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お姉ちゃんがここに?嬉しい!
嬉しいけど、お姉ちゃんが何で? どうして?

現れた美人さんのその姿に、僕は混乱を隠せなかった。
そんな僕の顔を認めたお姉ちゃん。
僕の思ってる疑問に対しては、細かいところを全部すっとばして、いきなり本題を切り出してきた。

「お迎えのクルマ、もう来ましたよ!」

汗をかきかき、その満面の笑顔で僕にいきなりそんなことを告げてきた。
慌ただしい人、なのかな・・・お姉ちゃんって。
それが意図してのことなのかは分からないけれど、いきなり切り出した本題により一瞬にしてここの空気を御自分のものとして引き寄せてしまわれた。
そこは、さすがお姉ちゃん、って感じはするなw


そうか、帰りもまたお嬢様がクルマを用意してくださったんだ。
本当に、ありがたいことです。

そんなに気を使っていただいたりして、お嬢様には一度あらためてお礼に伺わなくてはいけないな、これは。
うん、僕にはお屋敷に伺ってお礼を述べる義務があるんだから、できるだけ早く近日中に伺わなくては。夏が終わってしまう前に。
(決してプール目当てでお屋敷に伺うわけじゃないですから!)


「それは助かります。でも、なんで、あの・・・舞美さんが?」

・・・ひゃあー、お姉ちゃんのこと名前で呼ぶの、何か照れるなあ。
でも、慣れていかないとな。将来はそう呼ばなきゃいけないんだし。
舞美義姉さん、ってry


ゴホン、閑話休題。

僕がそう問いかけると、急に真顔になったお姉ちゃんが僕のことを真っ直ぐに見てくる。

「お見舞いにも来れなくてすみませんでした」
「そんな・・・ そんなこと気にしないで下さい」

僕がそう言うと、お姉ちゃんはそこでニカッとした笑顔になり僕と熊井ちゃんに視線を往復させる。

「だって、邪魔したら悪いのかな? なんて、思ったりしてw」

爽やか笑顔のお姉ちゃん。
にこやかにそんなことを言ってくる。

ん? どういうことでしょう?
ちょっと意味が分からないです。

そういえば、もうずっと前にもこれと似たようなことがあったような。

・・・そうだ、あれは桃子さんの卒業式のとき。
あのときはお姉ちゃん、僕と桃子さんが付き合ってるみたいな壮大な勘違いをされていたんだっけ。

お姉ちゃんって、もしかしたら思い込みがとても激しい人なんだろうか・・・


「それでですね、今日退院されるって聞きましたので、せめてそのお付き添いぐらいはしようと思って、それで、わたしも一緒に乗せてきてもらったんです」

なんと、お姉ちゃんが僕の退院に付き添うためにわざわざ来てくれたなんて!
この入院生活最大の喜びが今やってきました!!


だが、望外の言葉に舞い上がった僕だったが、部屋の空気が緊張感に包まれていくのが体感できた。
お姉ちゃんとのやりとりで頭が一杯になっていたけど、ここには、そう、この人がいるのだから。

僕がお姉ちゃんの言ったことに舞い上がってるその横で、熊井ちゃんがお姉ちゃんに冷ややかな口調で話しかける。

「舞美は別に来なくても良かったのに。うちがいるんだから」
「大丈夫だよ!熊井ちゃん!!」

あの大きな熊さんに明るくそう言い放つお姉ちゃん。

何が大丈夫なんだろう・・・
この僕でさえも、お姉ちゃんの言ったことの意味が分からなかった。

それを聞いて、案の定眉間に皺を寄せる熊井ちゃん。
一方のお姉ちゃんは、それを全く意に介していない様子の爽やか笑顔。
明らかにご機嫌斜め気味になっている熊井ちゃんのことなどお構いなしに見える、この明るい笑顔。

すごい、な。
熊井ちゃんにこんな態度を取れる人なんて、なかなかいないだろ。
何かさすがって感じがする。
まぁそうだよな、学園の生徒会長だったような人なんだから。


そうは言っても、お姉ちゃんのその笑顔の醸しだす明るさとは対照的に、僕は今とても緊張が高まりつつあった。
だって、場の主導権を一方的に握られてしまうこと、こういうのを熊井ちゃんは何よりも嫌う。
そう、この人は唯我独尊ちゃんなのだ。
いつだって御自分のターンでないと納得しない人なんだから。

第三者的に見て、この光景に緊張を覚えないわけがない。
と、とにかく空気を変えよう。

「ま、舞美さん!!」
「はい?」
「あ、ありがとうございます。クルマを用意して下さったんですか!?」
「えぇ。もう玄関で待ってますから、急いでくださいね。荷物はこれですか?私が持ちます。じゃあ、先にクルマに行ってますね!!」


空気を変える暇も無かった。
お姉ちゃんはそう言うやいなや僕の荷物を担いで玄関に向かって走って行ってしまったんだから。

その最初から最後まで、なんという慌ただしい人なんだろう。
お姉ちゃん、その額にはすでに汗を浮かべていらっしゃるようだった。


「まったく、、舞美は・・・・」

「舞美は何をしでかすかわからないとこあるからねー。ほんと天然さんって怖いよね」

生徒会長まで務めたような人に何を言ってるんだろう。
あなたの方がよっぽど、何をしでかすかry


しかし今の熊井ちゃんの言葉で分かった。
さっきの彼女の態度を見て僕は、ひょっとして熊井ちゃんヤキモチ!?なーんて思ったのだが、もちろんそんなことがあるはずも無い。
熊井ちゃんは、気に入らないだけなんだ。
自分の子分が、突然やってきた全力天然美女という自分以外の人の影響を受けているということが。

なるほど、そうか、舞美さんは熊井ちゃんにとって数少ない自分がコントロールしきれないような人だと思われているんだな。
(そして、僕はもう完全に大きな熊さんの子分として定着してるんだな・・・)
舞美さん、そのクマ脳内で考えている脚本通りにコトを運ばせてくれない暴走キャラクターとして認定されてしまってるんだ。

決して大きな熊さんの意のままにはならない人か。
そうそういないぞ、そんな人。
そんな強さを持っているお姉ちゃんに憧れてしまいそう。

舞美さん、カッコいいなあ。


だが、熊井ちゃんのその攻撃の矛先は当然のように僕に振り向けられる。

「だいたいなにさ鼻の下を伸ばしちゃって。何か変な事でも考えてるんじゃないでしょうね」
「伸ばしてなんかいないから。変な事も考えてない!」

熊井ちゃんの言ったことに思わず即答でマジレスしちゃったよ。
彼女の聞いてきたこと、今はそんなこと考えてなんかいなかったから速攻で否定したけど、実は図星をつかれそうになったからなのかもしれない。


「まぁいいけど。はぁ・・・リーダーって大変だね。色々気を使うことが多くてさ。子分の入院の面倒から、そこにやって来るのは常に全力かつ天然・・・

珍しく何か含む表情で熊井ちゃんがそう言いかけたとき、舞美さんが戻ってきた。
その額は汗だくだ。首筋も汗で光っている。そして胸元もry


「さぁ、行きましょう!」


舞美さんのその声は、聞くだけで気分が浮き立ってくるような、そんな気持ちになる綺麗な声だった。

黒塗りの高級車。
ここのところよく乗せていただいている、このフカフカのシート。
その快適な後部座席に座ってるんだけど、今はどうしてもくつろげない。

くつろげない理由はただひとつ。

僕の右には舞美さん。
そして、左には熊井ちゃん。
超絶美人さんに挟まれているこの状況、信じられないぐらい幸せな状況だ。


にもかかわらず、僕はいま緊張のため体がひたすら強張ってしまっている。

それは、熊井ちゃんの醸し出している殺気のようなものの圧力がすさまじくて。
この車内、何かすっごく耐えられないような重い空気が充満してるんですけど。

そんな僕が緊張を覚えていることや、車内のこの重い空気でさえ、まったくお構いなしのお姉ちゃんが明るい声をかけてくる。


「あ、そうだ! 舞に頼んでおきましたから」
「えぇっ? 舞ちゃんに? 何をですか?」
「お嬢様に頼まれてた例のことです」


続けて爽やか笑顔でお姉ちゃんが言ったこと、それは僕の思考を停止させるのに十分な破壊力だった。


「あなたの勉強の遅れを取り戻すために、舞に勉強を見てもらうことですよ」


!!!!

ありがとう神様・・・
やっぱり神様は僕のことをちゃんと見ていてくださったんですね・・・
神様に感謝の気持ちを抱きつつ、その瞬間から意識が飛んだ。


「ちゃーんとOKしてくれましたから、舞」
「どうせ、舞ちゃんは渋ってるのに、そんなの一切聞いてなかったんでしょ、舞美は」
「ん?何か言ったかな? でも、大丈夫だよ、熊井ちゃん!!」


思考停止した僕を挟んで、2人の超絶美人さんが何か言葉のやりとりをしている。
だが今の僕には、それらの言葉はもはや全く耳には入ってこなかったんだ。



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