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入学式が終わる。
今日の行事はこれだけなんだ。

あとは帰るだけ。
学内を熊井ちゃんとのんびり歩いてゆく。

それにしても改めて思う。
こんな美人さんを隣りにしてキャンパスを歩くことになるなんて。
よもや僕ごときにそんな日がやってくるとは思ってもいなかった。分不相応に幸せなこと、なのかな。

でも、その美人さんというのは熊井ちゃんなんだ。
この学ランにマント姿で入学式に臨むような人。一緒に歩いていても感じるのは、ただ緊張感のみ・・・

だいたいですね、2人で連れ立って歩くといっても、そこは恋人同士で寄り添って歩くとか、そういうことでは無い訳で。
そう、だって僕と彼女は決して「同格」という訳では無いのだ。僕の立場は、この大きな熊さんの子分ry
だから、僕の立ち位置というのは正確には、彼女の隣りではなくて、彼女の半歩後ろを静々とry


「本当に広いキャンパスだねー」
「うん。これだけの施設を揃えてるキャンパスだからね。山の中だから校外に何も無い分、学内で何でもまかなえるようにしてあるんでしょ」
「明日までには、何がどこにあるのか学内の隅々まで調べておいて」

はいはい。
そのあたりはちゃんと把握しておかないと、熊井ちゃんの要望にもすぐに対応できないからな。
自分のためでもあるんだから、ちゃんと調べておきますよ、完璧にね。

「分かった。今日中に把握しておくよ」
「よし」

僕の返答に、熊井ちゃんが満足そうに頷く。
僕もすっかり自分の役回りを分かるようになったから、彼女の言うことに対しての理解も早くなった。

桜広場まで戻ってくると、熊井ちゃんが僕に言った。

「ちょっと桜を見ていこうか」
「うん」

熊井ちゃんでも、この桜を見てなにか感じるところがあったのかな。


満開の桜の中をゆっくりと歩いていく。

現れた熊井ちゃんの姿に、桜の木の下にシートを敷いて花見の宴会をしている人達の手が止まる。
そして一斉にこちらに顔を向けてきた。

初日にして、彼女の行くところ早くもこの反応なんだな。
そして僕の耳には、そんな人たちのいろいろな声が入ってきた。


(この子じゃね? あの噂になってる新入生)
(あぁ、この子だ。この身長に学ラン、間違いない)
(おいおい、この子かよ。すげーかわいいじゃん!)
(ホントにデカイな。でも、デカいのにカワイイ)
(デカカワイイw)


なーんか、ひそひそとした声がどこからともなく聞こえてくる。
そうか、熊井ちゃんの知名度は初登校からのほんの数時間で、もうそんなに高まっているのか。


ただ、その後に続く声も僕は決して聞き逃さなかった。
熊井ちゃんのことを語る声とは打って変わって、どこか見下したようなところを感じるそれらの声。


(でも、この美人の子が何でこんなのと2人なんだ?)
(この男、分不相応にも程があるw)
(ここまで不釣合いな男女も珍しいだろw)


だから、こんなのゆうな! なんだ、僕に対するその失笑は。
ふん、別にいいけどさ。その通りだと自分でも思うし。



そんな僕の心の平穏が乱れそうになったとき、熊井ちゃんの声で我に返ることができた。


「そういえば梨沙子の誕生パーティーの件だけど、ちゃんと進められてる?」
「え? うん、大丈夫。サプライズゲストの雅さんにもちゃんと来てもらう段取りはついてるから。
桃子さんの企画通り、そこでBuono!のシークレットライブをやるためにミニステージのあるお店も探し出して、もう押さえてあるし」
「よし! 楽しみだねー」


本当に楽しみなんだ。
梨沙子ちゃんのお祝いが出来るうえに、しかもなんとBuono!の皆さんが来てくれるんだ。
つまり、愛理ちゃんにも会えるんだよ。ムフフフ。

そのことを考え一気に高まった僕とは対照的に、落ち着いた声で熊井ちゃんが続ける。

「梨沙子はね、桜満開の頃に生まれたんだって」

こぼれそうなほどの満開の桜を見上げながら、しみじみとした表情の熊井ちゃん。
そんな彼女が急にこんなことを言い出した。


「そうだ! 梨沙子にもこの見事な桜を見せてやろう! 今から梨沙子を呼んでさ、お花見をするよ!!」


ナイス思いつきです! 熊井さん!!
それはとてもいい考え。素晴らしすぎる。何と言っても、りーちゃんとお花見ですよ!
この桜の下で梨沙子ちゃんとおしゃべり出来るのかー。考えるだけで表情が緩んでくる。


「いいね!! 素晴らしい考えだよ、熊井ちゃん!!」


さっそく熊井ちゃんが梨沙子ちゃんに電話をかける。



だが残念なことに、梨沙子ちゃんがその電話に出ることはなかったんだorz


「もーっ!! 梨沙子のやつ何やってんのかな。せっかくうちが電話したのに出ないなんてさー!」


僕としても非常に残念です。
あぁ。今から梨沙子ちゃんと会えると期待が大きかったぶん、失望も大きい・・・・

自分の思いつきが実現せず、プンプンしている熊井ちゃん。
こんなことでご機嫌を損なわれては大変だ。
慌ててフォローする。

「梨沙子ちゃんも忙しいんだろうし、彼女の都合ってものがあるんだから、まぁしょうがないよ」
「せっかくこれだけの桜なんだからさー、お花見したかったよねー」
「お花見はしようよ!今から。せっかくだからさ!」
「えー!? うちら2人でお花見?」

思わず思いつきで口にしてしまったが、言ったあとでちょっと気恥ずかしくなった。

「い、いいじゃん、別に」

僕のした提案に、ちょっと思案顔になっていた熊井ちゃん。
そうかと思うと急に明るい表情になって大きな声を上げた。


「そうだ!!」


何かをひらめいたようだ。
彼女のピコーンには今までも幾度となく振り回されてきた。
だから、反射的に嫌な予感に襲われて身構えたのだが、その直後に彼女が言ったことは、いい意味でそれを裏切るセリフだった。


「それならさ、なかさきちゃんを呼ぼう!!」



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