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うわー、めんどくさいことになったな。
みおんがこうなると、もう手が付けられない。
大泣きするみおんが暴れて、俺の顔や服にも、クレヨンの汚れがなすりつけられる。

「ふえーん、おにいたまのばか!」
「何だってんだよ、一体・・・!」


「・・・あーっ!こんなところに!お洋服のカタログが!」
「お姫様に変身できそうなドレスだね!すごいね、えり!」

その時、突然、廊下の奥からわざとらしい会話が聞こえてきた。
お喋りの声がどんどん近づいてきて、姿を現したのは、梅田さんと矢島さんだった。

「まああ、空翼様に、みおん様!偶然ですね!」
「え?・・・はあ。」

癖の強い寮の人たちの中じゃ、わりと話しやすいこの人たち。
みおんも気を許しているのか、ピタッと泣き声が止まった。


「よかった、今、みおんお嬢様を探していたんですよ、私たち!」
「どちて?」
「ほら、この本。みおん様に似合いそうな、とっても可愛いドレスがいーっぱい載ってるんです!」

そういって、みおんの目の前で、キラキラしたピンク色の花とかが描いてあるカタログ雑誌を開いてみせる。

「これなんか、どうですか?フリフリがいっぱいで、私もおそろいで着ちゃおっかな、とかいってw」
「もっと、見ゆ!」

足をバタつかせながら、俺の顔をどかそうとするみおん。
抱っこの手を解いて、床へおろすと、小走りに二人のところへ行ってしまった。

「空翼おぼっちゃま、みおんちゃん、お借りしてもいいですか?」
「・・・ああ、どうぞ。手汚れてるから、とりあえず拭かせた方がいいっすよ」

捕えられた宇宙人みたいなシルエットで、去っていく三人。さっきまの泣きわめきっぷりが嘘のように、みおんはぴょんぴょん飛び跳ねてはしゃいでいる。


「さ、空翼様。替えのお部屋着をご用意しましたので、お手数ですがそちらのクレヨンの付いてしまったお洋服を・・・」
「・・・ああ、頼むよ。ったく、ワガママ姫だなあいつは」
「ふふ。でも、そういうところが可愛いんでしょう?」

近くの洗面所まで移動して、着替えながらドアの向こうの村上さんに話しかける。


「さっきのさ、梅田さんと矢島さん」
「はい」
「村上さんが呼んだんだろ?みおんの奴が泣き止まないから」

すると、しばらくの沈黙の後、ふふふと笑う声が聞こえた。


「何だよ」
「いいえ、私が呼んだわけでは。みおん様が癇癪を起されているとき、ずっと一緒にいたじゃありませんか」
「あ、そっか」
「おそらく、気配とか、空気で察して来てくれたんでしょうね。寮の方たちは、岡井家の皆様の事、家族のようにお感じになっているようですし」

――家族、ねえ。だったら今日の俺の・・・まあいいや、皆まで言うまい。
たしかに、矢島さんも梅田さんも寮の中じゃ年上だし、みんながお姉さんとして頼ってるのは知ってる。すごく、周りを見れる人たちなのかもしれないな。
俺は、ちょっと・・・話しかけられると、慌ててしまって会話にならないけど。

「おぼっちゃま」

だいたい、矢島さんは女なのに身体能力高すぎなんだよ。まさかPKで負けるとは思わなかった。

「おぼっちゃまー?」

梅田さんも、俺がぼーっとしてる時に、顔近づけてきて話しかけるのやめてほしい。そういう風に言ったらしょんぼりするのも困るんだよ。

「おーい!お・ぼ・っ・ちゃ・ま!!」
「うおっ」

そんなことをぼんやり考えていたら、村上さんがドアを乱暴にノックしてきた。

「しみ抜きは速さが重要なので、脱がれた服をお渡しいただけますか」
「あ・・・悪い。それじゃ、これ頼むよ」
「承知いたしました。では」

――なんつーか、村上さんぐらい男に近い性格だと、もはや何の気づかいもいらなくて楽なんだけど。
フルメタルマッチョがだめなら、新しいあだ名考えとくか。マッスル・アーミー・・・、ヘルズデビル・・・

手渡されたTシャツを着こんで、洗面所から出ると、既に村上さんが戻ってきていた。

「早っ!しみ抜きすんじゃないの?」
「ああ、それは得意なスタッフに頼んでおきました」

俺の頭の中に、ショボ執事が胃を押さえながら洗濯機の前でゴソゴソやってる様が浮かんだ。

「私は、空翼様に、お伝えしておくことがあったので」
「うん?」
「本当は、私が勝手に申し上げることではないのかもしれませんが」

村上さんは、口の端をにぃっと吊り上げた。


「みおん様が泣いていた理由、気になりませんか?うふふ」



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