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そう言って、桃子さんが僕の横に椅子を寄せてくる。
黙りこんでしまった僕の顔を覗き込んでくる妙に真顔の桃子さん。
か、顔、、、、ち、ち、近いです・・・・・

その言葉の続き。僕は改めて脳内で思い浮かんでいたその言葉を思い返す。

“所詮はオトコ・オンナ 大胆に抱きしめ合う方が 全て納得できる”

抱きしめ合うしか・・・
うん。男女間のことなんだ。究極的にはそれが答えなんだろう。
優しさってのは肌で感じるものなんだ、きっと。

“抱きしめ合うから 生きていける”

そうだよ! それしか答えが浮かばない。
そのために、男子たる僕が勇気を持って自分から一歩踏み出さないといけないんだ。
僕がその勇気を持っているのかどうか、舞ちゃんはそれを見極めようとしているのかも。

ということは・・・・

ひょっとして、舞ちゃんはずっと待っているんじゃないだろうか・・・・
舞ちゃんももう高校2年生。もうコドモじゃないんだ。そんな舞ちゃんが僕の踏み出す一歩をずっと待って・・・


舞ちゃん!!


今朝の光景を見て受けたショックはよほど大きかったのかもしれない。
しかも僕は徹夜明けで朦朧とした状態なのだ。
そのせいもあって、いま自分の考えがとんでもなく極端なものになってしまっている。
だが、今の僕は自分の考えがおかしな方向に走っているということが全く自覚できてはいなかった。


今ひとつの結論のようなものに思い至ったものの、今朝見た光景が脳裏に蘇ってくると、どうしようもなく臆病になってしまう。
再び黙り込んだ僕。


きっと思いつめた表情になっていたんだろう。
そんな僕を桃子さんはやみくもに問い詰めてきたりはしなかった。
一呼吸おいてから、静かに語りかけてくれたんだ。

「本当に舞ちゃんのことが好きなんだね。もう何年になる?」
「初めて見たあのときから、もうすぐ3年になります」
「もうそんなになるんだ」

「その間いろいろあって、想いが叶う見通しなんて全く見えてこない(笑)のに、ずっとその気持ちを持ち続けているのは大したものだよ、うん」
「そうでしょうか?」
「うん。そこ だ け はいいところだと思うよ」
「でも。僕のこの気持ちが舞ちゃんにとってプラスになっていないとしたら・・・」
「ん?どういうこと?」


桃子さんの質問に対して、返事をすることができなかった。
現実を見て思い知らされたその自分の立場を言葉にして口にすること、それがとても怖くて。

僕がずっと持ち続けている想い、ひょっとしたら舞ちゃんにはただ負担にしかなっていないんじゃないだろうか。
もし、そうだとしたら・・・ この気持ちが舞ちゃんにとってプラスにならないことだとしたら、いったい僕はどうしたらいいんだろう・・・

「僕の存在そのものが舞ちゃんには負担でしかないんじゃないのかと思うと、怖くて仕方が無いんです」

僕のその言葉を桃子さんは理解してくれたのか、してくれなかったのか。

じっと僕を見つめている桃子さん。
しばしの沈黙のあと、表情を全く変えずに桃子さんが僕に言葉を続けてくれた。

「ふーん? そんなの気にしてるんだ」
「そりゃ気にしますよ・・」
「そんなの気にしてどうすンの? 自分で考えることじゃないでしょ」
「・・・・・・・・」
「周りの反応を伺いながら生きるのって楽しい?」 

そう言った桃子さん。
小柄な彼女の姿が、僕にはとても大きく見えた。


僕を見つめているこの年上の女性の表情が、柔らかい表情へと変わった。
冷静な僕だったら、それが桃子さんのいつもの作戦だと気付くこともできたのだろうが、今の僕にはそんな余裕など全く無いわけで。
桃子さんがことさら優しい声で僕に話しかけてくる。


「いつも通りの少年のままでいればいいと、もぉはそう思うよ」


「そうでしょ?」


桃子さんの言葉って、いつだって重い。
なーんにも考えてなさそうで、全てのことを分かってるんだよな。
この人、やっぱりすごい。
そんな桃子さんが、「今のままでいい」って言ってくれたんだ! そうか、それでいいのか!!


「うん!そうですよね!!」
「復活するの早すぎでしょw」


「少年は本当にポジティブだよねーw」


目を細めて笑う桃子さん。
彼女が言ってくれた言葉が嬉しかった。
そうか。何も変えなくてもいいんだ!


考えてみれば、他人のことには一切干渉しようとしない軍団長がこんなことを言ってきたりするなんて、とても珍しいことじゃないか。
ましてや、この僕に軍団長がこんなに優しい言葉を・・・・
ひょっとして、「これは夢オチでしたw」とかいう流れじゃないのか?とすら思うほど。


「ありがとうございます、桃子さん」
「うん。どういたしまして♪」


でも、やっぱりその疑問を口にしてみる。

「あの・・・ 桃子さん、どうして今日はそんなに優しいんですか?」
「ん? もぉはいつだって優しいじゃない」

その言葉には全く同意できないものの、いま桃子さんの表情は確かにとても暖かみのあるものだった。
あぁ、やっぱりこの人は年上の人なんだなあ。懐の深さというか。
僕のことにも、そんなに親身になってくれて。

年上のお姉さんか・・・
その優しい表情を見ていると、僕は現実感が薄れて夢の中にでもいるような気分に・・・


そんな桃子さんと、この狭い部屋の中で2人っきり。
実はそのことでずっと感じていたある種の緊張が、この時点で限界値を超えていたようだ。
そしてそのとき、自分の気持ちが思いがけない方向に向かい始める。

「も、桃子さん・・・」
「なぁに?」

きょとんとした表情。目をぱちぱちして僕を見つめている桃子さん。
そのかわいらしい姿を見て、感情をコントロールできなくなるような衝動が突き上げてくる。
思わず体が動きそうに・・・


「あっ、あの、、、もっ、桃子さんっ!!」



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