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久し振りに聞く、その甲高い声。


小春ちゃん。


「小春!?」
「やっぱり熊井ちゃんだー!!」


「まぁ見間違えるわけないよね。その身長だもん!遠くからでもすっごく目立ってたよ!!」


いきなり熊井ちゃんの身長に言及!?
(そして僕については一言の言及も無し・・)

小春ちゃん、一言目から爆弾を落とすところは相変わらずだな。
熊井ちゃんを前にしても自分のペースを崩さない人なんて、そんなのができるのは小春ちゃんぐらいのものだよ。
あ、あと舞美さんがいるか。

久し振りに会う小春ちゃん。
ショートカットにしたんだ。とてもいい・・


「熊井ちゃん、ウチの大学に来たんだ!ひょっとして昨日入学式だった?」
「小春もこの大学だったんだ」
「うん、そうだよ。熊井ちゃんも一緒だなんて嬉しいな」
「学部はどこなの?」
「わたしは法学部だよ」
「うちらと同じ大学とかw 小春って、もっと頭いいのかと思ってたけど意外と大したことないんだねー、あははは」

熊井ちゃん・・・ うちの大学は法学部だけは別格なんだよ。
そんなところに、小春ちゃんはたった二ヶ月だけ受験勉強をして入っちゃったんだ。
そんな一年ちょっと前のことを思い出す。
受験の二ヶ月前になってから、「さゆみさん、小春やっぱり大学に進むことにしたよーw」って軽い口調で宣言した小春ちゃん。
そして、見事に合格してしまったんだ。相変わらずのミラクルっぷり。
ある意味、天才だからね。小春ちゃんは。


「知ってたの? 小春がここの大学だって」
「そりゃまぁ、もちろん知ってたよ」
「そんな大事なことは先に言ってよねー」
「ご、ごめん。でも、そんなに大事なことだった?」
「そりゃそうだよ。小春が同じ大学にいるって分かれば、何かと助かることもあるでしょ?」

助かることもあるって、どういう意味なんだろう。
まさか、小春ちゃんさえも何かに使おうとでも考えているんだろうか、この人は。

先輩を使おうなんて失礼だろ!って言いたいところだけど、それよりも、いま僕には恐ろしい思いしか浮かんでこなかった。
だって相手は あ の 小春ちゃんなんだ。
熊井ちゃんと小春ちゃんが関わったら、いったいどんな化学反応を起こしたりするのか。
お、恐ろしすぎるだろ!!

それがどれだけ危険なことを招きかねない行為なのか、考えるだけでも僕は戦慄を憶える。
僕がそんな恐怖感で一杯になっていることなんか全く気付いてもいない目の前のふたり。

「小春は、法学部だって言ってたね」
「そうだよ。法学部の政治学科」
「小春ちゃん、専攻は政治なんだ」
「どこでも良かったんだけど、面白そうだなと思って政治学科にしたの」
「ひょっとして小春ちゃん、政治家にでもなるつもりなのw」
「うん」


そうなのか・・・

冗談で聞いたことに真顔で頷かれちゃったよ。
小春ちゃん、まさか本気でそれ思ってるのかな。この人の考えてることも相変わらず凡人の僕には理解できない。
いつの日か小春ちゃんがこの国を動かす日が来るっていうのだろうか・・・


「日本を支配しようっていう気なの? そんなの小春の好きにはさせないからね。このもぉ軍団がry

・・・お願いだから、熊井ちゃんは黙っててください。


「熊井ちゃんたちは、ここで何をやってるの?」
「ご覧の通り、新入生の勧誘・・・」

僕のその答えを聞いた小春ちゃんが噴き出す。

「勧誘って、あなた達が新入生でしょー? 相変わらず熊井ちゃんは面白いなあw」

「で、入ってくれる人はいた?」
「それが、まだ一人も・・・ もぉ軍団は一般人お断りなんだって。そんなこと言ってるんだから入ってくれる人なんかいるわけないよ」
「一般人お断りなの? じゃあどういう人を勧誘してるの?」

その質問、さっき熊井ちゃんが言ってたことを真面目に答える必要があるんだろうか。
僕が悩んでいる横で、小春ちゃんを目の前にした熊井ちゃんが言う。

「ほら、この大学にいたじゃない。宇宙人」

小春ちゃんを指しながら、そんなこと僕に話しを振るなよ。
確かに、目の前のこの人は熊井ちゃんの言った通りかもしれないけど・・


「宇宙人?」
「小春は何言ってるのか話しがさっぱりわからないからさー」
「そうかなぁ?」


うん。それは熊井ちゃんの言ったこともあながち間違ってるとも思えない。
小春ちゃんの突き抜け具合、あれはまた凄いものがあるから。
空気なんかハナから読まずに、周りを吹っ飛ばす爆弾発言を明るく言い放つような久住先輩の破天荒さ。

そんな小春ちゃんがニコニコ顔で話しを続ける。


「でも、熊井ちゃんも相当だよねー。いつも人の話しを全然聞いてないんだからw」
「こ、小春ちゃん!!」

小春ちゃんの言ったことも、それまたその通りなんだけど、そんなこと熊井ちゃんにズバリ言えるのはこの人だけだ・・・
(あ、あと舞美さんがいるか)
でも、そういう刺激はしないで!お願いだから!!


この2人のやりとり、相変わらず怖すぎる。
こんな美人さん2人のやりとりなのに、どうして僕はその光景を楽しむことが出来ないんだろう。
今の僕はただただ緊張感の中で、神経を消耗させられて。


そんな話しの流れで、熊井ちゃんが小春ちゃんに聞いた。


「小春、もぉ軍団に入らない? 宇宙人の小春なら入れてあげてもいいよ」


小春ちゃんを勧誘した!! しかも凄い上から目線で。

この最強軍団に更に強力な人材が加入しちゃうのか・・・
小春ちゃん。この人を? まさに即戦力。
いったい僕はどうなってしまうのだろう。考えるだけでも恐ろしい・・・


だが、僕の心配は杞憂に終わった。
熊井ちゃんの誘いに、小春ちゃんはこう答えたから。

「面白そうだよねー、もぉ軍団。でもね、小春は学部のゼミの方が忙しいんだ。だから残念だけど」
「そっか、それじゃしょうがない」


意外とあっさりと引き下がった熊井ちゃんに、今度は小春ちゃんが質問する。


「でも、本当にもぉ軍団って名称で活動してるんだね。その名前で大学にも届出をしてるの?」
「届出? 熊井ちゃん、そんなの提出したの?」
「してないよー」

そりゃそうでしょうね。

「当局に届出とか、笑止。うちらもぉ軍団は闇の組織なんだから、そんなものには縛られないんだぜ!」

高笑いする自称リーダー。
だが、次に小春ちゃんの言ったことに彼女のその態度も変わることになる。


「でも、大学の公認サークルになれば予算もつくから、新設サークルの申請をしてみたらいいんじゃない?」
「予算!!」

熊井ちゃんの目の色が変わった。
真顔で僕に向き直る。

「すぐにその申請の届け出をして! 必要な書類を全部用意して、ちゃんと審査に通るような書類をね!!」

鼻息も荒く僕に命令を下してくる大きな熊さん、
はいはい。それ全部僕がやるんだ。まぁ、当然だよね。
また面倒くさい仕事がひとつ増えてしまった。

「そっかー。熊井ちゃんも同じ大学か。それならこれからもちょくちょく会えそうだね!楽しみだなー」
「うちに会いたいときは学部の掲示板に「XYZ」って書き込んで。そうすればきっと会えるぜ」
「熊井ちゃんはどこにいても目立つからねーw」

交わってるのかどうなのかよく分からない2人の会話。


「まぁ頑張ってね! もぉ軍団のこと、応援してるよ!」

そう言って去っていく小春ちゃん。
この人はまた仕草の一つ一つがいちいち絵になっていて。その歩いていく後ろ姿さえもカッコイイな。
そうやって見とれていた僕の横で、小春ちゃんの後ろ姿をじっと見つめる熊井ちゃんが呟くように言った。

「小春はうちらにとって危険な存在になるかもね」
「え? どういうこと?」
「だって、どうやら日本を我が物にしようと企んでるみたいでしょ。そのためにゼミまで参加してさ。ってことは、うちらのライバルなんじゃない?」

・・・・・

言ってる意味が全くわからない。


このあと、夕方過ぎまで勧誘は続いたのだが、もちろん新入会員が入ることは無かった。
このようにして現状維持の態勢のまま、もぉ軍団はこの大学で活動していくことになったようだ。
どういう活動をするのかは、僕には分からないけれど。
この隣りにいる人の頭の中では、今どんな考えが思い巡らされているのやら。
彼女のその自信満々の表情を見ると、僕は大いなる不安とほんの少しの期待が混じった複雑な気持ちで一杯になるのだった。



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