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「ちっさー、ファンデーションとコンシーラーってどっち先に使うんだっけ?」
「舞美さん、眉毛を描くのはアイ・・・ライン?あとで千聖にもやらせてくださいね。」


お前らもういいから自分でやらせろ。

そう言えなくもなかったんだけれど、千聖もみぃたんもまるでお人形遊びに夢中になっている幼稚園児みたいな顔をしていて、私が暴れて楽しみを壊すのが申し訳ないような気持ちになっていた。

―というのは建前で、そもそも女の子でありながらあんなにメイド喫茶に行きたいなんていう漢前美少女アイドルに、私みたいな普通のアイドル(?)がかなうはずがないんだ。
今日はそのことを嫌というほど思い知らされたから、大人しくしているにすぎない。
おまけに本日は、羊の皮を被った何とやらなお嬢様アイドルまで、みぃたんの味方になってしまっている。

(キュフフ・・・・もうどうにでもなぁ~れ★)

大体2人がメイクできないから私が呼ばれたのに、よりによってその当人達が人様の顔に血塗られた薔薇がどうのこうのいう化粧をするつもりなのか。
ボケ×ボケはこれだから・・・。ここに舞ちゃんがいてくれなかったことが悔やまれる。切なくなってきた。

・・・なっきぃ、泣いたらあかん。今日の未送信メールに打ち込むいいネタができたと思えばええやん。

そうやって達観してしまえば、顔の前で聞こえる「うわっこのアイシャドーすごい紫!こりゃヤバいwとかいってw使おうっと!」「クフッ、黒い口紅なんてあるんですね。」という素敵な会話も、まるでBGMのように耳を通り過ぎていく。

「ムフッふふふこれちょースゴい・・・見てちっさー」
みぃたん、鼻息荒い。

「あら?あらあら・・・ばんぎゃさんみたいですね。」
ばん・・・バンギャ?

「待ってて、なっきぃ。あと涙とチョウチョと十字架だけだから。」
え、みぃたんそれはいったい何の話?

「ちっさー、顔!」
「はいっ」
「ふぎゃっ!」

再び私の背後に回った千聖は、柔らかい布のようなもので私に目隠しをした。
「早貴さん、ごめんなさい。少しの間我慢していただけますか?」
いただけますか?と言いながらも私の意見は聞かずに、今度はあごをガッチリ掴んで固定してきた。

「よ~しちっさーいいこだ。そのまま離さないでね。」
「キャッ、キュフフフ!みぃたん何やってんの?くすぐったい!」

顔を細くて柔らかいものが這っているような感触がして、首を振ろうとするけれど、千聖がガッチリホールドしているために動かすことができない。
ちっちゃいくせに、意外なほど力があるからあなどれない。

「我慢、我慢でしゅよーとかいってw」
「キュフ!フフ、フフフフみ、みぃだん・・・なっきぃ本当にヤバ・・・」
くすぐったい感覚は顔を離れて首筋、鎖骨下に移動してきていた。

実は、そこは私のウィークポイント。こそばゆい感覚もピークに達していた。

「ちょっ、なんかなっきぃエロいね。目隠しがワンピョイントだ。」
「ふふ、危険なワンポインテョですわ。」


ああ、もうどうでもいいから早く終わらせてください。


ドSモードになった2人に、謎のくすぐり責めを延々続けられ、意識がかすみ始めた頃に「でーきた!」みぃたんの声が聞こえた。
同時に千聖の手が緩んで、「ごめんなさいね」と言いながら目隠しを取ってくれた。


「おおー!ちょっとなっきぃかっこいいよ!みてよちっさー!」
2人が私の顔を指差して、目を大きく見開いている。

「・・・なっきぃも、見る。」
手鏡を受け取って顔を見てみると、ぶっとい紫のアイラインに蜘蛛の足みたいなつけまつげ、真っ黒な口紅、パウダーで真っ白になった蝋人形が目に映った。
ちょっと気絶しそうに・・・まあ、これは予想の範疇だったから別にいいとしよう。

私の目を引きつけたのは、右目の下に書かれた黒い涙、左の首筋に留まった黒い蝶、胸元に咲いた紅い薔薇だった。

「これ描いてたんだ。」
「なっきぃの持ってきてくれたメイク道具でやったんだよ。アイラインとか使って。どうよ!」


まだ服装が私服のシャツワンピだからかなりキモいことになっているけど、悔しいことにメイクだけ見たらビジュアル系のバンドにいそうな感じでなかなかカッコいい。
舞美ちゃんの絵はとても可愛いから、蝶や薔薇が若干メルヘンタッチになってるのはご愛嬌。

「うんまあ、結構いいんじゃないかな?・・・ありがと。」
私がお礼を言うと、2人はちょっとはにかんだ。

「あ、でねみぃたん、ここまできたらなっきぃにも服を貸して欲しいよぅ。」
「ふっふっふ。そういうと思って、さっきちっさーが選んでくれたんだ。なっきぃの分。着せてあげるね!ちっさー!」
「あっちょっ自分で」


―略―


そんなわけで私が着せられたのは、下は超ミニのフレアスカート・ガーターベルト・網タイツ・ハイヒール、上が鋲だらけのタンクトップ・謎のエンブレムがついた眼帯。
「なっきぃカッケー!NA●Aみたい!」
「早貴さん素敵だわ・・・美人でスタイルがいいから、何でも似合うのね。」

いろいろ間違ってる気がしなくもないけど、おだて上手な2人のせいで不思議と悪い気はしなかった。

「さて、行きますか!長い道のりだったねー」

ブリブリ甘ロリ黒髪美女に、犬耳首輪のフリフリ黒ワンピ美少女に、バンギャ風ブースカ(自虐)一行は、やっと重い腰を上げた。

―コン、コン



「はいー?」

「・・・あ、母さんが夕食のしたくができたから、3人とも降りてらっしゃいって。」

みぃたんのお兄さんの声だ。



「夕飯?」

とっさに全員、みぃたんの部屋の大きな時計に目を向ける。

「・・・・みぃたん。19時半。」

夢中になりすぎていた私たちは、誰一人時間のことなんて気にも留めていなかった。

「もう、この格好で出歩いていい時間じゃなさそうですね・・・。」



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