※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



あ、これはダメだ・・・

ひっくり返りながら思った。
これはやってしまっただろう、たぶん。
というか、間違いなくやってしまった。感覚で、それが分かった。


熊井ちゃんが真っ先に僕に駆け寄ってきてくれた。

「だ、大丈夫だった!!?」
「いや熊井ちゃん、心配しないで。でも、やっちゃったみたい。・・・たぶんダメだと思う」

起き上がれない僕の前で、立ち尽くしている熊井ちゃん。

「ごめんなさい!!」

彼女が引きつった顔で謝ってくる。
熊井ちゃんが僕に頭を下げるなんて、実にこれが初めてのことじゃないだろうか。
新鮮な驚きを感じつつ、僕は彼女に言葉を返す。

「えっ? なんで熊井ちゃんが謝るの?」
「だって、うちが驚かせたから・・」
「違うでしょ。それ、熊井ちゃんは僕を庇おうとしてくれたんだから」
「でも、でも。結果的にそれで・・・
「いやいや。そんなの全然熊井ちゃんのせいじゃないよ。僕が勝手によけるのに失敗して転んだだけだから。自爆ってやつ。まいっちゃうよね全く」

うん。本当に熊井ちゃんのせいなんかじゃないと思う。
だから、そんな表情しないで下さい、本当に。
そんな熊井ちゃんに、明るく振舞ってみせたんだけど、わざとらしい明るさに思われたのか、熊井ちゃんの固い表情は変わらなかった。

そんな顔されると、申し訳なくて。
本当に誰のせいでもなく、自分のせいに過ぎないんだから。


そのとき、お姉ちゃんが僕の言うことに加勢してくれた。

「そうだよ、熊井ちゃんのせいじゃないよ!!」


今になって気付いたんだが、お姉ちゃんは、その、なんていうか、びっくりするぐらい汗でびっしょりだった。

汗が滝のように流れ落ちている。
その汗の量の凄いこと。リアルに滝だ。
いつも熊井ちゃんを見て、こんな汗っかきさん他にいないだろ!なんて思ってたんだけど、いました、ここに。
あの汗っかきの熊井ちゃん並みか、いや、ひょっとしたらそれ以上かも。

すごい・・・・

なんという汗っかきさん。
しかも、その汗だくの姿がまた何ともですね、色っぽくて・・・
僕は思わず、その汗で光る首筋や胸元に見とれてしまいそうになったが、どこかから殺気を感じるので慌てて視線をずらした。

熊井ちゃんに向き合ったお姉ちゃん。
美人さんが真剣な表情をしていると怖いぐらいだな。
でも、なんて美しいお顔なんだろう・・・ なんて、この状況で僕はそんな事を思っていた。


いま僕の目の前では、とてつもない美人同士が向き合っているよ。
すごい光景だなー。これはいいものが見れた。


この状況でもそんなことを思えるぐらい、僕の心には余裕があった。
遂にこれはやっちゃった、と思ったら逆に開き直ったような心境になっていたから。
自分でも驚くぐらい、いま僕の心は明るく高ぶっていた。ちょっと変な風にハイになっているぐらい。


でも、まわりの人達の方が、この事態をそれほど軽くは捉えていなかったようで。


「私がいたずらしようとしちゃったから。本当にごめんなさい!!」
「いや、お姉ちゃんのせいでもないですから。これは僕が勝手に転んでry
「本当に・・・ごめんなさい・・・」
「だから、そんな・・・違いますから・・・」


僕がどんなに言っても、みなさんの表情が和らぐことは無かった。
しかも、お嬢様まで同じような固い表情で僕のことを見ているじゃないか。


お嬢様が口を開いた。

「あぁ、どうしましょう。こんな・・・」

お嬢様はお屋敷の前で起きた出来事にショックを受けてしまっているようだ。


「お嬢様、私がいけないんです。今のは私のせいで・・・」

そんなお嬢様にお姉ちゃんが表情も固く声を掛ける。
その言葉を聞いて、僕は思わず話しに割り込んでしまった。

「皆さん、責任なんか感じないで。お願いだから・・・」


僕がそう言えば言うほど、みなさんの表情が固くなってしまう。
熊井ちゃんにお姉ちゃんやお嬢様までがそんな責任を感じられている。
それに対して僕は本当に申し訳なかった。



「とにかく、この屋敷に医務室がありますから、そこに行きましょう」

オロオロするお嬢様。

お屋敷の中には医務室まであるんだ、すごいな。
しかも、なんとこれはお屋敷の中に入れるチャンスじゃないか。

一度見てみたかったのだ。こんなすごいお屋敷の中がいったいどうなっているのか。
あわよくば、敷地内にある学園の寮にまでお邪魔しちゃったりして。そこにある舞ちゃんのお部屋にry

でも、今はちょっとそれを楽しめる状態では無さそうだ。
気持ちの上ではこのように十分余裕があるんだけど、さすがに体の方がそういう状態では無いみたい。
恐らくたぶん、病院に行ったら早急にこのあとの具体的な日程を先生と話し合わなきゃいけなくなるだろうから。

「ありがとうございます。でもたぶん間違いなく膝の古傷をやってしまった感じがするので、病院へ向かいます」
「それなら、お父様にすぐ連絡して大学病院の偉い先生を紹介してもらいますわ!」

さすがお嬢様。
素晴らしいコネクションをお持ちのようで。

でも、大学病院なんて入れられたら大変だ。
しかも偉い先生とか・・・
そんなの、実際の治療に入るまでどれくらい時間がかかるか分かったもんじゃない。
待ち時間が3時間で診察は5分なんてことになるんだ。
しかも患者の考えなんかまるで聞いてくれないんだろう、きっと・・・(偏見)


「いえ・・お嬢様、僕にはかかりつけの先生がいますので、そこへ行くつもりです」
「じ、じゃあ、今クルマでそちらの病院までお送りしますわ! それで急いで向かって」

慌てたようなお嬢様の口の回りきらない口調がとてもかわいい。フガフガw
この状況でも僕はそんなことを考えているぐらいなんだ。
でも、だって本当にかわいかったんですよ。



TOP