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高速道路をぐんぐん進んで、一般道をしばらく進んだところで、ふと景色が変わった。

「千聖ちゃん、海!」

私の呼びかけに、マサキとババ抜きをしていた手が止まる。

「ウフフ、もうすぐ別荘に着くわ。きれいな海でしょう?後で千聖のお気に入りの場所を案内するわね。ほとんど人の出入りがないから、リラックスして過ごせると思うわ」
「すっげー、プライベートビーチってやつ?」
「いいえ、工藤さん。日本では海の私有が認められておりませんので、法的な側面から言えばプライベートビーチというのは(ry」

なんだかよくわからんメイドさんの解説はおいといて、誰も来ない海で、千聖ちゃんと過ごせるのか・・・。
なにして遊ぼうかな。水鉄砲で戦争ごっこなんて、上品な千聖ちゃんは絶対やらないだろうし、綺麗な貝殻でも拾ってプレゼントしようかな。

「うみうみうみー!!きゃほー!」
「・・・おい、空気よめよお前!」

――だが、こいつがいるんだ。マサキのやろうが。
千聖ちゃんに迷惑なんてかけさせないからな(キリッ)あたしがバッチリ監視してやる。ついでに教育もしてやる!

「まーちゃん泳ぎます!ここで降りていいですか」
「は?いくら海見えてるからって、歩いたら結構距離あるんだからな。だいたい、水着どうすんだよ。裸で海入るのかよ」
「あるもん」
「は?」

マサキは座席を乗り越えると、おもむろに私と千聖ちゃんの間に割り込んできた。
そのまま、グッフッフとしたり顔で笑うと、なぜかスカートの裾に手をかける。

「なにやってんだよ」
私の咎める声にも構わず、マサキはいきなりガバッとワンピースを捲り上げて、「じゃーん!」と元気よく体を見せ付けてきた。

「バッカお前・・・!」
「まあ、まーちゃんたら!」

なにが悲しくて、マサキのヌードなんか見せられなきゃならんのだ・・・と目を反らす。
だけど、同時にあげた千聖ちゃんの声からは、不思議と嫌悪感というものを感じなかった。

「んん?」

私にケツを向けて、千聖ちゃんに服の内部を見せているマサキ。
だがしかし、奴は裸んぼではなかった。下着ッ子でもなかった。

「ウフフ、水着を着ていらしたのね、まーちゃん」

千聖ちゃんの言うとおり、マサキは紺色のスクール水着を着ていた。

「びっくりさせんなよな!」
「うへへへ」

マサキは振り向くと、“さとうまさき”とデカデカ書かれたゼッケンを見せ付けてきた。

「つか乳近づけんなよ!」
「どぅーは怒ってばっかりですね。でも怖くないです。真の恐怖は業平さんにこそあります」
「ったくまたわけわかんねーこと言って」

マサキにまともに話を振ったって仕方がない。
それはわかってるんだけど、千聖ちゃんが絡んでいると言うのに、暴挙を見過ごすわけにはいかないのだ。


「きゃーまーちゃん浮き輪も持ってきました!」
「はいはい、まーちゃんたら、ワンピースをお下げなさい。風邪を引いてしまうわ」

――でもでも、千聖ちゃんてば、こんなメチャクチャなマサキに優しくして・・・もしかして、私、空回ってる?
そう思うと悔しくて切なくなって、私は2人に背を向けると、タヌキ寝入りを始めた。

「遥?まあ、疲れてしまったのかしら」

ごめんよ、千聖ちゃん。ちゃんと着く頃には、機嫌を直しているから。
爆発しなかっただけ、大人になったわね。と脳内でみずきちゃんも褒めてくれているし、許しておくれ。


そのうちに、マサキも遊びつかれたのか、私の背中に思いっきり頭突きをくらわせてきたまま寝息を立て始めた。

「ウフフ、妹が増えたみたいね」
「あら、嬉しそうですこと。本当に、何方かの御面倒を見られているときは、お嬢様もしっかりなさるんですねぇ。とかいってw」

――違う、違うんだよ千聖ちゃん。私がなりたいのは妹じゃなくって・・・

思考がまとまってくれない。運転手さんの運転が上手すぎて、その心地よい車の振動と、子守唄みたいにふわふわ響く千聖ちゃんの声の効果で、私はいつしか本当に深い眠りに落ちていってしまっていた。



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