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岡井さんの着替え方って、独特。
体育の前の休み時間、更衣室でジャージに着替え終えたその姿を見ながら、私はしみじみそんなことを考えた。

女子校あるあるみたいなお話なんだけど、着替えって結構個性が出る。
主流は、制服の上からジャージを着こんで、中でもそもそとシャツを脱ぐパターン(私はこれ)
特に気にせず、ガバッと脱いでガバッと着こむ人たちもいる(これは運動部の子たちだね)
超少数派になると、トイレにこもっていたかと思ったら、ジャージに着替えて出てくるという人たちもいる(うちの団長。ちなみに、熊井ちゃんが上からのぞいて軍団存続の危機を迎えたことも)

ところが、岡井さんと来たら、このどれにも該当しない。・・・いや、正確には、誰も着替えている所をみたことがないのだ。
これは、トイレ着替えグループとは意味が違う。
一緒にロッカーに行って、しゃべりながら着替え始めて、いつのまにか完了している。
そう、いつも、本当にほんの一瞬。
私が目を離した数秒間の間に、岡井さんの小さな体は、紺色のジャージにちょこんと包まれている。キャラがキャラだけに、それについて追及することは憚られるし・・・ニコニコと笑っている顔を見たら、理由のわからない罪悪感を覚えてしまう。


「おっ、梨沙子のブラ可愛い!」
「あー、これはね、隣の駅のショッピングモールで・・・」

今日も今日とて、少し他の子としゃべってる間に、岡井さんはいつの間にかとっくに着替えを終えていた。いつのまに・・・。


「今度一緒に買いに行こうよー」
「えー、いいけどぉ。私、ペンライトも買いに行くよ?あと、うちわの台紙とハッピとぉ」
「あっ、やっぱいいわ」
「ちょっと!何そのリアクション!」


話にのってこないかな?と岡井さんの方をチラ見するけれど、いつもどおりボーッとした顔で、私たちのおしゃべりを聞いているのかいないのかよくわからない。

343 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2013/05/24(金) 17:18:11
「岡井さんは、ブラとかどこで買ってるの?」

試しに話を振ってみると、岡井さんは目をぱちくりさせて、恥ずかしそうにほっぺたを両手で押さえた。

「えと・・・し、下着・・・」

ちょっと、梨沙子!なんて咎めるような声で言われるけど、別にいいじゃーん。普通の会話じゃーん。

「ねえねえ、どうなのよー」

大げさなぐらい、顔を真っ赤にして恥ずかしがってくれるから、ついイタズラ心が疼いてしまう。

「あの・・・下着、は、母のお友達に、ランジェリーデザイナーの方がいて・・・昔、から・・・」

そう言って教えて貰ったデザイナーさんの名前は、もちろん聞いたこともない何とかピエールみたいなフランス人ぽい響きで、いかにもセレブ専門といった感じがした。
新しいのがほしくなると、その人が経営している専門店に行って、採寸やらフィッティングやらやってもらうらしい。

「ひえ~・・・○○・・・」

気の早い友達が、スマホでブランド名を検索して、感嘆の声を上げる。・・・ま、岡井さんだもん。セレブなんだから、それなりの付けてたって・・・

「じゅ、じゅうまんえん・・・」

――はい、恐れ入りました!なにそれ怖い!


「どどど、どんな装飾にしたら、そんな値段になるわけ?」
「あ、あの・・・金額のことは、私は、えと・・・」
「ていうか、いっつも岡井さん、どうやって着替えてるの?いつも見れないんだけど。・・・いや、見たいわけじゃないんだよ?でもぉ」

私からの矢継ぎ早の質問に、口ぽかーん状態の岡井さん。
やめなよー、とか言いつつ、クラスのみんなは興味津々と言った感じに、私と岡井さんのやりとりを観察している。

「・・・あの、着替え・・・そ、そんなに、変わっているかしら?」

しばらくして、困惑気味の岡井さんが、深い茶色の瞳を私に向けてきた。

「変わってるっていうかー、どうやってるんだろう?って思って」
「まあ…特殊なことをしているつもりはないのだけれど・・・」
「私はさー、ジャージ着るじゃん?手突っ込むじゃん?それでもぞもぞと」

空中でジェスチャーをやってみせると、その手の動きに合わせて、岡井さんの目がくるくると動く。わんちゃんみたいだ。

「それは、なんだか難しいわね。千聖は、めぐ・・・メイドから、効率の良い方法を聞いて、そうしているのだけれど」


そういうと、岡井さんは突然ジャージに手を掛け、おもむろにガバッとまくり上げた。

「お、岡井さん!?」
「その・・・ここをこうして、こうなって」

ちょ、あんたそんな大胆な・・・あ、てか本当に高そうな下着・・・胸おっき・・・

あまりにも情報量が多すぎるその光景に、私の頭はパンク寸前のあばばば状態。



「ギュフーーーーーッ!!!!」


そして、この聞きなれた金切声。

不幸にも、そんな光景を目の当たりにしてしまったのは、おなじみ風紀いいんちょーさん。
今日は1コ上の学年と、合同体育なんだった・・・。ぱっちり丸くて可愛いお目目が、飛び出さんばかりに見開かれて、いんちょーさんのショックの度合いを物語っている。


「おじょじょ、じょじょじょ」
「あら、ごきげんよう、なっきぃ」

一体、どこをどうしたらそうなるのか、袖口のところから小さな頭をぴょこりと出した岡井さんが、目を三日月にしてにっこり笑った。



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