「まぁいい 。それよりも今は・・・・・」
「・・・・・な、なんだよぉ?」
「今はオメーのその女好きの性癖について議論しようじゃないか」
「性癖って・・・・・  いや、その前に女好きとか言うな! 違うだろ!!」
「まーたまたぁw じゃあ具体例をあげてやるかんな。最近のお気に入りはさ、梨沙子ちゃんなんでしょ?かなり気になってるみたいじゃん」
「な、な、な、なんで知ってるんだよ!!」
「あ、やっぱり。自爆するとか本当に分かりやすい男だかんな。単純すぎてこの私としては張り合いがないったら」
「なんだよ!カマをかけてきたのかよ!! ひどいじゃないか・・・僕の純情な男心を弄んで・・・・」

愉快そうな栞菜ちゃん。
いいけどさ。僕はこういう扱いには慣れてるから。泣いてなんかいないし。


「りーちゃんのことも好きになっちゃった?」
「そんなんじゃないよ!! 僕が“好き”って言葉を使うのは舞ちゃんにだけだから!!」
「分かったってw そこはそういうことにしておいてあげるから、そんなムキにならないで、もっとざっくばらんに話そうぜ」


「男ってさ、好きな子がいるのに、他のカワイイ子のことも見ちゃうってのはさ、それはしょうがないことだかんな。うん、そこは分かるから」
「本当によく分かってる感じだよね・・・・ 栞菜ちゃんってさ、本当は女の子じゃないんじゃ・・・・・」
「はーん? なに言ってるんだか。こんな美少女に向かって」

冗談はさておき、いま栞菜ちゃんが言ったことは、まさしく真理をついていると思うんだ。
僕が内心いつも思っていることを彼女は代わりに言ってくれたわけで。


「確かに栞ちゃんの言うとおり、なのかもしれない、真面目な話し。
・・・・・うん、そうなんだよね。僕が一番想ってるのは、もちろん舞ちゃんのことなんだ。でも・・・」
「でも?」
「でも、梨沙子ちゃんって本当にカワイイなあ・・・なんてw」
「ニヤケてるぞ。気持ち悪い顔を見せるなよ」

「そっか。りーちゃん、ね。やっぱり男ってああいう子が好きなんだかんな。だからあのツバサもいっちょまえに・・・・」
「え? なんだって?」
「いや、こっちのこと。でもまぁ分かるよ。りーちゃんは本当にカワイイもんな。お人形さんみたいで」
「だよね!! ウチの学校にはあんなリアルお人形さんみたいな子はいないもん。そんな超絶カワイイ梨沙子ちゃんだよ。近くに来たら、そりゃ見とれちゃうって」
「力説乙。さすがりーちゃん大人気だね。やっぱり男子はああいうふわっふわでふよんふよんの感じのするボディがいいんだかんな(出典=メンカン)」
「・・・・・そういういやらしい言い方はしないでくれる? 僕はあなたのそんなのとは視点が違うから!」
「でも、本当のことだかんな。知ってる? りーちゃんの脇腹とか、それはもう至高の触り心地なんだかんな」
「!!!!」
「ほら興味あるんじゃん。オメー本当に分かり易すぎだよ」


「そんな梨沙子ちゃんはツバサに目を付けられちゃったからなあ・・・」
「ツバサって、お嬢様の弟の、あの空翼くん?」
「そうだよ。あのツバサだよ」
「ムフフ。そうかー。梨沙子ちゃんのことが相変わらず好きなのか。意外と一途なんだな。かわいいじゃないかつばさw」
「そんな微笑ましいもんじゃないかもよ。あいつ、なんでも自分の思い通りに行くと思ってるお坊ちゃんだから。
初めての感情に思いつめたツバサの奴が欲望のままにりーちゃんに・・・・考えるだけでも恐ろしい・・・ヒイィィィ」

あなたのその思考の方がよっぽど恐ろしいよ。


「相手は岡井家の長男。つまり、あの財力がついてるってこと。オメーは顔からして相当なハンディなのに、とてもツバサには勝てねーだろ」
「顔のことはほっとけよ・・・ いや、別に僕は梨沙子ちゃんに対して、つばさくんみたいな感情は抱いてないから。だからまぁ、それは僕には関係の無いことだし」
「そんなのんびりしたこと言ってていいのかな。あいつ結構本気だぞ。梨沙子ちゃんが空翼の餌食になってもいいの?」


餌食、とか言うなよ・・・・・
いちいち表現の下品な人だ。

でも、栞菜ちゃんのチョイスした言葉の響きもあって、僕はなんとなくモヤモヤとした気持ちが湧き上がってきたんだ。
いつだって僕に上から目線のあの偉そうな態度のツバサが梨沙子ちゃんといい関係になったりするかもしれないなんて、それはなんとなく腹立たしくて悔しい気持ちがする。

そう、悔しくなってくるんだ!!
だって、金持ちで美少年のお坊ちゃま。
か、完璧じゃないか!!
その最強の立場であの梨沙子ちゃんに言い寄る(!)なんて、そんなのずるいじゃないかよ!!

まず何といっても千聖お嬢様似のあの外見。あれは反則といってもいいだろ。
見た目はそんなかわいらしい男子中学生なんだ。それって、ひょっとして梨沙子ちゃんの母性本能をくすぐったりするんじゃ・・・・  
その上、超絶お金持ち。
小遣いなんか中学生の分際で凄いことになってるんだろうな。それこそ湯水のような感覚で金を使いまくってるに違いない。

そのように、まず外面を利用して梨沙子ちゃんを油断させておいてから、次にカネの力で・・・


うわあぁぁ・・・!! りーちゃん!!


「あのボンボン・・・・ 金の力で梨沙子ちゃんを無理矢理・・・・ そんなの、絶対に許さない・・・」
「そうだ、そうだ。奴の好き勝手にさせちゃダメだかんな」


「あ、でも、梨沙子ちゃんはしっかりしてるし心配ないような気もするけど。僕らがそんな勝手に先走るのもどうかと・・・」
「分かってないなー。世の中、金を持ってる奴が一番強いんだよ。カネの力にかなうものなんか無いんだから」
「そんな夢のないことを言わないでよ! 男は、ココだから!!!」

そういって、握りこぶしで自分の左胸をたたく。
そんな僕のことを有原さんは半笑いの生ぬる~い表情で見ていた。

「漢だねぇ。カッコいい!! そうだよ、大切なのはハートだよ。金持ちの横暴を阻止できるのは、オメーしかいないかんな!頑張れ!」
「よーし、そんな横暴は僕が絶対阻止してやる。梨沙子ちゃんを守るんだ。軍団の仲間として(僕は舎弟部門だけど)」
「おー、その意気だよ。徹底的に闘うべきだかんな!グヒョヒョヒョ」

(これは面白いw アホな男子を炊きつけて、それを高みの見物と洒落込むことにするかんなww)


「何か言った?」
「いーや、何も? しっかし、りーちゃんはホント人気あるね。でもまぁ、分かるよ。梨沙子ちゃんは確かにカワイイ。この私でもそう思うかんな」

うんうん、と頷く有原さん。

「しっかし、結局りーちゃんのこともそれなりに意識してるってことがよーく分かったかんな」
「だから!それ違う。何度も言わせるなよ。そんなんじゃないんだって。だいたい今のは栞菜ちゃんの誘導尋問に引っかかったようなもんじゃないか!」
「引っかかるってことは、つまりそういうことだかんな。さすが女好き。本当にオメーは手当たり次第なんだな。気になる子の姿を見つけてはすぐに手を出したりして」
「手を出したりなんかしたことないでしょ! 講習帰りの時のなかさきちゃんだって偶然会って話しをしただけだ。それ以外何もしていない!!」
「誰もなっきぃのことなんか言ってないかんなw でも、反論するのはそっちのことなんだねww 
“女好き”に関してはついに否定するのやめたんだw そりゃ、もうバレバレだもんなww」

心の底から愉快そうな表情の有原さん。
この人とこれ以上議論しても時間を無駄にするだけだ。
だから彼女の言うことに、もういちいち真面目に反論するのはやめた。
それにしても、何かにつけては僕を挑発してきたりして、、この℃・・・


「おい、誰に向かって言ってるんだよ。℃変態とか、何だその表現は」
「な、、まだ何も言ったりしてないじゃないですか・・・・」
「まったく・・・ 男ってやつはホント多情なんだから。次は誰に目を付けたりするのかね。愛理かな」
「愛理ちゃんだなんて! そ、そんな恐れ多い・・・ じゃなくて! 違うから!! ぼ、僕はいつだって舞ちゃんしか見ていない!!」

嘘。

もちろん、僕がいつも見ているのは舞ちゃんだ。
でも、お嬢様はじめ寮生の人たちや他の人たちのことも、僕はしっかり視界に捉えてたりしちゃってるんだ。
さっきから栞菜ちゃんに指摘されていることは、実は当たらずといえども遠からずなことで。その自覚はあるんだ。

でも、だって、それは学園の生徒さんたちは本当にカワイイ子が多いんだから・・・・


それでも、それでも僕が一番に想ってるのはもちろん舞ちゃんで・・・・


「本当だって! いつだって僕が見ているのは舞ちゃn
「まぁ、いい」

興奮して抗議する僕のセリフを遮るようにして、真顔を向けてきた有原さん。
それはドキッとするほどの美人顔だった。思わず息を飲んだ。

でも、急にそんな顔で見られると、ちょっと怖い。


「そんなことはどうでもいいんだよ。ちょっと遊びすぎた。ようやく本題に入るとするかんな」
「本題?」
「そう、本題はここからなんだかんな」


この狭い路地裏、栞菜ちゃんが声をひそめて僕に話しかけてくる。
そんな彼女が言ったことは、僕の気持ちを180度ひっくり返すぐらいの衝撃的な言葉だった。


「オメーちょっと聞くけど、萩原の写真欲しくない?」



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最終更新:2014年02月01日 21:36