うんだ。もちろんそんなこと分かってる。

でも、みおんちゃん、本当にかわいかったな。
またいつか会(以下ループ)


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