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千聖ちゃんの横顔は、すごく綺麗。
身長なんか私より小さいぐらいなのに、キリッと整っていて、まるで女の子の神様のようだ。

「遥、キャンディはいかが?舞におすすめのものを教えてもらって、昨日コンビニエンスストアで買ったのよ。
梅干のお味が濃くて、とても美味しいの」
「うん、ちょうだい!」

このとおり、中身は子供みたいに無邪気で、そのギャップが可愛すぎるんだけど。
手のひらに乗せてもらった飴玉を口に入れようとしたら、いきなり後ろからニュッと手が伸びてきた。


「飴玉もらってなぜイケナイ~♪」
「あっお前ふざけんなよ!」

せっかく千聖ちゃんからもらったのを、強奪しやがったのは、コイツ、まさき。

「返せよ、マジで!はるのだよ、それは」
「もう口にいれちゃいましたー」

このっ・・・なんなんだよ、いっつもこのパターン!

「もう、喧嘩をしないの、二人とも。遥にはもう1つ差し上げるわ。ウフフ、そんなに怒っては、可愛らしいお顔が台無しになってしまうでしょう?」

千聖ちゃんがそう言うからギリ許してやるけど・・・てか、そもそもこいつなんで・・・

今、私とマサキ、それから千聖ちゃんは、千聖ちゃんちの超デッカイ車に乗っている。助手席には、千聖ちゃん担当(なにそれすごい)のメイドさん。
なぜそんなことになっているのかというと・・・話は数日前に遡る。


*****

「あっついなー、海行きたいなー」

夏休み直前のある日、登校中の千聖ちゃんを捕まえて、そんな話をしていたところ、その日の放課後、千聖ちゃんが初等部の校門に現れた。

人気者の千聖ちゃんの登場に、周りの初等部の子達がざわついてる。
今までだったら、うっせーな大げさなんだよと素通りしてるとこだけど、千聖ちゃんなら話は別。心が躍る。

あのスゲー目つきのハギなんとかが一緒だったらどうしようかと思ったけど、一人でいるみたい。あいつ・・・いや、あの人、睨んで来るんだもんな。みずきちゃんが、年上は敬えって言うから我慢してやってるけど・・・ま、今はいないんだしいいか。

「千聖ちゃん」
「まあ、遥、よかったわ。お会いできて」

にっこり笑ってくれるだけで、すっごい幸せな気持ちになる。
年上の人に言うのはなんだけど、めちゃくちゃ可愛い。ほんと、この人天使なんじゃないだろうか。

「いや、友達と取っ組み合いしてた!・・・え、って、はるのこと待っててくれたの?なんで?」

声が裏返る。人気者の千聖ちゃんだから、私なんてそうそう相手にしてくれないと思ってたのに。
過剰な期待は禁物。そうわかっていても、茶色い澄んだ目に見つめられると、頭が真っ白になってしまう。
好きな人に見てもらえるって、こんなに動揺しちゃうもんなんだ。千聖ちゃんに出会ってから、私はいろいろな感情を次々に覚えている。

「遥をね、お誘いしたくて」

千聖ちゃんは、猫のように目を細めて、私を手招きした。

「さそっ・・な、なに?」
「今朝、言っていたでしょう?遥、海に行きたいって。
先ほど執事長に確認したら、今は家族も違うところに滞在しているようだし」

話の飲み込めない私がぼんやりと顔を見つめていると、千聖ちゃんがウフフと笑ってこう続けた。

「週末、私の海辺の別荘へいらっしゃい、遥」


*****

そんなわけで、私は今、別荘へ連れて行ってもらっている最中というわけ。
お母さん、気絶しそうになってたな。千聖ちゃんちにお世話になるって言ったら。
電話越しなのに、土下座しそうな勢いでお父さんと一緒にペコペコしながら、千聖ちゃんのお母さんと話してた。
学校でしか会ったことないからわからなかったけど、私が考えている以上に、千聖ちゃんはすごい人んちの子だったみたい。
昨日も夜遅くまで、お母さんに監視されながら、マナーの本をギッチギチに読まされた。それで、さすがの私もそれなりの緊張感を持って、車に乗せてもらったんだけど・・・そのドキドキは、コイツによって砕かれてしまったのだ。


「つーか、なんでマサキがいるんだよっ」
「えっへん。ちさとーとまーちゃんは一心同体です。自己責任です」
「ウフフ、まーちゃん、今朝遊びに来てくれたのよね」
「5時起きでーす」
「はぁ?非常識すぎだろ、そんな時間に!千聖ちゃんに迷惑かけんなよっ」
「いいのよ、遥。せっかくの休日ですもの、お誘いしたら、まーちゃんも別荘へ行けることになったのよ。
遥ともお友達だというし、親睦の機会になったら嬉しいわ」

――くっそー、こいつ、また邪魔してきやがったな。
前だって、千聖ちゃんの写真くれるって言ったのに、なぜか自分の写真送りつけてくるし。
こいつも千聖ちゃんのこと好きなのかな。こんなポクポクしてるくせに、実はすっげえ計算高くて、千聖ちゃんに近づく奴に妨害行動してるのかも。

「いえーい、まーちゃんが目立ってなぜイケナイ!」
「きゃんっ」
「あっテメー千聖ちゃんの頭ドラムにすんなよ!マジふざけんな」

「・・・みなさん!車内では!お静かに!!!」

メイドさんの雷が落ちて、マサキが子犬みたいにさーっと体を丸めて隠れやがった。
くっそー、せっかくの1泊旅行・・・本当に楽しい思い出になるんだろうか。

お年玉とおこづかいを崩して買ったばっかりのデジカメをいじくりながら、私は小さくため息をついた。



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