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「村上さんはさ」

千聖様のお部屋へまいりましょう、と言われ、メイドルームから移動する際中、俺の後ろをしずしずと歩く村上さんに話しかける。

「千聖ねーちゃんのことどう思ってるの。メイドとして、じゃなくて、同年代の同性として」
「難しいご質問ですね」
「何か、全然タイプがちげーじゃん。たとえば、村上さんがねーちゃんと同じ学校通っててさ、部活とか委員会で知り合いになっても、全然関わらなさそう」
「ああ、それはそうかもしれないですねえ」

なぜか、とても楽しそうに笑う村上さん。
あんまり、特定の女子のグループには入らなさそうなタイプだよな、この人。でも好き嫌いははっきりしてるから、一匹狼っつーか、付き合う相手を選んでそうな。


「ほんと、千聖ねーちゃんって、何考えてるのかわかんねえ」
「・・・でも、大好きなんでしょう?千聖お嬢様のこと」
「別に。家族に好きも嫌いもねーよ。家族は家族だ」

そんな村上さんだから、俺はわりと、この人には本音をさらけ出せたりする。いちいち詮索してこない、サラッとしたところが、いろいろと話しやすい。
絶対、性別間違って生まれてきたよな・・・もったいない。男だったら、サッカー部に勧誘してたのに。つーか、彼氏はいなさそうだけど、彼女はいそう。とかいってwぷぷぷ


「おぼっちゃま」

千聖ねーちゃんの部屋につながる、廊下の角の前で再度村上さんに呼び止められる。

「何?」
「ふふ、さっきの。前に、お嬢様も同じこと言ってました。寮の皆さんも交えてご家族のお話をなさっているとき、“家族に、好きも嫌いもないでしょう?”と。
だから、空翼様は何も心配することはないんですよ」
「別に俺は心配なんて」
「いいなあ、そういうの。」

その時、俺は初めて、村上さんのおねーさんっぽい顔を見た気がした。
ふっと微笑みを浮かべた表情はちょっとさみしそうにも見えて、俺が普段マッチョ(ryと言っている人とは全く別人のように見える。


「このお屋敷に人が集まってくるのは、当たり前のように、家族の愛があるからなんでしょうね。
誰もが望んでいて、でもそう簡単に手にすることのできない・・・。家族と離れて暮らしている寮生さんたちは殊更、それを強く感じていらっしゃるでしょうし」
「む、村上さんだってまあ、うちの家族みたいなもんじゃん」

自分の家族を褒められるのがむずがゆいのと、いつにない村上さんの様子に、俺は慌てて口をはさんだ。
村上さんは、目をぱちくりさせて俺をじーっと見ている。

「ありがたいお言葉ですが、空翼様・・・」
「あ・・・いや、だからさ、家にいる人は家族だろう?まあ、ショボ執事とかは庭の木みたいなもんだけど」
「あはは。せめて、郵便ポストぐらいには思ってあげてください。・・・ま、雑談はこのぐらいにして」


ああ、この切り替えの早さ。俺が本格的に困る前に、話題を切り上げてくれる。やっぱこの人って・・・


「あ、ちなみにおぼっちゃま。私は別に○○○ついてないですし、性別間違ってもないですよ。みや・・・ま、今のところ男性にこれといった関心がないのは大当たりですけど」


――だから、心読むなっつーの!やっぱり当分、つえーメイドの称号は外せないな。

部屋の前まで行くと、腕組みしてドアにもたれかかっている人物、1名。
俺の顔を見るなり、眉間にしわを寄せて舌打ちしてきやがった。
その険しい表情のまま、村上さんをジロリと睨みつける。

「何で連れてくるんでしゅか」
「おい、デコおんな。ここは俺の家だぞ。お前なんか、寮をクビに・・・」
「まあまあ、お二人とも。
実は、クレヨンの汚れを落としていた海夕音様が、空翼お坊ちゃまに見つかってしまったものですので。お坊ちゃまも気になさってるみたいだから、お連れしたんです」
「・・・ふん、ほんと、ちしゃとの弟とは思えないぐらい空気よめない奴でしゅね」
「お前、さっきから生意気なんだよ。俺は千聖ねーちゃんに会いに来てるんだ、そこどけよ」

こいつ・・・いつも姉ちゃんの彼氏(?)気取りで気に入らない。
℃変態みたいな奇行はないものの、目つきも口も悪すぎるったらありゃしない。こんな奴に惚れてるなんて、俺のサッカー子分 Σ(少Д年;)は考え直した方がいいんじゃないのか?

「まあまあ、萩原さん。ここは私に免じて、ね?」

村上さんがそう言うと、デコ女は少し小首を傾げながら、チラリと横目でねーちゃんのいるドアの方を見た。

「・・・まあ、仕方ないでしゅね。鬼軍曹が言うなら、特別でしゅよ。おいつばしゃ、さっさと入るでしゅ」

このっ、覚えてろよ!俺が当主になった暁には・・・って、そのころにはコイツはいないか。・・・いないよな?この屋敷にへばりついてたりして。恐ろしい女だ。


「ねーちゃん、入るよ」

明るい茶色のドアを開けると、いつものねーちゃんのバニラっぽい匂いが広がった。
その女子って感じの匂いに全然似合わない、二匹目の悪魔が振り向く。

「うーわ、なにしにきたんだかんな」
「それはこっちのセリフだ。マジ、何ではぐれ悪魔超人コンビそろってんだよ・・・」

℃変態はヤンキーみたいにアゴを突き出しながら、ずいっと顔を近づけてきた。

「今女子会やってるんでー、男は出入り禁止だかんな」
「はあ?お前とデコ女が参加してる時点で女子会じゃねーだろ。悪魔の晩餐だろうが」
「はーん?・・・あ、なんだめぐぅも一緒なんだ。何か御用?でも、なんでこいつも・・・」

――くっそー、さっきから村上さんばっかり!ここは俺んちなんだぞ!

「みおんの奴が、手クレヨンで汚してウロウロしてたんだよ。んで、何やってんのか聞いたら、俺がいじめたとかいって泣き出すから。意味わかんねえ」
「・・・あー、で、こっち来ればわかるってめぐぅに言われたってこと?」
「まあ、そういうこと」

あらそうですかーふん、と片眉をあげて鼻で笑う℃変態。
ほんっと、こいつムカつく顔させたら世界一なんじゃねーのか。デコ女は煽ってくるようなことはないが、こっちは絶妙に癇に障る行動を起こしてくる。
こんな性格の奴と、ねーちゃんはよく毎晩一緒に眠れるもんだ。ぼけーっとしてるから、こいつの邪悪さに気が付いていないのかもしれないな。今度俺がちゃんと教えてやらないと。


「ねーちゃんどこだよ。・・・ん、何だよ、お前も手汚れてるな。何やってんだよ、一体」

そういえば、ドアの向こうのデコ女の手も・・・いったいなんの儀式だ?
応接用のでかいテーブルの上には大きな紙が敷いてあって、ところどころにペンやクレヨンがはみ出したような、点や線の名残りがある。


「でっかい絵でも描いてたのか?」
「まあ、そんなとこ」
「つーか、それより、千聖ねーちゃん・・・あれ?ちょっと待てよ?」

ここへ来て、俺は自分が重要なことを忘れていたのに気が付いた。

「今日はねーちゃんと寮の人で、夕飯食って帰るんじゃなかったのか?お前なんでいるんだよ」
「・・・ああ、そういう設定になってたかんな」
「設定だと?」


「まあ、つばさじゃないの!」

その時、奥のクローゼットが開いて、ねーちゃんが姿を現した。
ああ、そうだった。ねーちゃんの部屋はちょっと特殊で、いじけて籠城する時用に、隠し部屋が作られていたんだった。
どうりで部屋にいなかったわけだ。

「フガフガどうしてここにフガフガフガ」
「なんだよ、弟がねーちゃんの部屋に来ちゃいけないのかよ」

相変わらず、何言ってんだかよくわからないかつぜつの悪さ。
しかも、千聖ねーちゃんの顔にも、絵の具みたいなのが引っ付いている。

「千聖は今、手が離せないのよ。あとでつばさの部屋に行くから、少し待っていてちょうだい」
「夕飯の話はどうなったんだよ。帰ってきてるんじゃん」
「あ・・・えと、だから、フガフガフガ」
「なんもねーなら、なんで俺の誕生日・・・」

言いかけて、俺はしまったと口を閉じた。
だが、時すでに遅し。背後まで迫ってきていた、℃変態とデコ女が、プギャーwwwと指をさして笑い出す。


「出、出たーwwwおねえたまに誕生日祝ってもらえなくて号泣奴―www」
「は?泣いてねーよ!うっぜえな」
「ハッ、そんなことで部屋まで押し掛けるなんて、オメー何歳でちゅか?」

こ、この・・・!クラスの奴らとかだったらぶっ飛ばしてやるところだが、相手は(一応生物学上は)女だ。それでなくても、どういう攻撃を仕掛けてくるかもわからない、超危険人物。
なすすべもなく、俺は奴らを睨み返すことしかできない。

「村上さん、こいつら何とかしろよ!命令だ!」
「あっはっはっは」
「笑いごとじゃねーだろ!」
「とにかく、空翼はめ・・・村上さんと一緒にお部屋へ戻りなさい!命令よ!」
「しょーだしょーだ、おにいたまはでいりきんちでしゅ!めーれーぉ!」

いつの間にか戻ってきたみおんと、後ろですました顔してる明日菜ねーちゃんも加わって、“カエレ!カエレ!”コールばりの罵倒。


「あははは、首を洗って待っていてくださいね!とかいってw」
「うわっはなせ!なんだよいったい!」

そしてラスボスのごとく現れた矢島さんに、首根っこをひょいっと掴まれ、軽々と部屋の外にポイーッされてしまった。
結局、みおんの泣いてた理由もわからなかったし、無駄足にも程があるだろ!


「頼むよ、村上さーん・・・理不尽だろ、こんなの」
「あはは。おぼっちゃまも苦難の連続ですねぇ」

泣き言を漏らすも、村上さんはいつもどおり飄々としていて、俺の苦情なんて何も気にしてないようだった。



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