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「おいお前、ふざっけんなよ!!!11 話しが違うじゃんか!! お前の写真なんか送ってきやがって、これをどうしろって言うんだよ!!!」
「キャー!そんなに喜んでもらえましたかー。まーちゃん、なんか照れちゃいますねぇ」
「マジふざけんな、お前!!」


どこからともなく騒がしい声が聞こえてくる。
階下の小学生の部門の教室からだろう。無邪気な小学生の子たち、賑やかなことだ。

だが、それとは対照的に、ここ高校生の教室にはそれなりに緊張感が漂っている。
静かな教室中、ピリピリとした空気が張り詰めているのが目に見えるようだ。

いま僕はある学習塾に来ていた。



夏休み前の進路指導以来、進路のことを具体的に考え始めた僕だったが、今の学力ではやはり問題があると言わざるを得ない。
そろそろ僕も勉強に対して本気を出す時期が来たようだ。いざ見せん僕の真の実力を。

そのためこの夏休みに学力の向上をはかるべく、学習塾の夏期講習を受けることにしたのだ。


教室に一歩足を踏み入れたときから、そこは空気が違っていた。
うわー、なんか教室中から緊迫感を感じるよ。みんな受験生の自覚を持って真剣に取り組んでいるんだな。
それを見るだけで、僕は自分がのんびりしすぎていることを自覚させられてしまう。

教室に入って席を確保する。今日は窓際の席。
授業の用意をしていると、程なくして前の席も埋まった。

僕の前に座ったのは女の子だった。そのかわいらしい後ろ姿。
夏らしい薄着の女の子の後ろ姿を眺めながら過ごせるとは、これは今日はラッキーだな♪

なんて浮かれていたのだが、その幸福感を感じていられる時間は思いのほか短かった。
僕の前に座ったその子が、イスをずらしていきなり僕の方に振り向いてきた。

その子の顔を見て、僕は心臓が止まるほどビックリしたのだ。


か、栞菜ちゃん!!


な、な、なんでここに!?


「なんでって、講習を受けに来たに決まってるかんな」

だから、聞く前に答えるのはやめろ。人の心を読むな。
そうじゃなくって、わざわざ講習に参加して勉強なんかするんだ彼女、って思ったんだよ。
そういうイメージのある子じゃなかったから、ちょっと驚いた。

彼女が講習を受けようとどうでもいいけど、よりによって何で僕の前の席に来るんだよ・・・

教室の中には他にも空いている席はあるのに、わざわざ僕の目の前の席に座るなんて。
勘弁して欲しいよ。せっかく勉強のやる気を出してこの講義に出てるのに。
そんな僕の授業に対する集中の邪魔になるしかないでしょ、この人がいたら。

ひょっとして・・・・

まさか、有原のやつ僕に気があるんじゃないだろうな。
そのために僕に接近してきてるっていうのか。そうか、この講習に参加したのもそういうことか
偶然を装って、ここにいる僕のそばに近づいてきて・・・。

そ、そ、そんな、、こ、困るよ。
よりによって舞ちゃんの友達となんて。
第一、僕は至ってノーマルな人間だし、お互い趣味が合わないんじゃ。
でも、案外そういう方が意外と気が合ったりもするのかな、磁石のNとSのように・・・


・・・って、こんなこと考えてたら、どんな報復をされるか分かったものじゃない。
余計なことは一切考えないようにしないと。


黙って栞菜ちゃんを見つめた僕に、彼女はいつもの僕に対する態度でもって言葉をかけてきた。

「あのさぁ、こんなところに座れるほど余裕ある立場なわけ?」
「えっ?」
「もっと前の方の席で真剣に授業受けないとダメだろ、オメーは。ただでさえ出来が悪いんだから」

すげー上から目線。

前から思ってたんだけど、僕に対するその態度、いいかげんにしろ。
そこのところ、一度はっきりさせておいた方がいいのかな。
女の子が相手だと思って今までずっと下手に出てたけど、この相手にそんな遠慮は不要なんじゃないだろうか。

そうだよ、この人は学園の他の生徒さん達とは本質が異なるんだ。
お嬢様はじめ上品な学園生たちに対するのと同じ対応を、僕がこの人に取る必要もないだろう。

うん、そうだ。
これからはもっとはっきりとした態度を取るようにしよう。

僕がそう思ってるそばから、栞菜ちゃんのいつもの声が耳に入ってくる。

「おい、聞いてんのかよ、私の有難い意見を」

さあ言ってやる。
男の威厳というものをこの人に分からせてやろう、硬派なこの僕が。

(お前うるせーよ。そんなこと言われる筋合いは無いっつーの!)



・・・い、言えない。
やっぱり、怖くてとてもじゃないがこんなこと言えない。


「も、もちろん聞いてますよ」
「だったら、ちゃんと声に出して返答しろよ。全く、この(放送禁止)野郎が」

信じられない言葉で僕を貶めてくる有原。耳を疑った。
そんな下品極まりない言葉を言ってくるなんて、この人は本当に女の子なんだろうか。
いや、ちょっと待て!だいたい(放送禁止)とは何だ、失礼な!僕はちゃんと立・・・・って、そんなことはどうでもいい。

僕は信じられない気持ちで一杯だった。よくそんな言葉を口に出来るな・・・
ましてや、ここは教室なんだぞ。そこんとこも分かってるのだろうか、この人は。
僕のような常識人には全く理解の及ばない人、僕の周りには何でそういう人が多いんだろう・・・

今日は講習に先立ち、先日の全国模試の結果が帰ってきた。

「どうっだった? 結果を教えるかんな」
「いいけど、そっちもちゃんと見せてくれるんだろうね」


お互いの成績を見せ合いっこする。
どれどれ。さっきから僕に対して偉そうにしているこの人の成績って、いったいどんなものなのかしっかりと見てやろうじゃないか。


見せてもらった成績。
それは信じられないものだった。
思わず固まってしまったのを自覚する。


なに、この素晴らしい成績・・・


全ての科目で高得点であることが、その成績表には記録されていた。
この異様に高い得点は何なんだ!

目の前のこの人がこの素晴らしい成績を取ったというのか!
この人が!? ウソだろ?? ウソであってほしい。
世の中の不条理とういうものを実感する。

一方、僕の成績表を見た栞菜ちゃんが絶句している。
僕のその成績表。
それは全科目において栞菜ちゃんよりはるかに劣る低い点数だったわけで・・・


「・・・・オメー、本当にあの○高の生徒なのか?」


そんな真顔で聞くな!
あきれたように聞いてくるその顔が、また大した美人顔なのが余計に腹立たしい。

「出来が悪いとは思っていたけど、ここまでとはね・・・」


もう一度成績表をまじまじと見た後、その無駄にかわいい顔を僕に向けてくる。
それはもう、憎たらしいほどに勝ち誇った顔だった。


「ふーん、公立高地域トップの○高って言っても、大したことないんだね。まぁ、しょせん天才の私の相手じゃないかんな」


こんなこと言われた。悔しい。

しかも、そのせいで言われているのは我が校の名誉に関わることじゃないか。
他の学校の生徒にこんな侮辱されるようなセリフを吐かれたとあっては、これがもし当校応援団の人に知られたら僕の危険が危ない。

確かに僕の通っている高校は、この学区の公立校では一番の進学校なのだ。
世間一般では頭のいい学校と認識されているのかもしれない。
でも僕の成績は、学年全体の下の中ぐらいなわけで。
さすがにこのままではまずいと思って、こうして夏期講習とか受けているわけで。



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