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「・・・でもな、うちもちょっと、今日はいつも以上にキツいとこあったかもしれん」

すると、愛佳さんが唐突にそんなことを言い出した。


「そうなの?何で?」
「ふふ、何でやろなあ」
「ちょっと、もったいぶらないでください」

私の抗議の声も、流し目でサラッと受け流す。
舞様を手玉に取る人だ、これぐらいのクレーム、どうってことないんだろう。
だけどお嬢様が動揺している以上、騎士(ナイト)としては放っておくわけにはいかないのだ。


「愛佳さんと舞様、お2人の仲の良さはじゅーぶんにわかりましたので、そろそろお引取り願えませんでしょうかね」
「なんや、あんたが決めることやないで。うちはお嬢様と話してるんや。そういうおせっかいがなぁ」
「・・・んん~」


いきなり、私の横にいたマサキちゃんが、唸り声とともに頭突きをかましてきた。


「おぶっ。なんだよ!」
「・・・ちさとー」
「呼び捨てかよ!」

「あらあら、まーちゃんたら、どうしたの?眠くなってしまったかしら?こちらにいらっしゃい」

ああ・・・あのバニラの香り漂うふ、ふふとももに、頭を・・・子供の特権、フル活用しすぎだろ!

「・・・まーちゃん、おなかすきましたぁ」
「今そういう場合じゃないんだけど。てか、なんでナチュラルにちしゃとの膝にいるわけ?なんなの?」
「まーちゃんを苛めてはいけません」


グズるマサキちゃんに、しゃーないな、なんて笑う愛佳さん。お嬢様に対する態度とは全然違っていて、私はますます苛立ちを覚えてしまう。


「まあ、可哀想に。め・・・村上さんに、軽食を持ってきてもらいましょうか。栞菜、スタッフルームに内線を・・・」
「御意。」
「うわあ!」

受話器を手にかけたところで、唐突にドアが開いた。


「まあ、めぐ・・・村上さんたら、ご用意がいいのね」

ワゴンの上に、ティーポットとフルーツの盛り合わせ。
遅い時間にもかかわらず、いつもどおり涼しい顔しためぐぅが、颯爽と部屋に入ってくる。


「監視してたのかよ」
「はい?何のお話でしょうか、有原さん。
常にお嬢様の欲していらっしゃるものを考え、逐一提供するのは、メイドとして最低限度の行動ですけれど」

大方、コップをドアにつけて聞き耳を立てていたんだろう、仕事しろ仕事!


「フルーツ!バナナー、いちごー!」
「はいはい、お席についてくださいねー。佐藤さんは落ち着きがないんだから、ふふ」

この鬼軍曹までも懐柔するとは・・・。ハチミツシロップのかかったイチゴをお嬢様に渡して、あーんで食べさせてもらうという傍若無人っぷり!

「なりひらさんも食べましょうね」
「夜食は太るかんな」
「だめ。みんなで食べるの」


急に、マサキちゃんの声のトーンが変わった。
あの時・・・愛佳さんを庇って、責めないであげてほしいと訴えたときの、真剣な声色を髣髴とさせる。

「はい、どうぞ」
「う・・・」

差し出されたオレンジを拒む事ができず、あえなく手のひらに乗っけられてしまう。

「ちさとーはバナナ、あいかちゃんはキウィです。・・・ドラゴンフルーツとドリアン、どっちがいいですか」
「なんで舞だけゴツいフルーツばっかなんでしゅか」


全員に配り終えたマサキちゃんは、満足そうにお嬢様のお膝にごろんと頭を乗っけた。


「女の子は、とりあえず甘いものがあれば大丈夫です。ってえりぽんさんがいってました」
「・・・・ふむ」

一見、唐突で突拍子もない行動の連発に見えて、マサキちゃんはさっきから絶妙に場を仕切っている(えりぽんが誰だかはわからんけど)。
険悪そうになれば狂言回しのように飛び回って修復し、糖分で落ち着かせようという配慮まで・・・。

マサキちゃんは、常日頃からできないこととできることの差がはっきりしすぎていて、苦しんでいると言っていた。

純粋に℃天然で自由人なところはあるだろうけれど、彼女の行動の一つ一つは、たくさんの思いやりに包まれているのだろう。
このお堅い愛佳さんや、めぐぅがマサキちゃんを温かく受け入れている理由が、わかったような気がした。

「はー、甘い果物やな。こんないいもんばっか食べてて、贅沢なんちゃう?」
「あら、ウフフ。千聖は酸っぱいお蜜柑や、お庭の木苺も大好きなのよ。
小さい頃は、海辺の別荘のお庭の草を弟と手当たり次第毒見して、お父様に叱られたことだってあるわ」
「あはは、タンポポ、苦かったやろ?うちも昔食べたわ」
「へー、舞はツツジの蜜がおいしすぎて、花ごと食べておなか壊したことあるよ」
「まーちゃんはラフレシアを食べてみたいですね」


なんか、お屋敷では毎夜恒例のガールズトークタイムのノリと同じだ。
あれだけズケズケな印象だった愛佳さんも楽しげだし、お嬢様も愛佳さんに遠慮するような様子はもうない。
マサキちゃんの言うとおり、女の子というのは美味しいものの前では自然と心が柔らかくなるんだろう。
そして会話が一通りクロスして、笑顔の余韻が残ったまま、愛佳さんは再度口を開いた。


「なーんか、うち、焼きもちやいたのかもしれんなぁ」
「やきもち?どういうことかしら」

ドキッと心臓が跳ね上がったような気がした。
愛佳さんの発言で、お嬢様が自分の気持ち――嫉妬心、に気がついてしまったら、私としては面白くないから。

だけど幸い(?)ピンとこなかったらしく、お嬢様は少し困惑したように愛佳さんを見つめているだけだった。

「ま、わからないならええよ。こっちの話だから」


ふふ、とめぐぅが笑いを噛み殺す。

「舞もよくわかんないんだけど。愛佳、誰に嫉妬してるの?」
「あははは、気にせんでいいって」
「・・・ウフフ?」
「え、何でちしゃとも笑ってんの?舞関係ある?ねー、なんで仲間はずれにすんの?有原何笑ってるんでしゅか!」


お嬢様が愛佳さんにヤキモチやいて、愛佳さんがお嬢様に嫉妬して。舞ちゃんは双方に、自分をハブるなと甘えて見せて。
単純すぎて複雑化している三角関係。果たして、ぽわんぽわんなお嬢様が、その意味にどれだけ気がついているのかはわからないけれど、もうきっと大丈夫だ。


「まーちゃんのおかげですね」
「違うかんな。甘いもののおかげだかんな」
「まーちゃんのおかげですね」
「おめーきいてんのか人の話」
「まーch(ry」


私たちのエンドレス禅問答の最中、「さて」と愛佳さんが姿勢を正した。


「まあ、一応聞いとくわ。・・・うち、家帰ったほうがいいかな、お嬢様」

それを受けたお嬢様、もうさっきまでのオドオドした顔ではなく、ふと黙った次の瞬間、いたずらっ子のように目を三日月にした。


「あら、体験とはいえ、愛佳さんは千聖のおうちのメイドなのでしょう?仕事を放棄して、お帰りになるの?ウフフ」
「おっ、言うようになったやん、お嬢様」
「ハァハァハァ(俺)」

本来は気位も高いし、決して気が弱いわけでもないお嬢様の、なかなか引き出せない一面を引き出してくる相手。

「そうだわ、愛佳さん、明日のお仕事だけれど、午前中は、千聖の勉強を見て頂戴。命令よ。ウフフフ、め・・・村上さん、問題ないわね?」
「仰せのとおりに、お嬢様。光井さん、そういうわけですから」
「はいはーい。うち、結構バシバシ行くからな。先に言っておくわ」
「舞は?舞も愛佳と一緒にこっち来ていいの?」
「萩原さんは私と庭掃除!」


・・・このままご縁が続けば、もしかしたら素敵なお友達にだってなれるんじゃないか、と思った。まあ、ライバルは少ないほうがいいので以下略。


「まーちゃんは明日お仕事ないんですか。さみしいですね」
「あー・・・それなら、あたしとオセロで遊ぶかんな。寮生で、あたしより強い子いないからつまんないんだよね。マサキちゃん、得意そうだかんな」
「ゲーム好き好き!」

変態はオセロが強いっていう舞の仮説があってでしゅね・・・という萩原の独り言は華麗にスルー。


「案外面倒見がいいんですね、ぷぷっ」
「はーん?何のことやら」

一人っ子の最大のお姐さん力、ちゃんと見ていてくださって何よりです、鬼軍曹様。


もう夜も更けようという時間なのに、舞ちゃんも愛佳さんも部屋を出ない。マサキちゃんはついに舞様の胸に顔を突っ込んで、おでこをはたかれるという、怖いもの知らずなスキンシップに及び出した。

「・・で、うちの通ってる学校では・・・」
「でね、舞は総務なんだけど、熊井ちゃんって言う子がほんとはんぱなくてぇ」
「まーちゃん今から英語でしゃべったら罰金ですね。おっけー。あっ」
「おめーは誰と戦ってんだかんな。お嬢様、それより・・・」
「あら、まーちゃんは遥と同じ年なのね?遥はね、幽霊さんで」
「お嬢様方、お茶のお代わりはいかが?なければ私も今日はここで寝るわ。そもそも今、勤務時間外ですし(キリッ)」


タータンチェックのように、さまざまな色の声が縦から横から交じり合っていく。

お喋りは尽きない。
この日、お嬢様の部屋の電気は朝まで灯されていて、朝、目を吊り上げたなっきぃにたたき起こされるまで、私たちは団子のように丸まって、仲良くふかふかソファで眠り込んでいたのだった。




―学習塾夏期講習―

川* ^_〉^)<まっさらぴんのまーちゃん~♪
ハo´ 。`ル<あれ・・・こいつのケータイの待ち受け・・・?

ハo´ 。`ル<おい、なんでちさとちゃんとの2ショット写真なんか持ってんだよ
川* ^_〉^)<ちさとー可愛い!
ハo´ 。`ル<知ってるよそんなの!ちさとちゃんとどういう関係なんだよ
川* ^_〉^)<・・・

川* ^_〉^)<ちさとーのお膝ふかふか♪ちさとーのお胸ぷくぷく♪おなかもやーらかい♪

ハo´ 。`#ル<お前ふっざけんなよ!
Σ川* ^_〉^)<怖いです怖いです
(先生#)<工藤さん!授業中ですよ!

ハo´ 。`ル<くそー、あたしだけかよ
川* ^_〉^)<色っぽいちさとーじれったいまーちゃん~♪

ハo´ 。`ル<・・・おい
川* ^_〉^)<はーい
ハo´ 。`;ル<ち、ちさとちゃんの膝って、そんなふかふかなの?
川* ^_〉^)<ホットケーキみたいです。いーにおい♪
ハo´ 。`;ル<へ、へー・・・。ホットケーキ・・・
川* ^_〉^)<なでなでしてくれます。ちさとーちさとー

ハo´ 。`ル<いいなあ・・・
川* ^_〉^)<・・・

川* ^_〉^)<まーちゃんとちさとーの写メ、あげますね。メールアドレスください
ハo´ 。`ル<まじで!
川* ^_〉^)<しかも!
ハo´ 。`ル<おう!
川* ^_〉^)<なんと!
ハo´ 。`ル<よっしゃ!
川* ^_〉^)<まーちゃん、写真を加工できます!すごーい!
ハo´ 。`ル<あん?

川* ^_〉^)<とりみんぐっていうのを使うと、ちさとーとまーちゃんの写真を切り離すことができます。
ハo´ 。`ル<え・・・
川* ^_〉^)<かたっぽだけ送って、すどぅさんの写真を組み合わせれば、2ショット写真が完成しまーす!キャーまーちゃん頭いいですねー!

ハo´ 。`ル<お前、いい奴だな・・・。あたしはすどぅじゃなくてくどぅだけどな。
川* ^_〉^)<授業が終わったら、送りまーす!

―夜―
~♪♪♪
ハo´ 。`ル<おっ、やっときた!待ちくたびれたよー
ハo´ 。`ル<組み合わせるあたしの写真も撮ったし、どれどれ・・・

ハo´ 。`ル<・・・

ハo´ 。`ル<まあ、写真をトリミングしてくれたのはいいだろう

ハo´ 。`#ル<なんでお前の写真送って来るんだよ!!!1!ちさとちゃんのは!!!

*****

リ*・一・リ<あら、まーちゃんからメールだわ

川* ^_〉^)“まーちゃんお友達増えました♪2ショット写真作ってくれるそうです♪”

リ*・一・リ<作る?まーちゃんたら、不思議なことを言うのね。ウフフフ

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