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間が悪い、という言葉は、私のためにあるんじゃないか。
最近、よくそんなことを考えている。

楽屋でみんなで大騒ぎしてるとき、ものの10秒ぐらいそのテンションに乗っかってふざけていたら、スタッフさんに見つかって怒られたり(まーちゃんの野郎は一人でとっとと逃亡した)、学校帰りの買い食いが、なぜかまーちゃん経由でバレていたり(ちなみにまーちゃん(ry)

「喜んでもらえてうれしいです」
「いや、全然!ていうか、ほとんどまーちゃんのせいだよね!どうなってんの!」
「わーいまーちゃんの勝ち!」


――ああ・・・もう。
若干、めまいをおぼえる。

今から私は、大事な任務を果たしに行かなきゃいけないのに、まーちゃんが執拗に絡んでくる。
普段はそんな、一緒にいるわけでもないのに・・・いったいどういうつもりだろう。


「ちょっと今から、℃-uteさんの楽屋に行かなきゃならないから」
「キャー岡井さん!」
「そう、そのキャー岡井さんに用があってね。だから、悪いけどまーちゃんはくどぅにでも遊んでもらtt」


――チッ

私の発言を受け、台本に目を落としたまま、ロリヤク○ことくどぅが小さく舌打ちした。えと、私、一応、先輩なんだけどな、なんて。アハハ・・・


「まーちゃんも岡井さんに用があります」
「私のは急ぎだから。田中さんに頼まれてるの」
「ギャーたなたさーん!これはもう目が離せない!」

・・・そんなわけで、私――鈴木香音は、腰にまーちゃんをぶらさげたまま、℃-uteさんの楽屋を訪れることとなった。
比較的穏やかで、接しやすい先輩方とはいえ、やっぱり緊張する。
今日みたいに、全グループ合同のコンサートとかないと、ほとんど交流する機会もないし。

「あ・・・」

そういえば。
まーちゃんって、岡井さんの・・その、二重人格のこと、知ってるんだろうか。

私が“それ”を知ったのは、前回の合同コンサートの時。
トイレで萩原さんと話しこむ、岡井さんの様子がおかしかったから、失礼ながら9期で探りを入れさせてもらった。
結果、岡井さん本人から、詳しい話を聞くことができたんだけど・・・曰く、「頭を打って、基本人格が、お上品なお嬢様になっちゃった」と。・・・ありえない。

みんなは結構、すんなりその話を受け入れていた。
もともとハロプロエッグの時から知っていた聖はともかく、衣梨奈や里保まで・・・。そんな、現実とは思えないような話なのに、
新しい岡井さんもいいね!なんて盛り上がるのを見るたびに、私は話に乗り切れなくて、ずっともやもやしている。

まーちゃん・・・大丈夫かな。失礼なこととか言わないでほしいんだけど。
ただでさえ、自分のことで手一杯の今、変な責任を負うようなことになっては困る。


「ひゃひゃひゃひゃひゃ」
「ちょっと、静かにしてってば」

・・・ああ、本当に、もう!
わけがわからないといえば、まーちゃんもまったくわけがわからない子だ。
いっつも暴走して、ガーッて突っ走ってるような子なのかと思えば、英語とか乗馬とかドラムとか、普通じゃできないような特技を持っていたりもする。

ミーティングの時も、てんで的外れなことばっか言ってるようで、突然みんなが黙っちゃうようなすごい正論を突き付けてきたりして。

・・・ぶっちゃけ、私はどっちかっていうと、まーちゃんは苦手なのかもしれない。
嫌い!とかじゃなくて、あまりにも、自分と違いすぎて、理解できないんだと思う。
なんで今、まーちゃんが私に引っ付いてきてるのかもわかんないし、今私はわけのわからない岡井さんに会いに行くわけで・・・やだやだ、全部がわからない!本気で恐ろしくなってきた。


℃-uteさんの楽屋の前にたどり着くと、ドアストッパーがわりのサンダルが挟まっていて、中の様子をのぞき見ることができた。

「おかちょ!オッカリーナ!」
「待って待って、様子見るから」
「段取り悪ぅ」

――まーちゃんよ、私は鉄の心臓じゃないんだぜ。急にマジトーンでグサッと刺してくるのはやめてくれ!


“・・・”
“・・・・・”


中からぼそぼそと話し声が聞こえるけど、ごく小さい。
どうやら、皆さん勢揃いというわけではないみたいだ。少し安心した。


「さあ入りましょう!」
「なんか話してるみたい、邪魔しちゃ悪いよ」

岡井さんの秘密を初めて知った、トイレの時みたいに、息をひそめて様子をうかがう。

――あ、よかった。
私たちに背を向けているのは、背格好からして岡井さんのようだ。
その向かい、腰をかがめてごそごそと手を動かしているのは、矢島さん。

萩原さんじゃなくてよかったΣ(・ⅴ・o)かも・・・。だって、岡井さんのことになるとすっごい怖くなるし。
フレンドリーな岡井さんと、矢島さんだったら、どうにかなりそう。

「し、しつれ・・・」
「ちっさー、写真とろ!」

私が部屋に入ろうとしたタイミングと、矢島さんが岡井さんに声をかけるのが重なった。

「バッドタイミングゥー」
「しょーがないでしょ、もう!てかまーちゃん、戻ってていいってば」
「ここで引きさがらりるれろ」


うるさくしてしまったけれど、幸い、まだこっちには気が付いていないみたいだ。岡井さんが矢島さんの方に移動して、二人で顔を近づけあっている。


「ウフフ、千聖のブログにも載せていいかしら?」
「うん、載せて載せてー!」


あ・・・またあの言葉づかい。
真面目なリーダーの矢島さんが、調子を合わせているんだから、やっぱりこれ、岡井さんのわるふざけじゃないみたい。信じられないけど・・・


「なんだか、舞美さんと二人でお写真撮るの、とても久しぶりのような気がするわ」


岡井さんがそういうと、矢島さんはスッと目を細めた。
それは、私が今までに見たことのない表情のように思えた。


「だって、ちっさーと撮ろうとすると、舞がすごい勢いで走ってくるでしょ。跳ね飛ばされちゃいそう!とか言ってw」
「舞さん、お寂しいのは苦手と言っていたから。それで・・・キャッ」

いきなり、矢島さんが大きな手で、岡井さんの肩を抱いてグッと引き寄せた。

「おぅふ」

思わず変な溜息をついてしまった。
私の腕にまとわりついてまーちゃんの握力も、矢島さんにつられるかのように、ぐぐっと強まる。


「舞美さん・・」
「ちっさー、最近、私の部屋、来てくれないね・・・」



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