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“昼休みは学食の席を取っておいてね”

大学に入っても僕は席取り係の役を当たり前のように続けさせられている。
熊井ちゃんに促されて学食の席取りに向うため教室を出ようとしたとき、クラスの女子からクスクス笑われてることに気付いたんだ。
なんか彼女たち、手に持ってるスマホの画面を指差しあいながら笑ってる・・・
また何かネットに転がってた面白画像でも見つけたりしたんだろうけど、僕を見て笑ってるのは何故だろう。まったく・・何だって言うんだ。

なにか今日は心が乱されることばかりが続く・・・・ 今日はそういう日なのだろうか。
ってことは、ひょっとしたらこのあともまだ・・・


学食に着き、いつもと同じ場所の窓際のテーブルを確保(ここじゃないと自称リーダーの機嫌が悪くなるよ)。
無事に席を確保できたことでホッと一息つく。ようやく落ち着くことができた思いだ。
熊井ちゃんが来るまでの少しのあいだリラックスさせてもらおう。

そうやって一人で物思いにふけりながらボーッとしていると、僕が陣取っているテーブルの対面の席、その椅子を引いて座ってきた人がいた。
えっ? いくら混んでるとはいえ、一言の断りも無しに相席する気かよ。おいおい・・・
もぉ軍団のショバに座ろうだなんて、いい度胸してるな・・・ ここのしきたりってものを知らない新参か? 
でも、それを許したりしたら自称リーダーから僕が叱責されることになってしまうだろ。おいちょっとあなた!

目の前に座った人。
それは思いがけない人だった。

「よっ、少年!」
「も、桃子さん!?」
「ウフッ。来ちゃった♪」

軍団長、降臨。
(なるほど、確かに今日は心が乱されることが続く一日のようだと今あらためて痛切に実感・・・)

濃淡ピンクのチェック柄もまばゆいその格好。トレードマークの、その特異な二つ縛りの黒髪。
どちらかというと地味目なこの大学の学生の中で、明らかに異色と言うか浮きまくりの桃子さん。うん、さすがです。

そんな桃子さんが、僕に対してとっても楽しそうな視線を向けてくる。そう、いつものようにね。
この人のことだ。僕が大学生になってもおもちゃ扱いは変わらないってことなんだろう。いいんですけどね、別に・・・

「ウフフフ。大学生になっても席取りの任務は変わらないんだ。得意中の得意技だもんね、席取りw」
「・・・それぐらいしか取り得もないですから、僕は。。。」
「あれ? なに?暗いじゃない。昨日はあんなに楽しんでたみたいだったのに」
「いえ、ちょっと・・・ ってか、桃子さんどうしてうちの大学に? それに、よくここが分かりましたね」 
「もぉ軍団の部室が出来たって聞いたから遊びに来たの。この時間なら学食の席取りしてるはずだからって、くまいちょーから聞いてたからね。すぐ分かったよw」


僕らの大学にやってきた軍団長。
今日は部室の視察という名目で遊びにきたらしい。
遊びに来たって・・・ ひょっとしてこの人結構ヒマなのかな。


でも、桃子さんが来てくれたこと、僕は嬉しかったんだ。
いつも明るい桃子さん。その姿はいつだって見る人の気分をも明るくしてくれる。
今も、現れた桃子さんの姿を見て、落ち込みきっていた気持ちがちょっと上向いた。

それに、昨日は心残りがあったんだ。遅れて行ったそのライブが終わったあとも軍団長とは話すことが出来なかったんだから。
だから、僕はいま桃子さんと会えたことが結構嬉しかった。

「そうですか! それでうちの大学に!」
「うん。でもそれよりさ、お昼ごはんにしようよ。くまいちょーは来れないみたいだけど」
「えっ?来れないって・・・ ついさっき、席取りしておくように言ってたくせに。何をしてるんだろ。聞いてますか?」
「さっきメールしたら今ちょっと忙しいから先に食べてて!だって。で、後で部室で会おうね、ってそれだけ言ってたんだけど」
「そんな急に忙しくなったって、熊井ちゃん、何をし始めたんでしょう・・・・?」
「さあ? でもきっと楽しいことじゃない?ウフフフ」

桃子さんにとっては楽しいことでも、それが僕にとっても楽しいことだとは限らないわけで。


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その頃、教室ではクラスメート全員を前に壇上から楽しそうに長説明を始めた熊井ちゃん。

川*^∇^)||<どうしてあいつが暗くなっているのか、説明しましょう!!(ドヤ顔)

川*^∇^)||<あいつがどうして暗くなってるのかというとー、どうせまた舞ちゃんが振り向いてくれなかったとか言っていじけてるだけでーw
        なんか暗くなってたけど、まぁいつものことだから何も心配しなくていいからねー!
        あまり構うと付け上がるから決して甘やかしたりしちゃダメだよ。
        でー、舞ちゃんっていうのはー、あいつがもう何年もカタオモイの学園生の子です!
初めて見たときに一目惚れしちゃったんだけど、そのときの舞ちゃんはまだ中学2年生!
        あいつ、いくら若い女の子が好きだからって、ちゅ、中学生wプフォ
        それ以来、舞ちゃんにずっと付きまとっててー、勢い余って無謀にも告白したんだけどもちろん見事に玉砕しちゃったのねw
        キッパリと振られたのにそれでもあきらめきれなくて、今でも舞ちゃんのこと追い掛け回してるの。凄い粘着だよねー。
        で、今朝もいつものように登校する舞ちゃんを待ち伏せしてたんだろうけど、案の定まったく相手にしてもらえなかったんだよきっと。
        それであんなに暗くなっちゃったってわけw
        ハイ、このプロジェクターに注目! 舞ちゃんっていうのはこの子です!! http://chisamai.jp/img/cm_09318.jpg (おぉっ!!)
         あれ?間違えたw こっち!!この子が舞ちゃんです!! http://chisamai.jp/img/cm_09197.jpg
        (「こりゃ無理だろw」「身の程知らず過ぎるww」という声が教室中からあがる)

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カフェテリア方式の学食。プレートを持って列に並ぶ。
混雑しているこの時間。いつもの光景の中に、今はそこに桃子さんが並んでいる。すごい違和感だ。
実にシュールな光景だが、周りの人は見て見ぬ振りをしてスルーしている様子。これ、熊井ちゃんを見たときの周りの反応と全く同じだ。
さすがもぉ軍団の偉い人たち。まとっているオーラがケタ違いだよ・・・


「立派な学食だねー。この建物ぜんぶ学食なんでしょ」
「まぁ、学食しか食べるところもないですから。ご覧の通りキャンパスは山の中ですからね」
「へー、メニューも豊富なんだね。少年、何にする?」
「そうですね、僕はからあげ定食にしようかな」
「じゃあ、もぉはこの超熟成牛ステーキカレーってのにするね、ごちそう様♪」
「・・・・僕がおごるんですか?」
「当たり前じゃない。ウフッ♥」

いつから当たり前になったんだろう。

もぉ軍団に関するカネの流れに関しては一度追求しようと思いつつもう何年も経っている気がする。
僕がバイトしてもバイトしても、その度に何か一方的に吸い上げられてるように感じること、それだって気のせいではないよね。
まぁそのあたり、指摘するのは何かアンタッチャブルなことに触れるようで、そんな勇気は僕にはとても無いんだけど。
もしそんなことしたら、あの大きな熊さんの逆鱗にでも触れて消さr・・・・

そういえば先日の誕生パーティーの店代のことだって、ちょっと納得いかないんですよね。
なんで開催にかかった経費を僕が一人で丸かぶりするのか。おかしいでしょ。
そのときのライブUSBとDVDであんなに儲けてるんだ(熊井ちゃんからその額を聞いて僕は腰を抜かした)。
だったら、儲けてる某事務所社員さん、あの店代ぐらいその莫大な売り上げの中から払ってくれてm・・・
僕にはいろいろと腑に落ちない点があるが、その辺のことにあまり頭を突っ込むことはしない方がいいのかも。
何かアンタッチャブルなことに触れるようで(以下同文

あぁ、そのライブDVDの件も疑問なのだ。
熊井ちゃんは一人ホクホク顔で高笑いしていたけれど、あの映像の著作権(?)というものはBuono!の皆さんにあるんじゃないのか?
DVD販売における収益の分配というかその辺のやりとりはどうなってるんだろう・・・
でもまぁ、それは僕が考えることじゃない。もぉ軍団とBuono!の皆さんの間の問題だ。僕には関係の無いこと。
だが、いま目の前にいる笑顔の桃子さんを見ていると、そのことが僕はとても心配になるのだ。
本当に僕は無関係でいられるのだろうか・・・
熊井ちゃん!お願いだから、雅さんや愛理ちゃんには絶対に迷惑をかけないでね。そして桃子さんにも(←今はここを特に)!


「さあ食べよー!」

おいしそうに食べる桃子さん。見るからに美味しそうなステーキを一口食べては目を細めたりして。
その姿に、カワイイ・・なんてちょっと思ったが、そんなこと思ったこと僕は決しておくびにも出さない。

一方からあげに箸をつけた僕へ、軍団長が声を掛けてくる。
それは予想外の言葉だった。

「梨沙子の誕生パーティーはいろいろとお疲れさま」

軍団長の口から出たその信じられない単語に、僕は箸を持ったまま思わず固まってしまった。

「ア、アリガトウゴザイマス・・」
「梨沙子、喜んでたよー、すっごく」
「それは良かったです。桃子さんの企画、大成功だったんですね。さすが軍団長」
「それにしても、突然みやが現れたときの梨沙子のキモさったら(ry」
「いい企画でしたよね。・・・そうだ!こうやって梨沙子ちゃんの誕生パーティーも成功したことだし、あの!来週は愛理ちゃんの誕生日だし、その日も誕生パーティーしましょうよ」
「却下」

ぐんだんちょー即答。
直前からの一転してその不機嫌そうな表情。

「もぉのときはやんなかったくせにさぁ」

くちびるを尖らす桃子さん。
あ、これまたちょっとカワイイ・・・・


しかし、桃子さんの誕生日には何もしなかったこと、まだ根に持ってるのか。
だって、ちょうどその時期は毎年忙しいからどうしても忘れてしまu
いやいや、そうじゃなくて僕は今年は受験もあったわけですし、しょうがなかったんですよ。
受験が終わったらもう授業も無いからそれからはずっとバイトに精を出してたし。
それに、そういうことは僕にじゃなくて、発言権のある軍団の上の方の人に言ってほしいんですよね。


「それにしても、さすがのライブでしたね。さすがBuono!の皆さん。梨沙子ちゃんも楽しんでたみたいで」
「梨沙子ねw あの子、みやのコールとか声デカすぎだからw まぁいつものことだけど、あの美声を惜しげもなく使ってさーw
で、少年はどうだったの?楽しめた?」
「はい! 最後の初恋サイダーしか僕は見れなかったんですけど、感動しました!!」
「少年がピンクのサイリウム振ってくれてたから嬉しかったよ。でも、少年、推し変したの?」

いや、あれは緑サイを忘れたから、たまたまそこに誰も手をつけずに放置されてたピンクサイをこれでいいかとしょうがなく・・・

「いえ、推し変とかそういうわけじゃないですけど、軍団長を応援するのは出来る団員の僕としては当然の行為(震え声)」
「そっか。もぉの魅力に、ついに少年もピンクサイを持つようになったんだね。分かるよ、その気持ち♥」

ニッコニコ顔の桃子さん。とても楽しそう。

「もぉのファンがまた一人増えちゃったか~。もぉがかわいすぎて、ゆるしてにゃん♪」

いや、だから、それ違u

「ピンク色のTシャツ、少年にも似合うと思うよ。次のライブでは是非着てきてね」
「いや、あのイラスト入りのピンク色のTシャツ、どこで売ってるのかも知らないですから」

あの独特のTシャツを着こなせるようになる為には、越えなければならない一線があるような気がする。
そして、僕はまだそこまでの覚悟というものを持ち得ていない。


「さて、そろそろ行こうか」
「えっ? 行くってどこにですか?」
「部室へだよ、我がもぉ軍団の。それにしても、くまいちょーすごいじゃない! もう学内に部室を確保しちゃったなんて」
「確保っていうか、強奪といった方が適切な行為でしたけどね」
「あはははw やっぱりそうなんだw」
「すごいですよ、熊井ちゃんの行動力は。どこからあのパワーが出てきてるんですかね。こうと決めたら猪突猛進で」
「くまいちょーは気が早いからねー。少年ものんびりとしてちゃダメでしょ。ほら、今だってそう。さっさと行動する!」
「ひとりで食事できるときぐらいのんびりとさせてくださいよ。ただでさえ引っ張りまわされてるんだから」
「なに言ってンの。さぁ早く行くよっ」

僕の言ったことはまともに聞き入れてはくれないという、もぉ軍団の人特有の僕に対するその対応。
ましてやこの人は軍団長なのだ。
若干あきらめが入った表情になっていたかもしれない僕に、桃子さんが殊更にこやかに告げる。

「じゃあ、少年に案内してもらおっかな」



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