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「あーれー?ちさとちゃん、おるやん!」

いきなり、背後から甲高い声がした。
それとともに、肩にちょっとヒンヤリした手が置かれた。

「なーん、ずっきもおるし!誰も帰ってこないけん、れいな様子見にきたんやけど」
「・・・・ご、ごめんなさーい!!」

ふっさふさのまつげをパタパタさせながら、私に顔を近づけてきたのは、そう、田中さんだったのだ。
冷や汗がにじんでくる。
正直、どちらかというと怖い印象の強いタイプの先輩で、口うるさいとかじゃないんだけれど、時折バシッと放たれる
言葉に、かなりダメージを負うこともしばしばある。

でも、今は別に怒ってはいないみたいだ。
よっぽど岡井さんに会いたかったのか、私の横をすり抜けて、さっそく絡みに行っている。

「もー、れいなが呼んだらすぐ来る!」
「あはは、うけるー!彼女ですか!」
「れいなあれ好きっちゃ、♪だまっててー、ついてきてー」

すごく楽しそうで、安心した反面、なんだかないがしろになってる感じがして、ワガママだけど寂しい気持ちになる。
私がちゃんとできなかったのがいけないんだけど、最初から何にもお願いしてないみたいな・・・

「ずっきー?てか大丈夫?目赤くない?」

そんなことを考えていたら、いきなり話題が私の方に移ってきた。
あ、まずいな。話がややこしくなってしまう。

「いえ、別になんでもn」
「鈴木さんはー、たなたさんに泣かされた模様です」
「・・・ちょっと!」

せっかく穏便に済ませようとしたのに、また、まーちゃんの野郎が、しかも事実を微妙に捻じ曲げたことをぶち込んできた。
案の定、田中さんは片眉をぴくりと吊り上げて、いぶかしげに私をじーっと見つめてきた。
怒られる・・・?そう思ったけれど、次の瞬間、田中さんはなぜか私のほっぺたを両手でガシッとつかんだ。

「うそー、れいなのせい?てかごめんねー、気づかんかった!」
「え?え?」
「泣くほどいやだったんなら、まーちゃんに頼んだ方が良かったやん!れいなそういうの気がつかんからさー」

どう返答していいのかわからない。なぜかまーちゃんは感慨深げにうなずいているし。
ふと、岡井さんの方を見ると、お口をぽかんとあけて、アホの子(失礼!)みたいに田中さんをまじまじ見つめている。
そして、たっぷり20秒ぐらい経った後「・・・えー、何何!?」とおもむろに騒ぎ出したのだった。

「どどど、どーゆーこと?ずっき、ちさとを呼びに来いって言われたのが泣くほどやだったの!?たまりにたまったストレスのせいじゃなかったんかい!」
「あ、で、でも、うん!わかるよ!」
「あひゃひゃひゃまーちゃんもわかります」
「わかるのかよ!みんなしどい!」

「あの!だから!聞いてください!スタンダップ!」

話がこんがらがってきたところで、私は思い切ってお腹に力を込めてみた。
部屋中に響いていた声が、ピタッと止まる。・・・ふっふっふ、英語の授業で習ったのが、早速役に立った。

「・・・だが、それは誤用ですね」
「ごようってなに?用事があるん?」
「鈴木さんは、シャラップと言いたかったのでは。とまーちゃんは思いました。Shutupですね!」
「なになに?ラップがどうしたって?」

「いや、ですから、聞いてください!」

涙の後で、妙に気持ちがハイになっている。

℃-uteの皆さんは、優しいけれど、とんでもない脱線魔だ。里保が前にそう言っていたのを思い出して、勢いに乗じて話を続けることにした。

「あの、田中さんのせいで泣いたとか、岡井さんのせいだとか、私一言も言ってないです。まーちゃん!」
「てへぺろ」
「て、てh・・・とにかく、私勝手にテンパッてただけなんです。だって、私なんかにできるのかなって」

岡井さんがまた、小首をかしげる。

「んー?ちさとのこと、呼びに来ただけでしょ?」
「あーいや、その・・・」


これ以上、言っていいものなのだろうか。だって、岡井さんに説明してしまったら・・・


「・・・あー、わかったわかった、れいなが無茶ぶりしすぎたのが悪かった!」

さすがにこれ以上は、と思ってくれたのか、ついに田中さんが救いの手を差し伸べてくれた。
その声に、やっと肩の荷が降りた気がして、私は床にへなへなと座り込んでしまった。


「おーい、ずっきー?」
「だ、大丈夫です。それより、岡井さんに・・・」

軽くうなずいた田中さんは、そのまま、ぽけーっとしている岡井さんに向き直った。
そして、おもむろに、岡井さんのぷくっとしたほっぺたをつまんで上下にゆすり始めたのだった。

「ひゃあ!?いひゃい!なんれすか!」
「あれー?じゃあこれは?こっち?」
「おぼぼぼちょ、やめ、おま」

続いて首絞め、わきばらくすぐりと、猛攻が続く。
女の子らしく、比較的非力な田中さん相手とはいえ、意表を突かれた岡井さんには十分効果があるみたいで・・・しかも、野獣まーちゃんの羽交い絞めというアシストもあって、田中さんのなすがまま、まるでお笑い芸人さんみたいなリアクションを取り続けている。


「も・・・いったん、ストップ!なんですかこれは!」

それでもなんとかまーちゃんを振りほどき、田中さんの手首を捕えることに成功した岡井さん。泣き笑いみたいな顔のまま、キーッと田中さんに詰め寄っていく。

「でへへ」
「いや、でへへじゃなくて!」
「いやー、れいなさぁ、前から気になっとって」
「何がですか」

おお・・・私とはメンタルの強靭さがまったく違う。田中さんはまったく悪びれた様子もなく、うふっと笑って岡井さんに言い放った。

「ちさとちゃんがさー、人格変わる瞬間!見てみたいけん、ずっきに、ちさとちゃん呼んでくるついでに、いろいろ試してきてよってお願いしとったの」
「・・・なんだそれ!そりゃー泣くわ!」

そう。田中さんから私への指令は・・・単純に“呼んで来い”というものではなかったのだ。
確かめてこい、と言われたのなら、そうしなければならない。
わからなかったらそれでいい、と言われなかったからには、ちゃんと結論が出るまで、岡井さんに何かを仕掛け続けなければいけない。
それが私の心に一番負荷をかけていたわけで、とりあえずその重圧から解放された今、反動で、心が雲の上までふわふわ浮いてっちゃってるかのように軽い。

「うへへ」

マヌケな笑い声を漏らした私を、岡井さんがキッと睨みつける。

「じゃあなんだ、ずっきは、田中さんがここに来なかったら、私のことボコボコにして連れて行くつもりだったんかい!」
「ええと・・・まあ、一応、どうやって仕留めようかな、っていうのは考えてましたけど」

岡井さんが、矢島さんの後ろにサッと身を隠した。

「・・・あのさ、別に危害を加えられると変わっちゃうとかじゃないですから!
千聖が変わっちゃうのはぁ、何かショックが大きかった時とかぁ」
「あ、そうですよね。じゃあ、いまさら私が何をやっても、別に驚きはないから無駄ってことで」
「そそ。よかったぁ、ずっきが話の分かる子で」

私と岡井さんは、二人してマヌケな溜息とともに失笑を浮かべた。

「えぇー!?じゃあ、見れんやん、千聖ちゃんが変わるとこ!何とかならん?」
「いやー、ちさとの意思でやってることじゃないんで」

田中さんが唇をとがらせている。
ええと・・・先輩にこういう言い方はアレだけど、結構、田中さんはこういうとこ譲ってくれないっていうか・・・。


「あ、じゃあ、わかりました!あれなら!」

あからさまに不機嫌になった田中さんを気遣ったのか、しばらく後ろで様子を見ていた矢島さんが、マンガのリアクションみたいに、ポンと手を打って、岡井さんを手招きで呼び寄せた。

「なになに、どうすんの、舞美ちゃん」
「お?見れるの?」
「はい、私がいつもやってる方法なら・・・」

岡井さんの顔色が、サッと変わる。


「ちょ、舞美ちゃ」
「わかってるって、ちっさー!」

矢島さんはいつも通り、さわやかな笑顔を浮かべると、おもむろに私の肩をガッと組んだ。
そして、その綺麗すぎるお顔に満面の笑みを浮かべたまま、とんでもないことを口走った。

「ここからは、18歳未満の方はご利用になれません!とかいってw」
「え?」

回された矢島さんの手は、優しいけれど力強い。
あれよあれよという間に、私は楽屋の外へと誘導されてしまった。

「これ、あげるから、待っててね!」
「え??あの?え?」

手渡されたのは、なぜかぺろぺろキャンディ。・・・幼児、扱い?


“ちっさー、待て待て!逃げちゃだめ!”
“まーって!やめろコラ!あっちょっそこは(ry”

楽屋の中からは、ドッタンバッタン暴れまわる音。
田中さんの甲高い笑い声。私一体、何しに来たんだろ・・・。
とりあえず、矢島さんからもらった飴に、パクッとかぶりついて待ってみる。

「うふふふ、かーのんちゃん」

すると、待ち構えていたかのように、聖ちゃんが廊下の角からひょっこり顔を出した。
スキップまじりにこっちへ来ると、そのまま、私がくわえているおっきなペロペロキャンディの端っこにかじりついた。

「にぎやかだから、来ちゃった」
「でも私、放置プレーだよ」
「え?プレイ?うふふふふ・・・」

聖ちゃんは扉の向こうに、ねっとりとした視線をゆっくり向けた。

“ちっさー、これどう?これ?”
“ま、舞美ちゃん待ってまじで!脱がすのは(ry”
“やばーい!℃-uteなんなん?ウケるー!”

「香音ちゃんへの、教育的配慮ってところかな?」
「なにそれ?」

どうも、今日はよくわからないことが多い。
岡井さんの人格が変わることと、私と、何の関係があるっていうんだろう。

楽屋の中は、依然、変な声とドタバタ暴れるような音が聞こえ続けている。

“あひゃひゃひゃひゃひゃ”

その音に混じって、すごく特徴的な笑い声が耳に飛び込んできた。

「・・・・あーっ!!!」

しまった、何たることだ。

「あらら、どうしたの?」
「・・・おいてきちゃった、まーちゃん・・・・・」


そう。
何が行われているか知らないけれど、私がぽいっと閉め出された楽屋の中には、まだまーちゃんがいたのだった。
田中さんが入ってきて、わちゃわちゃとしゃべっているあたりから、ダンマリだったから、ぶっちゃけ存在を忘れていたというか・・・(おそらく飽きて居眠りしてたんだろう、まーちゃんにはよくあること)

「ど、どうしよう。連れ出した方がいいのかな。だって、18歳にならないと見ちゃダメって」
「へー、それは楽しそうな・・・」

聖ちゃんは、目を細めてうふふふと笑った。

「まーちゃんが追い出されないんだから、別に見てもいいんじゃない?」
「でも、田中さんもいるし。怒られちゃうんじゃない」
「怒られることを恐れていては、成長することはできないと思うなあ」

おお・・・なんかかっこいいこと言ってる。でも、ビミョーに丸め込まれているみたいな。


扉の向こうからは、猫の鳴き声みたいな、聞きなれない声が聞こえてくる。
あと、矢島さんがぼそぼそ何か言ってるのとか。


「どうするの?香音ちゃんが一歩勇気を出せば、無限の未来が開けるんだよ」

聖ちゃんはさっきから、何か名ゼリフみたいなのを連発してるけれど、イマイチそれに乗り切れないこの気持ちはなんなのだろう。


「うー・・・」



――結局。数分後、すっかり人格が入れ替わった岡井さんが出てくるまで、私は眉をしかめて扉とにらめっこし続けたのだった。




リ*・一・リ<ウフフフ香音さん、ごきげんよう
从;´◇`)<ごごごごk
从・ゥ・从<はぁースッキリした!ちっさー、もう1回?
モジモジ *1 )モジモジ
从;´◇`)<いったい中で何が・・・
从*´ヮ`)<まあ、あれやね
从;´◇`)<
从*´ヮ`)<やじまちゃんとか、いい子でつまらんのかと思ったら・・・あははははh
ノノ∮‘_l‘)<うふふふふ
从;´◇`)<え?え?
川*^_〉^)<まーちゃんは1つおとなになりました。つきましては、この録画したてほやほやの映像をみししげさんに・・・
从;´◇`)<よ、よくわかんないけどヤメテー!!これ以上波風を立てないでー!


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