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桃子さん、ここでその2人と待ち合わせているって言うのか。
ってことは、早急にこの場を離れる必要があるんじゃないか?
のんびり桃子さんと会話をしてる場合じゃないだろ、僕は。

「軍団の皆さんがここで待ち合わせを・・・」
「そうだよ。もう来てもいい頃なんだけどぉ」

・・・・まずい。まずいだろ。
もう猶予は無い。急いで桃子さんにお別れの挨拶を交わしてここから立ち去らなければ。

「そうですか・・・ それじゃ桃子さん、僕はこれで失礼しm
「おーい、ももー! あれ?何で一緒にいるの?」


嫌な予感、的中。
僕の言葉は現れた熊井ちゃんにぶったぎられる。


なんてこった・・・ こんなところでもぉ軍団勢揃いなんて。
なーんか嫌な予感がする。ていうか嫌な予感しかしない。

「ここでね偶然会ったんだ。なんかね誰かにあげるプレゼントを探しに来たんだって」
「ちょ・・・桃子さん!」
「誰へのプレゼントなんだろうねイヒヒヒ」

ニヤニヤとしている梨沙子ちゃん。
でも、答えは知られてないはず。いま梨沙子ちゃんは軽い気持ちで僕をからかっただけだろう。
うん、だって梨沙子ちゃんには絶対分からないはずだ。

僕はそっと熊井ちゃんの反応をうかがってみた。
熊井ちゃんも桃子さんの言ったことに反応を示しているようだ。

やっぱり感づかれちゃったかな・・・


だが、彼女は梨沙子ちゃんとは全く違う点に注目したようだった。


「なに? それじゃあ小金を持ってるんじゃん!」


そこ、なのか・・・

彼女のその反応に、ホッとしたような、ちょっとがっかりしたような・・・
そんな僕の複雑な心境など全く分かっていないだろう熊井ちゃんが続けて言ったこと。

「ちょうどいいや。じゃあ今日は予算の心配をしないで存分に遊べるね!」

いや、チョトマテクダサイ。
それはどういう意味なんでしょう。このお金は僕が頑張って稼いできたお金で。
なぜ稼いだかというとそれはですね・・・


「さっき少年に教えてもらったんだけど、割りのいいバイトしたみたいでたんまりと持ってるみたいだよ」
「それだけあれば豪遊できるじゃん。これはもうザギンでシースーだね!!」
「すごいゆ!」


「3人で銀座でお寿司を食べても、それでもまだ資金の半分は残るんじゃない? 凄いねー」


銀座で寿司とか言い出してるし。
・・・って、おい! 3人って何だよ!!
まさかとは思うけど、僕の金なのに僕には食べさせてくれないつもりなのか!

まさか、そんなことは無いよね。常識的に考えて。
でも、相手は熊井ちゃんなんだ。常識の通用する相手じゃry


「寿司を食べたら残りのお金で、次はホストクラブに行って遊ぼうよ!」


人の金だというのに、この人には遠慮という言葉は無いのだろうか。
しかも、そんなところに行こうだなんて。よくそんな発想が出てくるな、信じられない。
そんなにホストクラブが好きか、熊井。



冗談だろ、と思っていたこのやりとり。
信じられないことに、本当に銀座に連れて行かれ寿司を食べてきたのだ。

他人の金の使い道を勝手に決めたりしてさ、あろうことかそれをその通り実行するなんて・・・
3人もいるんだから誰か一人ぐらいは止めろよ。そんなのはおかしい、って。
この人たちに常識というものはないのだろうか。僕は泣きそうになりながら、そんな愚問を心の中で繰り返していたのだった。



その後に起きたことは、あまり思い出したくない。
早く忘れてしまいたい記憶として封印してしまいたいのだ。


美女3人を引き連れて銀座を豪遊。


そういう表現をするととても聞こえがいいのだが、実際はそんないいものでは無かった。
だって、僕はまるで召使いのような扱われ方を終始されたのだから。
だから表現としては、美女3人に引き回される召使い、という方がぴったり来る。

こんなことはあまり言いたくないが、銀座で寿司なんてものが食べられたのは誰のお陰だと思ってるんだろう。スポンサーは僕なんだぞ。
そんな僕への感謝の気持ちというものが、彼女たちからは全くと言っていいほど感じられなかった。


まぁ、いいけど。

僕も寿司を食べることを、熊井ちゃんが許可してくれただけでも良しとしないと(僕の金なのに・・・)



タクシーで乗りつけた先は、見るからに高級そうなお寿司屋さんだった。
何故そこなのかというと、行き先を尋ねるタクシーの運転手さんに「銀座の高級な寿司屋まで!」とドヤ顔の熊井ちゃんが告げたからだ。

ちなみに、タクシーに乗ったのは、「銀座に行くんだったら、駅から歩きじゃなくてタクシーでしょ!」と言った熊井ちゃんの提案による。

僕はこの店の高級な雰囲気に飲まれて緊張が解けなかった。

だって、この店はおおよそ高校生が入るような店では無かったんだから。
その高級な雰囲気に緊張を覚えないわけがない。


だが、僕と一緒に来ている人たちは、至って気軽な感じでこの高級店に足を踏み入れた。
まるでガ○トかジョ○サンにでも入るかのように。

この人たちには「緊張する」とか、そういう感情ってのは存在しないんだろうか。
しないんだろうなあ。


ただ、梨沙子ちゃんだけは、少し緊張しているみたいだったけど。
きっと彼女だけが全うな神経の持ち主なんだろう。
梨沙子ちゃんの常識的な感覚こそが僕の最後の希望だ。もし彼女がいなければ僕は早々に精神的崩壊に追い込まれていたかもしれない。


一方、梨沙子ちゃんを除いたもぉ軍団の人たち、つまり軍団長と自称リーダーは実に堂々とした振る舞いでした。
こういう店でも決して自分らしさを失わないその態度、本当に堂々としていて清々しいほどだった。
この貫禄、この2人ってホント何者なんだろう・・・

彼女たちと違って、僕はそんな高級な雰囲気に圧倒されていたのだが、そこで出てきた寿司はとてつもなく美味かった。
僕だけ並だったんだけど(彼女たちはもちろん特上)、それでもこんなに美味い寿司は初めて食べたよ。


美味しいものを食べると、気持ちも落ち着いてくる。

時間とともに、これは本当に現実の出来事なんだ、と思うことができるようになってきたわけで。
ようやく落ち着いて周りを見ることもできるようになった。
銀座の高級店ってのは、こういう雰囲気なんだなあ。僕なんかには当然全く縁の無い世界だから。
千聖お嬢様のような方が来るような所だろ。あぁ、一緒なのが千聖お嬢様だったら、どんなに・・・


ふと気付いたことがある。
そんな銀座の高級すし店のこの雰囲気に、一番馴染んでいるのが実は梨沙子ちゃんだった、ということに。
最初は緊張していた彼女だけれど、梨沙子ちゃんのなんとなくゴージャスな見た目と雰囲気が、この店にあっても違和感なく馴染んでいるよ。
なんていうか、銀座のマダムみたい・・・いや、銀座のマダムってのがどういうものなのか僕はよく分からないんだけど、雰囲気で・・


そんなことを考えることも出来る程度には、ようやく僕にも余裕が出てきたようだ。
自分の置かれている立場、それが実は相当に幸せを感じて然るべきだということにも思い至ることができるようになった。
だって、僕と一緒にテーブルを囲んでいるのは、こんな美女3人なんだから。

でもそれは、考えれば考えるほど逆に非現実感を感じただけだったけど。
僕は何でこんな美女たちと同席できているんだろう。
うん、これは夢なんだ。そう、夢だったらいいのに。夢であってほしい・・・・

そんな僕の願いを逆撫でするかのように、自称リーダーさんは店員さんを呼んで追加の注文を頼んでいる。
まだ頼むのかよ・・・ お願いだから予算というものを考えて頼んで下さいね、熊井ちゃん。

って、店員さんを呼ぶときのその大きな声と大きなジェスチャー。
やっぱりこの人は、この店の雰囲気とかには全く飲まれたりなんかしていないんだな。

お茶のおかわりも遠慮なんかせず頼んでいる。やはり大きな声で店員さんを呼びつけて。

大きな熊さんの大きな態度。どこにあっても彼女のその存在感は大したものだよ。
なんというか、さすがの貫禄としかいいようがない。
まぁ、それがこういう店での振る舞いとして正解なのかは、僕にはまだ経験値が不足しているのでよく分からないけれど。

でも、彼女のやることはいつだって大体間違ってるから、たぶん今回も間違いなんだろう。


そうかもしれないが、それが間違ってるのかどうかなんて、そんなの彼女にとっては関係ないことなんだ。
いつだって大切なのは、彼女がそれをやりたいのかどうか、ただそれだけなんだから。


熊井ちゃん、さすがだよ。


本当にさすがだ。それを見ていたら、なんか楽しい気分にもなってきたりして。
そんな、僕がようやくこの場を楽しめるようになった時には、もう上がりを飲んでいる時間になっていたのだった。

何とも不思議な時間を過ごしたのち、支払いを終えた僕に熊井ちゃんが言葉をかけてきた。
お、“ありがとう”とか“ごちそうさま”とか言ってくれるのかな。

「ねぇ、おみやは無いの?」
「・・・・・・有るわけないでしょ。もうスッカラカンになっちゃったんだから!」
「「エエエエェェェェエエエエエ!!」」

声を合わせるピーチベアーズ。
この人達のメンタルって一体どうなっているんだろう。
僕が全ての支払いをしたというのに、それを当然のように思っているかのような彼女たちのその態度。
軍団内の立場の違いというのは、ここまで徹底されているものなんだね。



さて、心配したホストクラブのことだが、そんな所には寄らずに帰ることができたのでホッと安心した。
でもそれは、決して彼女たち(というか熊井)が遠慮なんかしてくれたというわけじゃなくて。
ご覧のように、銀座の寿司というものが予想以上にお金がかかるところだったというわけで、予算を使い切ってしまったからだ。


「やっぱりお寿司を4人で食べたから予算を使い切っちゃったんだよ!」

そんなことを言って、不満そうな態度を隠そうともせず僕を睨みつけてくる熊井ちゃん。
だからホストクラブに行けなくなっちゃったじゃない!とかブツブツ言っている。

悪いのは僕だと言うのか。
彼女のその言い方だと明らかにそのように聞こえるんだけど。
追加で注文とかバンバン頼んでたのはいったいどこの誰なんだよ!

「ちょっとッ! 反省しなさいよ!全くもう!!」

そんな、熊井ちゃんが僕を不条理(ですよね!)に責め立てるやりとりをじっと見ていた梨沙子ちゃん。
彼女が小声で桃子さんに何か問いかけているようだったけど、そのヒソヒソ話しは僕の耳までは入ってこなかったんだ。

「あ、あのさー、もも? それでいいのかな」
「ん?いいって、何が?」
「だってこんなにご馳走になっておいてさ、その扱いは、ちょっとさ、かわいそうじゃないかな・・・」

そのヒソヒソ話しに大きな声で割って入ったのは、この人だった。

「いいんだよ、梨沙子。男ってやつはね、こうやってお金を豪快に使うこと自体に快感を覚えるんだから」
「そういうものなの?」
「そうだよ! うちらはこいつにその快感を味わわせてあげたんだから、むしろうちらに感謝してもらいたいぐらいだぜ」
「ウフフフ。くまいちょーが少年のことそう言うんだから、少年もきっと同じ考えだよ。くまいちょーの言うことなんだから。ね、少年?」


なぜ僕がそんな超絶熊井理論に賛同しなければならないんですか、桃子さん。

彼女の言う快感を覚えるってのは、それは自分の為に大金を使ったときであって、決して今日のこの状況はry
・・・・・って、やめよう。そんなことを言っても始まらない。ネガティブに落ち込むだけだ。

僕は今、熊井ちゃんのいつも通りの暴走で結局こうなってしまったか、ともはや諦めの心境だった。


だが、ある別の思いが沸々と湧き上がってきていたんだ。桃子さんの言った言葉、その口調、その笑顔。
熊井ちゃんばかりが当然のように目立っているが、実は黒幕は桃子さんなんじゃないかという疑念が。
今日のこの一連の出来事、実は桃子さんのシナリオ通りじゃないでしょうね。
この自称リーダーのメチャクチャな行動さえも、実は軍団長の想定通りだったのではないだろうか。
今日僕と出会ったとき、その時にここまでのストーリーを瞬時に思い描いたんじゃ・・・そこまで僕は妄想させられるんだ、この桃子さんを見ていると。

僕と目が合った桃子さんが満面の微笑みを僕に向けてくれた。

「ウフッ?」

ダメだ・・・・僕はこの人にはとても敵わない。今日もそれを思い知らされただけだった。
そんな僕の横では、熊井ちゃんがこれまた爽やかな笑顔で高らかに宣言していた。

「もぉ軍団、いいことしたね!! 一日一膳、今日も達成だ!!」


僕はもう、笑うしかなかった。

今日、この3人組に出会ってしまったのが運の尽きか。
不用意に大金を持って出歩いたりしたから、偶然出会った3人組にカツアゲなんか食らうんだ・・・



というわけで熊井ちゃんへの誕生日プレゼントを買うそのお金は何故か本来の目的に使われることなく消えてしまった。
しかも、カツアゲをしてきたのが、当のその本人という。なんだこれ。

どうしよう、誕生日はもう明日なのに。
プレゼントも買えなかったし、これからそれを買おうにも僕はもうスッカラカンになってしまったのだ。
もう泣きそう。

そんな僕の気持ちを表しているかのように、夕方から雨が降ってきた。
いま僕の頬を濡らしているのは、その雨の雫だったのだろうか、それとも・・・


だが、神様ってのは本当に居たんだ。
そして、神様はいつだって善人の味方なのだった。
神様はそんな僕の事をちゃんと見ていて下さっていたのだから!



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