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そう、お嬢様はここにはいなかった。
お嬢様だけじゃない。ここには舞ちゃんだっていないじゃないか。

そんな・・・

そのお2人に会えないなんて、そんな事実は受け入れがたい。
せっかくプールサイドまで来たのに・・・・・
肝心のお嬢様や寮生の皆さんの水着姿が見れないなんて。
見れたのと言えば、なかさきちゃんの水着姿だけか・・・・
そんなことがあっていいのだろうか。

あ、いや、別に水着姿の皆さんが見れなかったのがそこまで残念なのかというとそういうことじゃなくてですね(ほ、本当ですって!)。
ただお嬢様に会えないと、ここに来た意味が無いと言うか・・・


そんな僕にとって救いの言葉を発してくれたのは、天使のような愛理ちゃん。


「ここにいないってことは、あれだね。あっちのミニシアターで時代劇でも見てるのかも」
「そうか、そっちか! よし、じゃあミニシアターに行ってみましょう!」
「舞美ちゃん、わたしはここにいるね。なっきぃが目を覚ますまで私がついててあげるよ。ケッケッケッ」
「うん、わかった!」


そっか、ここで愛理ちゃんとはお別れか。
名残惜しいけど、ちょっとホッとした気分もあるのだ。
これで、ここまで受け続けていた極度のプレッシャーから開放されるから。

ちょっとした安堵感に浸っている僕に、愛理ちゃんが声を掛けてきた。

「お嬢様のところまで私がご案内できませんでしたけど、すみません。今日がいい1日になるといいですね」

そう言う愛理ちゃんは意味ありげな笑顔を浮かべていたけれど、そんな表情も笑顔には違いないわけで。
僕はそれを聞いて、ただ口をパクパクと動かすばかり。
返事をしなきゃ、、、、と思うのに、声が全く出ない。
彼女の言葉に頷き返すのが精一杯。何も言葉が出てこないんだ。
なるほど。さっきの執事さんはこんな心境だったんだろうな。やっと分かったよ・・・


愛理ちゃんとはそこで別れ、僕は舞美さんの後ろをついて歩いていく。

そのミニシアターとやらには、すぐに着いた。
庭に即席でこんなシアターを作ってしまうということ自体が、平民の理解の範疇を超えている。


そこに、お嬢様は、いらっしゃった。


「失礼します、お嬢様!」
「あら、舞美さん、お一人でいらっしゃったの?」
「いえ。お嬢様!彼が来たんですよ!」
「私にお客様かしら? どなたでしょう」


「まぁ、ももちゃんさん!」

僕の姿を認めると、立ち上がって僕に駆け寄ってきてくださった。

やっと、やっと千聖お嬢様に会えた!!

お嬢様!!!

清楚なワンピース。その夏らしく爽やかな格好がとてもお似合いで。
かわいい・・・・かわいすぎる・・・・

そう、千聖お嬢様は水着姿ではなかったのだ。
でも、全然がっかりなんかしていませんよ。(ほ、本当ですって!)
むしろ、そのいかにもお嬢様然としている上品なお姿を拝見できたのがとても嬉しい。
だって、僕は普段そんな雰囲気を醸し出している人を目にすることなんか無いんだから。
これが、お嬢様。

いま目の前にいるお嬢様のその上品なお姿に、僕はすっかり目を奪われてしまった。
そして、その、お嬢様のそのお姿、僕の目はですね、やっぱりその、ある一点に吸い込まれそうになるんです。
それはですね、お嬢様の白いワンピースの、こんもりと盛り上がったその(ry



まだ信じられないような思いだが、千聖お嬢様は確かに僕の目の前にいるのだ。
その鳶色の瞳で僕のことを見てくださっている。
小柄なお嬢様の、その見上げるような視線。これはヤバい。もうすぐにでも記憶が飛んでしまいそうで・・・


そんな僕にお嬢様がお声を掛けてくださった。

「あの、もう大丈夫なんですか?」
「はい!お陰様で、手術も無事すんで退院できましたので」
「それは良かったわ。本当に安心しました」


僕とお嬢様が交わすそんなやり取りをニコニコ顔で見ていた舞美さん。


そんな舞美さんだったが、そのとき急に思い出したように大きな声をあげた。

「あっ、そうか! やっと分かった!!」

びっくりしたお嬢様と僕が揃って舞美さんを見つめる。
お姉ちゃん、何が分かったんだろう?


「なにかが違うと思って、引っかかってたんです! やっと分かった!!」

「なっきぃのやつ、私が選んだ水着を着てないじゃないか!!」


僕にはそのセリフの意味がよく分からなかったが、お姉ちゃんは「スケスケの方がいいかな?それとも紐のほう?」とか一人で呟いている。
汗をかきかき、お嬢様に明るく告げるお姉ちゃん。

「お嬢様、わたしは寮にあの水着を取りに行かなくちゃいけなくなったので、これで失礼しますね!!」
「あら、舞美さんは本当にお忙しいのね」
「あとは、若い2人でどうぞごゆっくり、とかいってw あははは」

そう言うやいなや、舞美さんは全速力で走って行ってしまった。
慌ただしい人だ、本当に。


走り去っていった舞美さんの後ろ姿を見送ると、僕は改めてお嬢様に向き直る。

「お嬢様、今日はお礼を言いたくて。そのためにここに伺ったんです」
「お礼を? どういうことかしら?」
「いろいろとお気遣いいただいてありがとうございました。お陰様で快適な入院でしたよ」

あの人の存在だけは別とすれば、だけどね。
なんて、今この場にいない人のことを思いながら、お嬢様との会話を楽しんでいた。

「そんな、お礼だなんて。こちらこそ。私は何もお世話できなくて本当に申し訳なかったわ」
「めっそうもないです。お嬢様の手をわずらわせたりするなんて、とんでもないです」

そう言ってお互いを見つめあう2人。そう、舞美さんのいなくなった今、僕らは2人っきりなわけで。
あれ? なんかいい雰囲気じゃないか?
目の前にはお嬢様が。僕を見つめている、その鳶色の瞳で。
僕の思考から、だんだん現実感が失われていく。

こんなところで(お嬢様のお屋敷内ですよ!)思いがけず2人っきりになって、しかもその深い色を湛えた瞳で見つめられたりして。
もう、僕に妄想に入れと言っているようなものじゃないか。


「やっと2人っきりになれましたね」
「えぇ、やっと。この瞬間が来るのをずっと待ってたの。2人っきりになれるこの瞬間(とき)を」
「お嬢様・・・ でも、僕には・・・」
「ダメよ。それ以上は言わせないわ」
「・・・・い、いけません。そんな」
「あら、ここに来たあなたはもう既に千聖のものなのよ。そしてまた千聖もあなたの・・・・


さあ妄想もいよいよここからですよ!というところで、ハッと我に返る。
目の前には、やはりその鳶色の瞳。
その穢れのない澄んだ瞳を見て、僕は自分のした妄想に思いっきり自己嫌悪を覚えた。
お嬢様に対して後ろめたい気持ちで一杯になる。
だから思わず、お嬢様から目をそらしてしまった。

いまハッと我に返ったのは、背中が凍るような悪寒を感じたから。
背後からのはっきりとした圧力。すさまじい負のパワーだ。

本能的に恐怖感を感じて思わず振り向いてみるが、そこには誰もいない。
でも、いま確かに突き刺さるような視線のようなものを感じた。

なんだったんだ今の感覚は。


そんなことを感じていたのだが、一匹の犬が僕の足にまとわりついてきたことでそっちに意識が向かう。
尻尾を振り振り足元にすりよってきたのは、黄金色のミニチュアダックスフント。
このワンちゃんが恐怖に支配されそうになった僕を、お嬢様との幸せな空間へと引き戻してくれた。
ありがとう。お嬢様のお屋敷のお犬様。

「あら、リップはももちゃんさんのこと好きなのかしら。やけに懐いているみたいだけれど」
「かわいい犬ですね。リップという名前なんですか」

僕はしゃがんで、リップと呼ばれたこの犬の頭をなでてあげる。
優しい顔をしてる犬だ。
犬といえば、ミントは元気かな。久し振りにミントと遊びたいな。


「犬、好きなんですか?」
「えぇ。好きです。犬好きな人に悪い人はいないとよく言いますよね。その言葉通りに僕m
「まぁ、そうなの!千聖も犬が大好き。ここにはもう一匹いるのよ。同じミニチュアダックスだけどチョコレート&タンの方がぱいんっていうの」

しゃがんだ僕が見上げるお嬢様のそのお顔は優しく微笑まれていた。
上品なその柔らかい笑顔。細められた目を見ているだけで幸せな気分にさせてもらえる。

あぁ、今日ここに来て良かった。
心をキレイにしてもらえるような、お嬢様のそんな笑顔を見ることが出来たんだから。


ゾクッ・・・

いま再び、鋭い悪寒のようなものを感じた。それはもうハッキリと。
まるで、見えないところからスナイパーに狙われているような、この緊張感。
僕はいま千聖お嬢様と2人っきり。幸せな状況といえるだろう。
だが一方で、これはやはりヤバい状況におかれているのだろうか、という危惧も感じるわけで。
だって、千聖お嬢様と2人っきりでいるなんてことは僕には許されるようなことではないのだから。
それぐらいのことは自覚している。

さっきから本能的に身の危険を感じる。
そして、その危険は差し迫っているような気がするのだ。
危機感がリアルに感じられてきた僕は、もう落ち着いてなどいられない気持ちになっていた。


そんな僕の感じている緊張など全く関知していない様子のお嬢様が柔らかい口調で僕に言った。
いま緊張を感じつつも、お嬢様とお話ししている間だけは、そこから開放されるんだ。

「もう舞にはお会いしたのかしら?」
「いえ。舞ちゃんには、今日はまだ会っていません」
「それなら、舞にも会って行くといいわ。あとで千聖が寮に御案内しますから」
「ほ、本当ですか!!」

千聖お嬢様が自ら僕をわざわざ寮にご案内してくださるんですか!!
しかも、舞ちゃんのお部屋に?
愛理ちゃんが言ってくれた通りになった。今日はいい1日になる!! 最高の1日に!!

これは、僕にとって今日は運命的な1日になる予感が。
後年我が人生を振り返ってみたときに、今日がターニングポイントとなるんだろう。
そんな歴史的な1日になるんだ。今日は。

そう、そのはずだった。

そのとき、ふいに僕の名前が呼ばれたりするまでは。

幸せをつかみかけているこのタイミングを狙ったかのように、僕のことを名前で呼びつけてくる人。


その人とは、もちろん・・・

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「おい、なに屋敷内に男を入れてるんだよ、この執カス」
「本当に使えないでしゅね」
「オメーこの責任はとってもらうかんな」
「そんな・・・・ それよりも萩原さんが対応すればいいじゃないですか、そんなに言うんなら。来てるのはあの少年なんだから。こんなところから双眼鏡で監視なんかしてないで」
「ああん?」
「ひぎいっ!」
「おっ、あいつ振り向いてこっち見てきたけど、気付いた?」
「向こうからこっちは見えるわけないでしゅよ。この距離なんだから」
「って、おい、見ろよハギワラ。あいつ、お嬢様に手を出そうとしてるかんな。いいのかよ!奴の好きにさせて!!」

「もし何かあったら、もちろん許さないでしゅよ?」
「・・・・真顔が怖いよ、舞ちゃん」
「でも、大丈夫。心配ないでしゅ」
「えっ? どういうこと?」

「ほら、来たみたい。これでもう終わりだろうから」
「お!熊井ちゃんだ! なるほどねw 舞ちゃんが呼んだの?」
「舞は知らないでしゅ」
「ふーん? ま、嗅ぎ付けて来たのか。さすが熊井ちゃん」
「うん。さすがとしか言いようがないね、熊井ちゃんは」

「でも、どうして熊井ちゃんが屋敷の中に入れたのか。それを考える必要があるでしゅね」
「なるほど。あ の 熊井ちゃんをそう易々と屋敷内に入れさせるほどここのセキュリティーは甘くないはずなのに。どうやって門を突破したんだろう・・・」

「!! そうか、めぐぅか!」
「間違いないでしゅ。熊井ちゃんを手引きしてあそこに向かわせたのは鬼軍曹だね」
「あいつを追い返すのに自分の手を汚さず、ちょうどいいところに来たとばかりに熊井ちゃんを使ったってことか」
「鬼軍曹の策士っぷりには驚かされましゅ。どうすればそんな策略をいつもいつも思いつくのか。ま、持って生まれた性格なんだろうけど」

「あ、気付いた。あーぁ、腰を抜かしちゃってるでしゅ」
「なんだよ、あのコテコテのリアクションはww」
「なんかサイレントムービーの喜劇映画でも見てるみたいでしゅねw」
「首根っこ掴まれて引きずられてるしwww 録画しておけば良かったかんなww」




「こっちも面白いことになってましゅよ」
「あー、舞美ちゃんが戻ってきたんだ」
「あの水着、例のやつでしゅね。ふふん。なっちゃん大ピンチ」
「わざわざ持ってきたってことは・・・ 舞美ちゃん、今すぐに着替えさせる気なんだ・・・ 今いるあの場所で・・・ あのへんたい水着に・・・」
「あ、なっちゃんも気付いたみたい。あははは、驚いてる驚いてるw」
「毎度のこととはいえ、これはなっきぃにしかできないハマり役だかんなw」
「無駄な抵抗、という言葉がこれほど似合う光景もないでしゅね。あ、羽交い絞め決まった」
「うわー、瞬殺で剥ぎ取られて・・・ えげつないわー舞美ちゃん・・・」
「同情を禁じえないでしゅね・・・」
「なっきぃご愁傷様だかんな・・・」





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