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今日もまた夏期講習の教室で僕の前に座っている栞菜ちゃん。
授業前の予習に余念の無い僕に対し、その彼女がご機嫌な声で僕に話しかけてくる。
それは授業前だというのに緊張感のかけらも無い雑談だった。

「昨日のざっくりハイタッチ見た?いやー、面白かったかんな」

授業への集中を高めようとしてるこの時間なのに・・・
気が散るなあ、もう。


それ、昨日僕も見たけど、あれが面白かったっていうのか、この人は。
下ネタ連発の、あんな下品で不快な番組が。

話しに乗ってこない僕の反応が気に食わないのか、さっそく栞菜ちゃんは僕に絡んでくる。

「オメーの好きそうな番組だから、わざわざこの私が話しを振ってやったのに、何だよその薄い反応は」
「いや、あの内容はちょっと・・・いくらなんでも下品すぎでしょ」
「またまたぁw好きなクセにww」

声高に笑う有原。
いつものように、周りの生徒から呆れ顔で見られているのはこの僕。

「でも、あれはひどくなかった?ゲストのアイドル固まっちゃってたじゃん」
「なに言ってるんだよ。あれがたまらないんだかんな。かわいい子の困惑しているお顔がアップでグヒョヒョ」

何がたまらないのか、僕には全く理解できない。
この人は、ノリがあの番組に出てた芸人さん達と同列なんだな。

そんな栞菜ちゃんと顔を合わせるのも、今日が最後だ(やれやれ・・)。
そう、毎日続いた夏期講習も、ようやく今日で終わり。

実はこの講習のあいだ、僕は栞菜ちゃんを意識していたことがある。
それは講習の授業中に受ける小テスト。
毎回、今度こそ彼女よりいい点を取ってやる、と密かに意気込んでテストを受けていたのだ。

しかし、どうしても彼女には勝てなかった。
僕は、ただの1回も栞菜ちゃんの点数を上回ることが出来なかったんだ。

本当に素晴らしい優秀さなんだから、栞菜ちゃんは。
その点数を見るたびに、この人がどうして・・・?と本当に信じられないんだけど。

テスト返却のたび、返ってきた答案用紙を彼女にひったくられるのだが、毎回毎回有原さんの顔が勝ち誇ったものになる。
それを見て僕は、そのたびに砂を噛むような思いにさせられていたのだ。


だが今日、彼女は意外なことを言い出した。

「でもオメー、だんだん伸びてきてるかんな」

珍しく、本当に珍しく、彼女が美少女の微笑みを僕に向けてくれた。
だが、その爽やかな笑顔を彼女が向けてくるのを見ると、逆に裏があるんだろどうせ、としか思えないのだ。

でも、まぁ本当にそう思います?
彼女にそういって言われると自信につながるな。

あの日・・・・
そう、舞ちゃんに振られてしまったあの日。
あの日以来、僕はその悲しみを勉強に打ち込むことで克服してきたんだ←
その成果がようやく今になって表れて来つつある実感を自分でも感じていて。

そして今の彼女の言葉。
あの有原さんが僕を褒めてくれるなんて・・・
案外あれで男らしい気持ちのいいところもあるからな、有原さんって人は。

実は、この講習で僕の成績が上向いたとしたら、それは僕の目の前にいるこの人のお陰なのかも、と思うところもあるのだ。
この偉そうに振舞う彼女に少しでも追いついてやろうと思って、それがモチベーションとなったからこそ講習にも集中して取り組むことができたのだから。
僕がそんな感謝の念を密かに抱いていると、栞菜ちゃんが言葉をかぶせてくる。


「まぁ、誰のお陰かと言えば、それは私のお陰だかんな。しっかり感謝しろよ、この私に」


自分で言っちゃったよ、この人。



「ま、成績が上がったって言っても、それでも私にはただの1回も勝てなかったけどさ」

サービスタイムは一瞬で終わり、いつもの軽口を叩く栞菜ちゃんにすっかり戻っていた。
僕のことを下に見ているのがモロ分かりのドヤ顔。

そんな彼女の顔が、不意にまた真面目な顔へと変化した。
こうやって表情がコロコロと変わる、そういった喜怒哀楽の表情も彼女の魅力なんだけどね。
本当に面白い人だよ、栞ちゃん。

でも、そんな彼女が次に言ったことは、ちょっと意味不明の言葉だった。


「でも、その調子で頑張るんだね。これならもう熊・・・」
「え?何?くま??」
「なんでもないかんな。気にスンナ!」

気になるに決まってるだろ。わざとやってるよね、この人。


熊井ちゃんか。
あの人は、この夏休みちゃんと勉強とかしているんだろうか・・・


・・・・してないだろうなあ。


このところしばらく熊井ちゃんに会ってないな、そういえば。

この夏休み、彼女は毎日何をしているんだろう?



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