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今日の講習が終わった。
なんか、初日からぐったりと疲れたよ。色々な面で。

「じゃあ、また明日な。しっかり復習しておけよ」

お嬢様と夜の復習楽しみだかんな♪などと意味不明のことを言いつつ楽しげに帰っていった栞菜ちゃんを見送り、僕も教室を後にする。
僕はもっと勉強をしなければダメなんだな、今日それがよく分かった。

栞菜ちゃんを見習って、僕も夜はしっかり勉強をするとするか。
そうだな、今夜の勉強のために何か問題集でも買って帰ろう。
そう思った僕は、帰り道ちょっと大きめの本屋さんに寄ってみるのだった。



本屋さんの参考書のコーナーにやってきた。
いま目の前の書棚には、いろいろな大学の赤本が並んでいる。
見るだけなら自由なんだから、ちょっと見栄を張って有名大学の本を取ってみる。どれどれ。

・・・・全然わからない、こりゃダメだorz

そんな感じでテンション↓↓になっていたら、となりに女子生徒がやってきて棚から同じく赤本を取り出したんだ。
その子のきれいな手が躊躇なく棚から取り出したのは、日本で一番の難関と言われている大学。

すげえな・・・

そんな大学の入試問題なんて、僕は例え冗談でも手にとって見ようとは思わないだろう。
僕が更にびっくりしたのは、その本を手にとって熱心に見入っている彼女自身にだった。


な、なかさきちゃんではないですか!


驚きのあまり固まった僕。
いっぽう、彼女はそのときになって初めて、そこにいる人間(僕)を認識したようだ。

いま目が合うまで素で気付いていなかったんだな、ここにいるのが僕だということに。
彼女にとっては全く予期すらしていない出来事だったのだろう。
突然のことに僕もびっくりしたが、それ以上に僕と目が合ったときの彼女の驚愕といったら。

僕に気付いたその瞬間、彼女の顔に露骨に表れた嫌悪感。
それはそれは汚いモノを見るような表情だった。


そこまで嫌なのか、僕のことが・・・


いつかのカフェで僕は桃子さんの罠に見事にかかり、そのせいでなかさきちゃんから変態扱いを食らい「二度と姿を現さないで!!」とまで言われたんだ。
まぁ、そうは言われても、僕らは毎日の通学路が重なっているわけで。
だからもちろん、その通学途中でたまに姿を見かけたりはしていた。
でも、僕がなかさきちゃんの姿に気付いて視線を送ったとしても、いつでも例外なく彼女は僕の事をガン無視だったんだ。


偶然とはいえ、今のこの状況。
さすがに、この状況ではなかさきちゃんの視線も僕を捉えていた。
あれ以来初めてなかさきちゃんと顔を合わせたということになる。

だが、視線が交わったのは、ほんの一瞬のことだけだった。
またすぐに視線を本棚に戻してしまったなかさきちゃん。既に僕の存在は無かったものとされたようだ。
そんな彼女の露骨な態度に僕は固まりそうになったが、成り行き上なかさきちゃんに話しかけてみた。

「や、やあ(ニコッ)」
「・・・・・・」
「なかさきちゃんも参考書を買いに?」
「・・・・・・」
「なっきぃはどこの大学を目指してるの?」
「・・・・・・」

無視。
だめだよ、なかさきちゃん。無視は絶対ダメ!
風紀委員長さんともあろう人が、そんなイジメの第一歩みたいな行為をしてもいいんですか!? 

まぁ、どんな仕打ちを受けてもめげないことには定評のある僕は、それでも重ねて彼女に質問を繰り出す。

「受験勉強は大変ですか?」
「・・・・あなたも同じ学年なんだから、そんなの聞かなくても分かるでしょ」

とげとげしいその言い方ではあるが、ようやく僕と口を利いてくれたなかさきちゃん。
確かに僕らは同学年なんだけど、僕と彼女では受験に対する意識に大分差がありそうだ。意識だけじゃなくて、それに対する実際の準備も。
だから、聞いてみたんだけど。

「なっきぃはマジメだからなぁ・・・」

僕のつぶやいた小声を聞き逃さなかったのか、キッとした顔で睨みつけてくる。

「馴れ馴れしく呼ばないで下さい。そもそも私達は別に知り合いでもないのに、そんな気軽に話しかけてくるなんて非常識じゃないですか」
「知り合いじゃなくはないと思うけど」
「いいえ、知り合いなんかではありません」

キッパリと言い放つなかさきちゃん。
僕の言ったことにあきれかえったような口調で言葉を繋げる。

「本当にしつこい人ですね。しかも学園生につきまとうために先輩からも手回ししてくるなんて、いったいあなたはどういう神経をしているんですか?」

つきまとってるって、誰がだよ。相変わらずそんなこと言ってるのか、この子は。
・・・って、手回しって、なんだ? 疑問点はすぐに聞き返してみる。

「ん? 手回しって?」
「久住さんに頼み込んだんでしょ。あなたのしている最低な行為を弁護してくれるように」


例の、学園から小春ちゃんが呼び出された件のことか。
弁護してくれたって、小春ちゃんが僕のことを?
小春ちゃんから聞いたそれとは随分と状況が異なっているようだけど・・・

だいたい、あの小春ちゃんがわざわざ僕の弁護なんかするわけがないと思うんだが。
小春ちゃんが御自分のやりたいこと以外に、そんな労力を使ったりするのだろうか(いやしない)。
だから、学園に呼び出された小春ちゃんが、先方の期待とは異なるズレまくりの対応を一方的に取ったのは間違いないだろうと思うわけで。


でも、とにかくその件について、なかさきちゃんはそういう認識でいるんだな。
つまり、小春ちゃんのした訳分からない対応も、そうしてはぐらかすように僕がお願いしたとでも思い込んでいるんだろう。

風紀委員長さんが僕のことを徹底的に疎ましく思っている、ということがよく分かる。


しかし、「最低な行為」って・・・
とことんひどい言われ方だけど、僕はいったい何をしたんだっけ。
そんな言い方されるような行為をこの硬派な僕が?するわけないでしょ!

これはちょっと話しをする必要があるな。

「あのさ、ここでこうやって言い合ってるのは周りの目もあるからさ、ちょっと場所を移さない?」
「場所を移す?」
「そう。このあと時間ある?なっきぃと、もうちょっとこの話しの続きもしておきたいし。いいでしょ?」
「イヤです!」

キッパリと言い放つなかさきちゃん。
にべも無いその態度。僕に対しては一貫してその態度を貫くつもりなんだろう。


ちょっと攻め口を変えてみるか。
こういう優等生にはちょっと挑発的な言い方でもしてみるといいかもね。だから、僕はこう切り返してみた。

「男子と一緒は恥ずかしいの? まさか、そんなわけないよね。中学生じゃないんだからw」
「ち、違います。からかわないで!」
「じゃあ、いいよねw はい、決まり!!」

一方的に話しを展開する僕に、なかさきちゃんの口が半開きのまま固まった。
とまどってる、とまどってるw
その表情を見ると、男だったら誰だって本能的に、ここは押し切ろうと思ってしまうはず。
特になかさきちゃんの表情には、なんというか男としての本能を刺激してくるようなそんな怪しい魅力を感じてしまうのだ。


この子は本当にかわいいよね。女の子らしい女の子、って感じがする。
なかさきちゃんの醸し出しているその雰囲気には心が浮き立ってしまうよ。
しかも、さっきまで僕が一緒にいたのはあの有原さんなんだ。それだけに、より一層それを強く感じる。

そう、これだよ、これ。
女の子ってのは、一緒にいると気分が浮き立つようなそんな気持ちにさせてくれるものじゃないか普通。
でも、有原さんは違う。あの人と一緒にいると湧き上がってくるのは、ただただ恐怖心だ。本当の恐怖はこの人にあり、って感じ。
だいたい何であの人はいつも僕を貶めるようなことばかりしてくるのか・・・・・って、今は有原なんかどうでもいい。なかさきちゃんだ。

「どこいこうか? そうだ!ボーリングでもしに行かない?」
「ボーリング?」
「そう、昨日BSで見て、何か久し振りにやりたくなっちゃったんだよね。ボーリングでもしながら話そうよ」
「それは結構ですけど、ひとりで行けばいいでしょ。なんで私を誘うんですか?」

なんで誘うのかって? だって、なかさきちゃんかわいいんだもん。
目の前にこんなカワイイ女の子を前にしたら、誰だってもっと一緒にいたくなると思う。
男の本能ってやつだよ、なっきぃ。

なんて冗談半分で考えていたが、僕の抱いたそんな男心も、マジメななかさきちゃんには完全に下心を持っているように映ってしまっているようだ。
彼女の態度はとことん冷たかった。
僕の彼女に向けた爽やかな微笑みにも、引きつった顔で見返してくる。

いやいやなかさきちゃん、そんな顔で見ないでよ。
マジレスで答えるなら、ボーリングに一人じゃ行こうとは思わないでしょ。
それに、なかさきちゃんとの話し合いにならないじゃん。僕が一人で行っても。


まったく。女子校の優等生の女の子って、本当に面倒くさいな。
僕はいま自分の中で楽しみが盛り上がったのもあって、ちょっと急いた気分になってきていたんだ。
硬派な僕としては、もう彼女の手を引っ張っていってしまいたいぐらい。黙ってオレについてこい!的な。ワイルドだぜぇ。

「なっきぃと一緒に行きたいから。それに、なっきぃも僕とただ話しをするよりもその方がいいでしょ! さあ、行こう!」

彼女の返事を待たず、一緒に行くことが規定事項のように促してみる。
勢いで、思わず彼女の手を引っ張りそうになってしまったが、それはなんとか自粛した。
僕のその勢いに飲まれたように、彼女は僕の足の歩みに合わせて歩き出してくれた。

しかし・・・・
自分の行動は棚に上げて思うけど、なかさきちゃんって本当に押しに弱そうなんだよなあ。

今回なんかは、僕みたいないい人が相手だからいいけど、男ってやつは色々なのがいるんだからね。
彼女はちゃんとその辺を分かってるんだろうか。とても心配になる。
みんながみんな僕みたいな善人とは限らないんだ。
馴れ馴れしく迫ってくるような男には絶対に気を許したらダメだよ、なっきぃ。気をつけてね。



すぐ近くにあるボーリング場に着いたら、この時間とても混んでいた。
しばらくは待たされるようだ。


「待ち時間が長くなるみたい。どうしよう。待ってみる?」
「帰るのが遅くなるのはちょっと・・・」
「だよね・・・ あ~ぁ、残念だけど帰ろうか。でも、その前にどこかカフェでお話ししようよ、なっきぃ?」

僕の言ったことに、うんざりしたような表情で彼女が答えた。

「あのですね、その呼び方は本当にやめてもらえませんか? 知ってる人にでも聞かれたら誤解を招くでしょ!」



そのとき、不意に声をかけられる。

「おい、少年じゃないか!?」

聞こえてきたのは、男の声だった。
え? 誰だろう。



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