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今日も今日とて僕は夏期講習を受けていた。

今日は僕の後ろの席に座った栞菜ちゃん。
何でいつも僕のそばに座るんだよ、全くもう。
なるべく僕に関わってこないで欲しいんだけど・・・
なんて、そんなことを思ってる僕を見て、呆れたような口調で栞菜ちゃんが話しかけてきた。

「勉強もしないで夜も遊び歩いてるんだってな。バカじゃないのお前?」

なんで僕の行動をいちいち知っているんだろう。
この人の言うそんなことも、最早あまり疑問にも思わなくなってきてるけどさ。

「言わないでください。僕は自分の運の無さを嘆いているんだ。会いたくない人たちと、ここぞという時に会ってしまうという僕の運の無さを」
「そんなのは自分に隙があるから、そういうことになるんだよ。まったく意識が低すぎるかんな。夜遊びなんかしたりして、ちゃんと予習はしてきたのかよ」
「したよ。ほとんど徹夜状態で」

「ホントいい御身分だね。まさかとは思うけど、二日酔いじゃないだろうな」
「まさか! 飲んだりなんかしてないから。てか無理強いされなければ酔ったりなんかしない訳で」
「まったく、呆れるしかないね。ホームラン級のバカだな、オメーは」


一方的に僕を責め立てて来る栞菜ちゃん。
どうしてマジメな僕がそんなことを言われなきゃならないのか・・・・
事の成り行きも知らないくせに。


「なんだよその顔。そんな濁った目で私を見てくるなよ」
「・・・・栞菜ちゃん、許してにゃん体操って知ってる?」
「はぁ? な、なんだよ、いきなり。なに体操だって?知らないよ。何それ?」
「・・・・僕は完コピできるようになりました。てか、させられました・・・」
「オメー、泣いてるのかよ・・・」

いつも僕を小馬鹿にしている栞菜ちゃん。
そのお顔が今は僕のその反応にドン引き顔になっている。

「ま、まぁ、つらいことがあったみたいだけど、ほら切り替えてさ。もうすぐ授業が始まるかんな」


うん。そうだ、切り替えていこう。
徹夜で予習までしてきたんだ。しっかりと授業を受けなくては。


しかし、そんな高い意識を持つ僕の後ろの席に座っているのはこの人。
そう有原さんなのだった。

彼女は、ヒマなのか授業中もずっと僕の背中をシャーペンでチクチクと刺してきて、とことん僕の集中の邪魔をしてくる。小学生かよ。

いったい彼女は何をしにここに来てるんだろう。ちゃんと授業に集中しろよと思う。
例えヒマしてるとしても、勝手に一人でヒマしてろって言うんだ。他人を巻き込んだりするな!そんなの常識だろ!!
なんて思っていても、それを彼女に面と向かっては言えないんだけどさ・・・・


講習が終わった。
さすがに今日は疲れたよ。やれやれ。
テキストをカバンにしまい、一応彼女に挨拶する。

「それじゃ有原さん、さようなら」

「ちょっと待つかんな」
「え? な、なんでしょう?」
「なんで、私にこの後の予定を聞かないの?」
「は?」
「だからさ、この後わたしは時間空いてるんだけど、なんでこの私を誘わないのかな?」

何だ? 意味が分からない。
なんで誘わないのかって、なんで僕があなたを誘ったりしなきゃならないのか。

むしろ逆でしょ。
講習も終わったんだから、一刻も早くあなたの前から立ち去りたいと思ってるのに。


「ふうん? なっきぃは誘ったりするのに?」

「なっ、なっ、なんでそれを・・・」

「・・・昨日のこと、なかさきちゃんから何か聞いたの?」
「なっきぃが言うわけないかんな。消し去りたい過去だと思ってるみたいだから。男と出歩くなんて、そんなの彼女にとっては不純異性交遊なんだろうね」
「不純異性交遊って・・・ なにもしてないのに・・・」
「それで? 落とすのは失敗したの?」
「なっ・・ そんないやらしい言い方はやめろ!」
「全く、相変わらず手が早いんだからこの女好きが・・・・ま、そういう性癖ってのは死ぬまで直らないんだろうけどさ」
「だからさ、そういう意味が分からないことをしみじみ言わないでよ!」

声を荒げた僕とは対照的に、落ち着き払った態度の有原さん。
そんな彼女が意味ありげな視線で僕を見つめてくる。
そう、僕のことをじっと(それがまた無駄にかわいいんだ、この人)。

な、なんなんだ。
でも、そんな(無駄に)美人顔で見られると、反射的にドキドキしてしまうのは男の性。
不気味だけど、とっても怖いんだけど、その美人顔には思わず見とれてしまった。

そんな僕に彼女が言ったこと。


「なんかさ、お腹すいちゃったんだかんな」
「は、はぁ」


なるほど、理解できた。


つまり、このあと何か奢れということか。


「バイトして稼いだんだから、お金には困ってないんでしょ?」

なんで、僕がバイトしたことを知ってるんだよ。

「あー、お腹すいたかんなー。もう我慢できないかんなー」
「あ、有原さん、良かったらこの後どこかで軽く食べにでもいきませんか(棒読み)」
「ふん、そんなに言うのなら、じゃあ付き合ってあげてもいいか」


・・・・ちぇっ。
これではまるでカツアゲにあったようなものじゃないか。
手持ちのこのお金は、僕が暑いなか文字通り汗水たらして働いたことで得たお金なのに。
そうやって稼いだ尊いバイト代を、この人にたかられたりしてしまうのか。やりきれないよ、まったく。

だいたい、人のバイト代にたかるだなんて、そんな厚かましい行為をよく平気で出来るな。
ホント信じられない。


「さっきからオメー、なに失礼なこと考えてるんだよ。私に対する感謝という気持ちが足りないんじゃないの」
「す、すみません」

いったいこの僕が彼女に対して何を感謝しなきゃならないんだろう。
こんな意味不明なことを言う人と、今日はまだ顔を合わせてなきゃいけないのか。ただでさえ疲れているのに。
はぁ、本当に憂鬱だ。

「さ、行こうか。手持ちはちゃんとあるんだろうな? 途中で銀行に寄った方がいい?」
「恐ろしいこと言わないでよ・・」


その時、栞菜ちゃんのケータイが鳴った。



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