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そんなわけで私は今、ちっさーが家に来るのを待ち構えている。

ついに念願のメイド・・・と思ったのだけれど、あの時「連れてってください」と言ったちっさーの顔がやけに畏まっていたのが気になる。
ちっさーは、妙に気を使うところがあるからな。本当は行きたくないなら、うちで楽しく遊んで帰るんでもいいと思う。
もっと腹を割って話そうじゃないか、ちっさー!


「舞美~、千聖ちゃんが来た。なんか雰囲気変わった?日傘差してたけど。」
「えっ!いやいや、そんなことないよいつもの元気なちっさーだよ!ししゅ、しすゅん期は気持ちが変わりやすいからそのせいじゃない?」
あっ今のはわざとらしい。どうも私は嘘がつけない。

「?そう・・・下でお待たせしてるから、早く行きなさい。」

呼びに来てくれたお母さんの横を通り抜けて、階段を駆け下りていく。
「舞美さ・・・舞美ちゃん!遅くなってごめんねぇ!これお土産!」
「おーちっさー!」

何となく察してくれたのか、元気なちっさーを装って、ぶんぶん手を振ってきた。
私の家は駅からちょっと歩くから、ちょっとバテた顔をしている。おでこに浮かんだ汗の粒を手で払ってあげると、ちっさーはでへへと恥ずかしそうに笑った。

「暑いねぇ。お母さん、冷たいお茶入れてー!」

ちっさーお気に入りの水色の日傘(フリフリがかわいいから私もひそかに真似してピンクを買った。でもいつも差し忘れる)を玄関の隅に置かせて、2人で私の部屋に直行する。

「どうぞ、千聖ちゃんのおもたせでもうしわけないけど。ゆっくりしていってね。」
「はーい!ありがとうございます!・・・・舞美さん、今日はお招きありがとうございます。」
お母さんの姿が見えなくなると、すぐにちっさーはお嬢様の顔に戻って、ゆっくり頭を下げてきた。
「あーいいよそんなぁ。私とちっさーの仲じゃないか。・・・それより、大丈夫?本当に今日行きたい?」
ちっさーが持って来てくれたクレープを突っつきながら、私はちっさーの目を覗き込んだ。

「ええ、もちろん。楽しみにしてました。」
ふわふわ笑う顔には嘘は見当たらない。
「でも何か、緊張してるじゃないか。無理しなくたって別にいいんだよ。」
「・・・舞美さん、私。」
ふいにちっさーは笑顔を封じ込めて、潤んだ上目づかいに変えた。
「私、ケガをしてから、何だかいろいろなものを失くしてしまった気がして。」
「うん。」
「それを少しずつ補っていきたいので、なるべく新鮮な体験をたくさんしたいと思っているのです。
直接的な効果がなくても、私がその体験から何か得ることができれば、今後の私を構築していくための云々」
・・・うわー漢字がいっぱいだ。私のボキャブラリーではとてもついていけない。
後半はもはや右耳から左耳にトンネルしてしまったけれど、ようするに

「ちっさーはいろいろ体験することで、もっと人間として深くなっていきたいということだね!」
「は、え、えと、そうです。」
いいことじゃないか!舞ちゃんとの逃避行も、愛理とのデート(まあこれは普通の買い物か)も、自分を豊かにするために、ちっさーが自らに与えた試練なのか。

「何かかっこいいね、ちっさー。私もできる限りなんでも協力するよ!・・・で、まずは、服装なんだけどね。」
今日のちっさーは薄いピンク×黄緑色のツートーンカラーのワンピースに、愛理とおそろいの赤いネックレス。避暑地のお嬢様って感じだ。
「可愛いんだけど、その格好はメイド喫茶のお客様っぽくないなあ。」
「そうですか・・・私、以前の洋服があまり好きではなくて。新しい服を買い揃えたいのですが、いろんなバリエーションの服を買うには少しお金が。」
「ふっふっふ。ちっさー。これを見るがいい!!」

私はベッドの正面にある大きなクローゼットをガーッとスライドさせた。
「まあ・・・・!」
千聖が両手で口を押さえて、目を丸くしている。

「最近こっち系にもハマっててさあ。」

メイドカフェの一件から、私はゴスや甘ロリに少しずつ手を伸ばしていた。
例によって私に甘いお兄ちゃんたちがホイホイと買い与えてくれて、私のクローゼットはフリフリモサモサゴスゴス混沌としていた。
外に着ていくほどの勇気はないから家族相手のファッションショーでしか着る機会がなかったけれど、ついにデビューの時がきたのかもしれない。

「やっぱり、こういう格好がふさわしいと思うんだよね。あの空間には。」
「え、あ、え、でも、私、きっと似合わな」
あは、うろたえてる。
「ちっさー!バンザイ!」
「は、はい!きゃあああ!?」

とっさに両手を上げたすきに、ワンピースのすそを持ち上げて一気に脱がしにかかる。
「あの、大丈夫ですから!自分で脱ぎます!舞美さぁ~ん・・・」
む、胸のとこでつっかえてる。生意気な!



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