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僕の細かい疑問は置いてけぼりに、小春ちゃんが優樹ちゃんに質問を続ける。


「まーちゃん、ガキさんのこと知ってるんだ! でも、なんで知ってるの?」
「はい。ダンスクラブで一緒だったからでーす」
「そうなんだ!! あのクラブのメンバーなんだ、まーちゃん!! そうか、最近はもうすっかりメンバーも変わったんだよね!」
「小春さんがいたのは愛ちゃんさんの頃までですよね」
「えっ、小春がいたこと知ってるの?」
「はい。有名です!!」
「そっか! だから小春のこと知ってたんだ! そう、私もそのメンバーだったんだよ。もうずっと前のことだけどね」
「小春さんのことはいろいろ聞いてます。すごいストレスだったって道重さんがry



聞こえてくる話の内容を整理すると、どうやらこの2人にはあるところで意外な繋がりがあったそうだ。
優樹ちゃんはある歴史あるダンスクラブのメンバーで、小春ちゃんも昔そのメンバーだったことがあるらしい。

ふーん。世の中狭いんだな。
全く共通点なんか無さそうなこの2人が、そんなところで交わっていたなんて。

でも、いいな、そういうの。
今の話しだけでも、共通の先輩の名前がちらほら出てきて語り継がれてるっぽいし。なるほど、伝統があるんだな。
世代を越えて繋がっていられるなんて、なんとなく羨ましい。今のこの2人のようにそれを基にして人脈も広がるってもんだ。
カッコいいな、そのダンスクラブとやら。


「まーちゃん入ったときはまだガキさんいたんだねー。あれ?そういえばガキさんの次のリーダーは誰がやってるの?」
「いまはみちしげでーす」
「えー! さゆみさんなんだーw」

「でも順番から行けばそうだよね。さゆみさんがリーダーかー。ちゃんとリーダーらしく出来てる?さゆみさん」
「はい。まーちゃんがダンスを教えてあげてるんですよ。あれ?教えてあげてる?」
「さゆみさんに教えてあげてるの? 小学生メンバーから教わってるんだ、さゆみさんw」
「あひゃー、間違えましたー。みちしげさんがまーちゃんに教えてくれてるでしたー!キャー」


そんな共通の話題で2人は盛り上がっている。
えんえんと2人でしているその話題。その内容。
僕には全く分からないことなんだから、当然その話しにはついていけない。


「さっき言ってたえりぽんっていうのは? 新しく入った子?」
「えりぽんはえりぽんでーす! この人なんなんだろう、って思うぐらい変な先輩ですよ?」
「あははは。そんなことまーちゃんには言われたくないけどね! 面白いなあ、まーちゃんはw」

うん。小春ちゃんからも言われたくないだろうけどね。
僕には何がなにやら全く分からないが、共通の話題で盛り上がったのか2人は会話をどんどん続けていく。


まーちゃんイメージカラーは何色なの?
エメラルドグリーンでーす。
いい色だねー。似合ってるよ。
どぅはオレンジですね。こはるーは何色だったですか?
小春は赤だよ。エースカラー。
自分で言っちゃいましたねウフフフッ。
今は誰が赤をイメージカラーにしてるの?

楽しそうに話しこむ2人。
そんな会話に僕は入り込むことも出来ず、ひとり取り残された気分。
完全に放置プレイだ。

僕がいることも少しは思い出して欲しいな、なんて思いながら、この見るからに空気を読めなさそうな2人を眺めていた。
耳に入ってくる話しを聞き流しながらボケーッとしていると、そんな手持ち無沙汰にしていた僕を優樹ちゃんがじっと見つめてきた。


妙に真顔の優樹ちゃん。

な、なんでしょうか・・・・


そんな表情をすると、また随分と整った顔立ちに見える。
真顔になると、とたんにどこか神秘的な雰囲気が漂って見える美少女。
本当に不思議な感じがする子だな、この子は。

そんな優樹ちゃんが僕に言ってきたこと。


「つぐしさんのこと、どこかで見たことがあります」
「見たことがあるって・・・? 僕のことを?」
「はい!」
「えー? どこかって、いつどこで?」


ちょっと考え込んだ様子の優樹ちゃん。
思い出したように人差し指を立てて、すっきりとした笑顔でそれを話してくれた。


「○月○日、駅前をとても背の高い女の人と歩いてました。たくさん荷物を持たされてましたね。
その3日後の○日。今度は背の低い二つ結びの髪型の人と話していました。その女の人はとても楽しそうだったけど、つぐしさんは顔が引きつってました。フフフ。
それから、○月○日。背の高い女の人に何かとても怒られてました。次の日も怒られてました。その次の日もry

「な、なんでそんなにいろいろ憶えてるの・・・? 僕のこと前から知ってたとか?」
「いいえ。今日初めてお会いしましたけど、思い出したんです。まーちゃん記憶力なまらいいでしょー!ウフフッ」
「・・・・・・・」

記憶力とか、そういう問題か?



あっけに取られている僕の耳に、横から小春ちゃんの話し声が聞こえてきた。


「うん。もうちょっとで終わるから。じゃあ後でさゆみさんのところに行くからね!」

僕と優樹ちゃんがそんな話しをしている間、小春ちゃんはどこかに電話をしていたようだ。
電話を終えると、優樹ちゃんに向き直った小春ちゃん。

「このあと小春はしげさんのところへ行くけど、まーちゃんも一緒に行く?」
「みちしげのところに行くんですか?」
「うん。最近ちょっと会ってなかったから、いろいろ話したいこともあるし。聞きたいことも出来たしね!」
「こはるーが一緒なら、なんか面白そうですねぇ。まーちゃんも行きまーす!」
「よーし、面白くなってきたー! さゆみさんすっごく喜ぶぞー、きっと。私とまーちゃんが一緒なんだもん!!」

このコンビで来られたら平穏を乱されるんだろうなぁ。
それなのに、小春ちゃんの言うようにすっごく喜んだりするのだろうか。その道重さんとやらは。

テンションの高い小春ちゃん。
そんな彼女は僕のことも誘ってくれた。

「さゆみさんのところ、一緒に行く?」
「遠慮しときます」

即答。
さゆみさんとか、そんな僕の知らない人の名前を出されて「行く?」とか言われてもなあ。
小春ちゃんと優樹ちゃんがあれだけ2人で盛り上がってたそのグループのリーダーの人のところでしょ。
その人のところに僕が一緒に行ってもしょうがないじゃないか。どうせ放置プレイの続きが始まるに決まっている。
それに、僕を放置するだけならまだしも、それ以上のことが身に降りかかってきたりしそうな、とてもいやーな予感を感じるんだ。
だって、この小春ちゃんやまーちゃんの親玉の人・・・・ うん、これは回避すべき。その判断にきっと間違いは無い。

だから、小春ちゃんがわざわざ誘ってくれたけど、その誘いは丁重にお断りさせていただいた。


それに、僕にはそれよりもずっと楽しみなことがあるのだから。
このあと僕は、もちろん帰ることになるわけだけど、時間的に学園の下校時にちょうど重なりそうなんだ。
そっちの方が僕の中ではずっと優先順位が高い。
ムフフ、これはだから急いで帰らないと。舞ちゃんに会えるといいな♪



「じゃあ僕はこれで帰ります。まーちゃん今日は来てくれてありがとう。それじゃ、小春ちゃん、まーちゃん、さようなら」
「うん、またねー」
「ハイ。つぐしさん、さようなら。お金の使い過ぎには気をつけて下さーい!ウフフッ」

僕の挨拶に優樹ちゃんが言ってきたこと。
ん、何だって? お金の使い過ぎに注意? なんなんだ、それ?
訳わからん。本当に不思議ちゃんだな、この子は。
でもまぁいいや。そんな心配までしてくれて、ありがとうございます。

小春ちゃんと優樹ちゃんの2人と分かれて、ひとり廊下を歩いていく。
歩きながら、今の出来事を頭の中で反芻する。

優樹ちゃん、か。
かわいい子だったな。そして、いま僕の心はこんなに癒されている。
あんな純真な子は久し振りに見た気がする。見ているだけでこんなに癒されるような女の子がいるなんて。

お嬢様がいるだろって? 舞ちゃんも?
いや、お嬢様や寮生の人たちも、もちろん僕を癒してくれる。
だけど、例えばお嬢様を目の前にするってこと、そこにはとてつもない緊張も伴うわけで。舞ちゃんだって然りだ。
だって、お嬢様や舞ちゃんの存在というのは、もう僕にとってはただ見つめているだけの対象に留まらず、そこにはもっと切実な想いを(以下興奮のため省略)!!!

優樹ちゃんに対して感じるのは、もちろんそれとはちょっと違うわけで。だって、相手はまだ子供ですよ。
そう、優樹ちゃんを見たときに感じるのは、ただただ純粋に癒されることに対する心地よさなんだ。
なんだろう、彼女を見ると心が洗われたように穏かーな気持ちになれるんだ。そんな不思議な魅力を持っている癒し系の女の子。
今も僕はこの子に会えたおかげで、日々受けているストレスで疲弊している心をすっかり癒してもらえた。

日々受けているストレス・・・・ そう、僕は(何故か)やたらストレスの多い毎日を送っている気がするんだ。
単なる高校生だっていうのに、なんなんだ、このストレス量は! どこのブラック企業の社員だよ。おかしいだろ。
そんな僕のストレスが、いまこの子に会ってその笑顔を見たことで不思議なほど消失していたんだ。お陰で僕は今とても心が穏かで落ち着いた気持ちに。


まーちゃん、か・・・・ 本当に不思議な子だ。

うん、やっぱりこの子には是非また会いたいな。そう思ったんだ。
疲弊した僕の心も、この子に会えばきっと癒してくれることだろう。その可愛い笑顔でもって。(それにしても、ホントかわいい・・・・・w)


そんなことを考えつつ歩いている僕。
その姿を見た人がいたら、気持ち悪い奴と思われてしまっただろう、間違いなく。
だって、いま僕は自分では全く自覚が無かったのだが、これ以上ないくらいニヤケた顔で歩いていたのだから。



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