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「からかう・・・?」

愛理ちゃんたら、一体何を言ってるんだろうか。
このあたしが、愛しきお嬢様をからかうなど、そんなことがあるわけないじゃないか。

「全く心当たりがないんだけど」
「ケッケッケ、胸に手を当てて考えてごらん、有原殿」

愛理は飄々とした態度で、再び動き出した列に合わせて歩き出す。

「待ってよぅ、絶対ありえないって」
「うーん、本当にそうですかな?栞菜にとってはそうでも、お嬢様にとってはどうですかな?」
「なんだよー」


慌てて横に並びなおすと、愛理はずいっと顔を近づけてきた。
おお、美少女の℃アップ・・・。じゃっかん、笑いを含んだその小悪魔っぽい顔はやたらと魅力的に感じる。
愛理はお嬢様を心配しつつも、やっぱり楽しんでいるから、こうやって情報を小出し小出しにして私を試しているんだろう。

「・・・そりゃ、セクハラがすぎるところはありますよ?ありますけどぉ」
「ほうほう。じゃあ栞菜は、その時お嬢様にどういうことを言っているのかな?」
「まあそりゃ、たゆんたゆん最高とかぷにぷにの・・・あっ!」

ピコーン!と電球が頭上で点灯する。なるほど・・・、あたしとしたことが、お嬢様に誤解を与えてしまっていたなんて!

「お嬢様ハァーン!」
「あー、栞菜だめだよぅ」


ケッケッケさんの半笑いの制止をよそに、とぼとぼと歩くお嬢様の前にデーンと立ちはだかる私、宇宙の有原皇帝。


「な、なあに、栞菜。千聖は今は一人で・・・きゃああ!?」

わかってるさ、心配ないさ、小さなLADY。
いつものようにガバッと抱きしめたお体は、ぷにぷにのふわふわで最上級のENJOYガール。
バニラのコロンの香りも相俟って、まるでミルクプリンちゃんだかんな。

「離しなさい、命令よ!」
「ハァーンぷにぷにお嬢様食べてしまいたいかん・・・いでででで」

せっかくにぷにすべタイムも、後ろからの回し蹴りによって中断させられてしまう。

「・・・おい、オメー最近暴力的すぎだかんな。それでも女子かよ」
「有原にだけはそんなこと言われたくないでしゅね。強制わいせつは刑事事件として・・・」

――ったく、口は減らないわお嬢様への監視は厳しいわ、顔と頭脳以外とんでもない野郎だな、我が相棒は!

「お嬢様はぁーん、栞菜はわかってるんですよ、お嬢様。水着、お召しになりたくない理由」
「まあ・・・」

お嬢様の茶色い瞳が、不安げに揺れる。


「でも、あたしは今のお嬢様が最高に可愛いと思うかんな!ホヨホヨした二の腕ちゃんも、顔を乗せるとプニュッと沈むおなかちゃんも!」
「顔を・・・?記憶にないのだけれど」
「よく熟睡なさってたかんな!ガハハハ!」

みるみるうちに、お嬢様のかわゆいお顔が真っ赤になっていく。

「・・・そうよ、ええ、そうよ。千聖は今、体に贅肉がたくさんついているの。だから、露出の多い格好をしたくないの。何か問題でもあるかしら?」

「大有りだかんな!!いいですかお嬢様、そもそも世の中の女子は勘違いしてるかんな。男ってぇのは(以下略 とにかく、お嬢様が水着をお召しになったなら、そこはもう楽園だかんな!今年のマーメイドはお嬢様にきまりだかんな!」
「何を言っているの、栞菜ったら。お屋敷のプールに、男性が来ることはないでしょう?ああ、執事がプールの管理や点検をしているかもしれないけれど・・・」
「なんだと、あの(自主規制)執カス野郎!とんだ℃変態だかんな!」

あいつめ、この前の愛理への接触はイエローカードで済ませてやったが、あたしのエンジェルにまで毒牙を?
ったく、萩原に恋してるとかいうあいつもだけど、何だってこう、多情な奴ばっかりなんだかんな。そう、愛っていうのは、一途な思いを貫き通すことであって


「もう、栞菜ったら千聖の話を聞きなさい、命令よ!」

妄想に耽っていると、鞄をクイクイと引かれた。上目づかいのお嬢様が、小さな唇を尖らせて私を睨んでいた。・・・あっひゃーきゃわたんだかんな!

「とにかく、今年は嫌。
皆さんがプールをお楽しみになるのは結構だけれど、千聖は木陰で休むから。
そうだわ、野外スクリーンを設置して、時代劇のDVDでも観ましょうかしら。みおんも帰ってくることだから、一緒に・・・」

ふと、口を挟んでこない萩原の方をチラッと見ると、珍しく困ったような顔をしていた。
それで、私は気がついた。さっきの愛理の・・・“からかうからだよぅ”は、何も私一人に向けられた言葉じゃないってことに。
即座に萩原のほうへ飛んでいき、軽く肩を組んでやる。


「なんだよ、暑苦しいんだけど!」
「おい、オメーもなんか言ったんだろ」
「は?」

振りほどこうとした手が、私の一言で一瞬止まる。

「お嬢様のことからかったんだろ。だからあんなにかたくなになってるかんな」

私の指摘に、さも面白くなさそうにため息をついて睨みつけてくる萩原。

「別に、舞のせいじゃないし」
「オメーのせいだとは言ってないかんな。・・・ただ、舞ちゅわんの言動は、お嬢様を一喜一憂させるからねぇ」
「・・・」

まだ警戒しているな、こいつ。これだからネコ科動物は。
気に食わないけれど、もう少しだけ喜ばせてやるか。

「お嬢様の気持ちを完全に掌握しているのは、マイマイちゃんだと言っても過言ではないかんな。あたしなんか全然っすよ、うらやましいなあ」
「・・・そうかな」
「そうですとも!だから早く何があったか言うがいい!」
「ふん、別に、大した事じゃないんだけど」

そういいつつも、萩原はやっとこ口を開いた。

「ちょっと前にさ、みんな出かけてて、おやつの時間ちしゃとと舞だけだったことあったんだけど」
「あー、部活とか生徒会の用事で遅くなった日ね」
「その日、カフェオレ大福が出たの。そんで、似てるなって思って・・・」

(o・ⅴ・)<これ、ちしゃとそっくりでしゅね。ふふん
リ#・一・*リ<キーッ!!!

「・・・オメー、すごいこと言うかんな」
「だって、あんなに怒るなんて思わなかったんだもん」

あとで聞いたところによると、そのやりとりの前、お嬢様はツバサのアホ野郎と喧嘩になり、相当色々言われていたらしい。

「水風船、肉まん、ブタネコ、鏡餅・・・。あのクソガキの暴言と、舞のカフェオレ大福ちゃんは全然意味が違うのに、ちしゃとはわかってないんだから」

お嬢様は、殊更兄弟から馬鹿にされるのを嫌う。
加えて、萩原からの追い討ちをかけるような一言・・・。

「ま、すぐに仲直りしたんだけど、こんなにぷんぷんし続けてるとは思わなかったよ。
ちしゃとの奴、結構根に持つからなぁ」
「なるほどなるほど、話は聞かせてもらったぞよ」
「うおお!」

いつの間にか、背後から舞美ちゃんが私たちの顔を覗き込んでいた。


「でももったいないよね!似た体型のものとして、お嬢様には暑中お見舞い申し上げますって感じ!とかいってw」
「・・・おねーちゃん、頼むから余計なことしなi」
「お嬢様ー!!!」

今日の舞美ちゃんは、やたらとご機嫌だかんな。
私と萩原の顔面に汗スプラッシュを御見舞いしながら、お嬢様の方へ走っていく。

「まあ、舞美さん」
「お嬢様、一緒に水着選びましょう!巨乳のことは巨乳同士にしかわからないものですし!」
「え・・・」

あまりにもさわやかすぎる舞美ちゃんの笑顔と、話してる内容の支離滅裂さに、皮肉とも思えなかったのか、お嬢様は目を丸くして、マジマジと舞美ちゃんの顔を見つめていた。



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