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久し振りに番外編をひとつやってみます
時間軸は本編で現在進行中の時間から丸1年ほど進んだところ、少年が高校3年生の夏のお話しになります
あっちこっちに話しが飛びそうでちょっと長くなるかもです

あの地震以降、少年はもぉ軍団の人たちに対して、その心の中での意識が変化しています
表面上は変わってないように振舞ってますけど、心の中では彼女たちに対してはっきりと尊敬していたりするようになってます
彼女たちからの扱いは全く変わっていないにもかかわらず・・・



今日も夏の日差しがまぶしい

そんな真夏の太陽を感じながら、僕は街に出てきていた。
そして、普段の僕には全く縁の無いような店をさっきから巡っている。


今日出かけてきたのは、ある買い物をするため。


その買い物をするために、今年も夏休みに入ったらすぐにアルバイトをしたのだ。
やっぱり、自分の労働で稼いだお金でそれを買いたかったから。

でも、僕は一応受験生だし、アルバイトする時間をそんなに長々と取ったりはできない。
だから、短期間で稼ぐために時給が飛びぬけて良かった肉体労働のバイトを一週間だけやったのだ。
(ちなみに、熊井ちゃんからのバイト斡旋は今年も丁重にお断りしました)


去年の園芸の仕事も良かったけれど、今年は短期間で稼ぐためにこの仕事を選んだ。
そのバイト、建築現場での作業はきつかった。
炎天下、一日中土砂や砂利と格闘したりして。本当に大変だった。チンタラやってると怒鳴りつけられるし。
本当に噂どおりきつかったな。あちこちが筋肉痛になったりして。足腰なんかまだパンパンだったりする。

でも、そこらへんのバイトと違って何といっても時給が魅力だったのだ。
短期間で稼ぐためなら、多少の苦労は我慢できる。
その甲斐あって、無事に資金として十分な額を確保することが出来た。

その資金を胸に、勇んで買い物をしに街へやってきたという訳なのだ。

今もまた、ある店のショーケースに見入っている僕。
その背後にその人が近づいてきていたことに、僕は全く気付かなかった。
いきなり声を掛けられる。

「よっ、少年!」

振り返ったとき目に入ってきたそのお姿を見て思わず狼狽してしまった。
こんな時にこんな店先でこの人に会うとは。
よりによって・・・ 何てタイミングが悪いんだ。


「・・・も、も、もっ、桃子さん!!!」
「なんだよー、そのリアクションは」
「べ、べ、べ、別に・・・」
「ふーん? こんなところで、何してるの?」
「い、いや、ちょっと、買い物にですね」
「買い物って、このお店に少年が?」

そう、この店、おおよそ僕がいるような店では無いんだ。
だって、ここは女性のアクセサリーなんかを扱っている店なんだから。


「アクセサリーを?何のために?」

なんでそこにそんな食いついてくるんだろう。
僕の反応に何かおかしいところでもあったのだろうか。

まさか、見抜かれたとか?・・・

大丈夫だ。そんなわけない。落ち着け自分。

「そういう趣味があるの? 実は女装するのが好きとか?」
「違いますよ!」
「じゃあ、ちゃんと答えてね。何しにこのお店に来てるの?」


「いや、実はある人への誕生日プレゼントを探しに・・・」


・・・・・


僕って正直者ですよね。
ホント、頭にバカが付くぐらい。


「ふーん、誕生日プレゼント、ねぇ」

僕の答えを聞くと、桃子さんの顔が変化した。
さっきからも楽しそうな表情だったのだが、いまそのお顔は更にニヤニヤとしたものへと変化したのだ。
後から考えると、この時点で既にバレてたのかもしれないな。だって、相手は鋭い桃子さんだもん。


「ある人って、誰なんだろうね」
「いや、その・・・」
「別にいいけどねウフフフ。いいんじゃない、誕生日にプレゼントなんて」

面白いことに出会ったと言わんばかりの、桃子さんのその楽しそうな表情。
やっぱり僕の事からかってくるんだろうな、なんて思っていたら、桃子さんは予想外のことを言い出した。


「それって女の子へのプレゼントなんでしょ。なんなら、もぉが相談に乗ってあげようか?」

桃子さんが優しく微笑んでくる。
でも、こういう優しい桃子さんは要注意なんだ。
冷静に考えれば、その笑顔を見たときに僕は断るべきだったのかもしれない。
(まぁ、断ったところでつきまとってくるんだろうけど、この人は)

でも、女の子へのプレゼントって何を選べばいいのかよく分からないし、アドバイスをしてくれるっていう人の存在はありがたい。
だから、僕は桃子さんの提案を受け入れたのだった。


「どういうのを贈ろうと考えてるの?」
「このシルバーのイヤリングなんかどうですかね」
「スターリングシルバーって。これ本物のシルバーだよ!?」
「分かってます。本物だからこそ、いいなと思って」
「えっ?そんな高価なものを私に?」
「違いますよ!」
「ぶー。なーんだ・・・」

そう言って口をとがらせる桃子さん。


か、かわいい・・・・・


こういう仕草が本当にカワイイんだよね、この人。
そんなこと思ってることがバレないように、絶対に表情には出さなかったけど。


「ふーん。イヤリングね。でも、なんでこれにしようと思ったの?」
「確か彼女はアクセサリーとか集めるの好きだったよなと思ったんで、だから・・・」


言ってから、しまった・・と気付いた。
そんな贈る相手のヒントを言ったりして・・・

でも、大丈夫だ、落ち着け。
だって、それだけ聞いても誰のことなのかなんて分からないだろ。


実際、桃子さんはそれを聞いてもそこには触れてこなかった。

でも不安だ。
桃子さんのことだから分かってても意図的に触れてこないだけで、実は何か企んでたりするのかもしれないし。
相手が桃子さんだと思うと、僕はもう疑心暗鬼になってしまい心の平穏を保てない。


僕の言ったことに、桃子さんは気付いたのか気付かなかったのか・・・・


桃子さんとのやりとりって、こんな感じでいつも僕は緊張を強いられるんだ。
彼女は特別のことは何もしていないのに、なぜか僕はパニックに陥らされてしまうのだ。
そして、独り相撲でも取ってるかの如く自滅の道を歩まされる。
これ、桃子さんは狙ってやってるのだろうか。その桃子さんのそぶりからは、いつもそれが全く分からない。

でも彼女のことだ。もちろんそれは彼女の意図していることなのだろう。うん、桃子さんが狙ってないわけがないと思う。
僕の心中なんかお見通しなんじゃないかと・・・いつもそう思わされてしまうんだ。
元から僕ごときが敵う相手じゃないんですよ、この人は。
さすが軍団長でしょ。

そんな僕の葛藤なんて気付いてないのだろう(本当は?)、桃子さんは優しそうな表情を僕に向けてくれた。
またそれがお姉さんらしい柔らかい表情だったものだから、つい僕はその話題を更に続けてしまった。


「それか、あとは、誕生石にしようかな、とも思ってるんですけど」


僕がそう言うと、桃子さんは更に身を乗り出してきた。熱心に人の話しを聞こうとするその姿勢。
相談に乗ってくれると言ったこと忘れていないんだな。桃子さんはそういうところちゃんとしてるよな。

そんな彼女が僕に質問をしてくる。

「誕生石かぁ。相手の人は何月生まれなの?」
「8月です。だから、誕生石はペリドットですね」
「8月ね。そっか、その人は8月生まれなんだウフフフ。8月かw で、何だって、ベリドット?」
「ペリドット、です。ネットで検索して調べましたから。えっと、これですね」

ショーケースの中のそれを桃子さんに示す。

「この澄んだ緑色。すっごくキレイな宝石ですよねー」

その桃子さんの顔、テンションが上がってるみたい。
やっぱり女性って誰でも宝石ってものが好きなのかな。

「誕生石の指輪か。ちょっと予算ギリギリだけど、確かにこれでもいいな。とても綺麗な緑色だし」
「確かにキレイだけどぉ、でもやっぱりぃ、もぉはピンク色の方が好きなんだけどなー」
「だから、プレゼントする相手は桃子さんじゃないですから」

「でも、やっぱりちょっと予算かけすぎじゃない? こんな高価なアクセサリーや指輪なんてプレゼントしたら、逆に引かれちゃうよ」
「そういうものなんですか? 女の子へのプレゼントは難しい・・・ じゃあやっぱり何かブランド物の方が喜ばれるんでしょうか?」
「それも違うでしょ。だからさ、もうちょっと高校生らしいものにした方がいいって」

それでね、そういうのにしたら金額的に余裕ができるでしょ、その浮いたお金の使い道なんだけどねウフフフ
なんて言いながら桃子さんが妖しく笑うが、それは見なかったことにしよう。
僕は桃子さんのその笑顔は華麗にスルーした。

「いや、やっぱりこれにしようかな、と思います」


「それにしても少年、ずいぶん高価なものを買うつもりなんだね」
「だって、18歳の誕生日って何か特別な感じがしませんか? それで、まぁなんていうか、プレゼントにもちょっと気持ちを込めてみようかな、と思ったんで」
「18歳の誕生日?」


桃子さんが目を見開いて僕をじっと見つめる。


しまった。


今の発言はど真ん中すぎたかも。
さすがに調子に乗りすぎただろうか。
そんな甘い球、桃子さんはさすがに見逃してくれなかったようだ。

ここまでの会話で桃子さんがそこに触れてこないものだから、そこはあえてスルーしてくれてるのかなと思ってた。

でも、やはり違ったんだ。
そりゃそうだ、相手はあの桃子さんなんだ。スルーなんてしてくれるわけがないよね。
彼女は打ち返すのに絶好の球が来るのをじっと待っていたんだ。

効果的な一撃を繰り出すことが出来るそのタイミングを、じっくりと見極めていたのか。しかも、ここまでの間をずっと楽しみながら。
さすが軍団長・・・


彼女にとって、待っていたその機会がついにやってきたようだ。
楽しそうな表情の桃子さん。おもむろに口を開いて僕に問いかけてくる。

「その人は18歳になる人なんだ」
「あ・・・ あの、その・・・」
「誕生月は8月なんでしょ。8月で18歳になる人かあ」

目をぱちぱちする桃子さん。
その微笑が、とっても怖い。


「あばばばば・・・」
「いや、いいんじゃない? プレゼントあげたいんでしょ。何も悪い事してるわけじゃないし」
「そうですか? そう思います?」
「うん、思うよ。誕生日にプレゼントを贈る、うん、とってもいいんじゃない?」

そこでまたニッコリと微笑む桃子さん。

「それにしても、そんな高価な誕生プレゼントなんて、よく予算を確保したもんだね。少年って意外とお金持ちとか?」
「違います。普段はいつも金欠ですよ。これは今回のために僕が自分で稼いだお金ですから。アルバイトをして」

「誕生日のプレゼントを買うためにわざわざアルバイトまでしたんだ!」 

わざとらしく驚いた桃子さんが僕の顔を正面から見つめてきた。
桃子さんに見つめられたりして、ドキドキしてしまう。


そのぱっちりとした目を向けられ、ぶりぶりの口調で言われたこと。

「もぉの誕生日は3月6日だから。よろしくね。ウフッ」

もぉはシルバーアクセサリーや誕生石のリングなんてのもいいけど、あとねブランド物なんていうのも決して嫌いじゃないよ、とかつぶやいている桃子さん。

「またバイト頑張ってね、そ の 直 前 に 」
「いや、3月の直前って、そのころ僕はまさに受験なんですけど・・・」
「楽しみにしてるにゃん♪」


いつものことだけど、どこまでが真剣な話しなのか全く読めないですよ、桃子さん。


この人って、本当に・・・



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