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視界に入っているのは桃子さんのその可愛らしい姿だけだった。
そしてその桃子さんの表情に僕は捉われてしまっていたのかもしれない。よく憶えていないけれど。

僕の両手が桃子さんの両肩へ20cmぐらいまで近づいたそのとき、部室のドアが突然開いた。


「おっ!もも!! 来てたんだー」


乱暴にドアを開けて入ってくるという登場をしたのは、もちろんこの部室の主であるリーダー(自称)さん。

「よっ、くまいちょー、来たよ♪」
「なんか楽しそうだねー、もも」
「うふふ。今ね、ちょっと少年と遊んでたんだ。うん、とっても面白かったよw」

桃子さんの表情。たしかにとても楽しそうだ。
熊井ちゃんの登場で我に返った僕は、何事もなかったかのように冷静さを取り戻すことが出来た。
だから、桃子さんのその表情の意味を一瞬で悟った。

そうか、さっきの僕に対して妙に優しい態度はそういうことだったのか・・・


「自分の立場ってものを思い知らされて落ち込んでるこいつを、優しいふりしてからかって遊んだってことかー。 ホントそういうの好きだねー、ももは」
「落ち込んでる少年を見たらついw」

僕はまたまた軍団長の手のひらで遊ばれてたんだ。
すっかり騙されたよ・・・
純情な僕の心を弄んだりして・・・ この人・・・

「えー、でもそれって危険じゃない? そんな優しくしたらこいつ勘違いしちゃうよ? 部室の中で2人っきりだったんでしょ。もも大丈夫だったのー?」
「ん? どういうこと?くまいちょー」
「だってさー、なかさきちゃんがよく言ってるよ。“男子っていうのはいきなりその気になったりするんだから!絶対に気を許しちゃダメだケロ!!”ってw」
「そなの? さぁ?どうだったんだろw ウフフフ」

桃子さんが意味ありげな微笑を僕に向ける。
その表情、僕を凍りつかせるのに十分だった。

そういうことか・・・

うわー・・・・ 全部お見通しだったってことか・・・

は、恥ずかしすぎる!! と、とてもじゃないが顔を上げられないこの状況。
僕が耐えられないほどのショックを受けているとき、こういうとき必ず追い討ちをかけてくるのが大きな熊さん。今回もその例に漏れなかった。

「そうだよー。もも危機一髪だったんだよ。気をつけないと!」
「はぁい、気をつけますぅ。でも何でそんなことまでわかるの、くまいちょー?」
「そりゃわかるよー。うちの設置してるスパイウェアの解析によると、こいつこのところちょっと溜まってるみたいだからさー」


ちょ・・・ おま・・・ 何を言って・・・・


何でそんなこと知ってるんだよ!!

      • って、そうじゃないのかもしれない。
いつだって大きな熊さんの話しはどこまで真面目に聞くべきなのか判断に困るんだ。
熊井ちゃんの言ったこと。それはいつもの戯言に過ぎないんだろう。(そうだよね!?)
大体、いま彼女が言ったことが仮に(仮にですよ?)当たっていたとしても、そんなことで僕が理性を失うような行動をするわけもない。(ほ、本当ですって!!)

でも、僕の脳は今、少し混乱を来たしていたんだ。
熊井ちゃんの言ったことは関係無いにしても、僕はさっき何をしようとしてた? 桃子さんに対して。
さっきの自分の行動、それは熊井ちゃんの言ったようなこととは全く関係ないんだ。もちろん。
繰り返すけど、本当に違うから! そんな理由で衝動的になったんじゃない! そこは意味が違う!!


って、意味が違うのか?


僕はさっき確かに桃子さんを見て危うく衝動的になりそうになっていた、、、
どうして僕はそんな行動を取りそうになったのか。
その理由について、いま自分で「意味が違う!」とムキになって否定した。
変な意味で衝動的になったんじゃなかったとしたら、じゃあそれはどういう意味なんだ?


その疑問。
そこから導き出される答え・・・
自分で言った言葉がブーメランとして戻ってきてしまった。
予想もしていなかったその答えに、僕は言葉を失う。


ひょっとして、僕は桃子さんのことが・・・・


・・・・・・


なーんてね。
うん、考え過ぎ。

そうだよ。考え過ぎだw

第一そんなのは言葉のアヤに過ぎないだろ。
何かしようとなんてしていなかった。そう、実際に何もしていない。
だから、桃子さんに対しても何も特別なことを思ってなんかいない。

そもそも、何をしようとしたって言うんだよ。
考えすぎにもほどがあるw


・・・僕は疲れてるんだな。
何と言っても、徹夜明けなんだ。それに、今朝の舞ちゃんとのことが本当に負担になってるみたいだし。
いま僕に必要なのはゆっくりと心身を休める安息の時間だろう。(今それが許される状況に無いのは明らかだけど・・)



僕が務めて平穏を取り戻そうと必死になっている心の中の混乱をよそに、明るく会話を続ける軍団の偉い人2人。
おかげで僕は次の瞬間には憑き物が落ちたように、いま考えていたそんなことなんか無かったかのようにすっかり忘れることができた。

「なかなかいい部屋じゃない。入学してすぐに部室を確保しちゃったなんて、さすがくまいちょーだね」
「親切な人達がいてさー。良かったらここを半分使うといいよってうちらに言ってくれてー」
「そうなんだ。ウフフフ。親切な人に出会えて良かったね、くまいちょー」
「うん。やっぱり普段の行いを良くしておくといいことがあるんだねー」

熊井ちゃんの言う言葉にいちいちツッコんでいたらキリがない。
だからもう全てスルーして流すことにするが、彼女にはひとつ聞きたいことがある。

「あの、、、熊井ちゃん、このソファーのことだけど、これは一体?」
「買ってきたんだよー。いいでしょー、これ」
「これ、結構モノが良さそうだけど・・・」
「うん、寝心地なんか最高だよー。もぉ軍団の部室で使うんだからね。それなりのモノじゃないと」

なるほど、朝から姿が見えないと思ったら、これを運び込んでいたのか。
そしてさっそくそれで居眠りをしていたという訳だ。
ここが居眠り部屋になることは予想されていたが、そのためにここまで環境を整えるとは。
思い立ったら本当に気の早い人だ。

しかし、こんな高級そうなソファーを買ってきたとか。いったいどこにそんな資金が?
ま、まさか、これも僕の・・・


それ以上考えたくもない僕のその疑問に、熊井ちゃんは何故か桃子さんの方を向いた。

「まぁ、あのライブUSBではだいぶ儲かったじゃない? だから、これも買えたってわけw
こうやって軍団の資金が潤うのも、Buono!のボランティア精神のお陰だよねー。さすがだね、もも!」
「えっ?」
「えっ?」

お互いそう言ったのち無言で見つめあう軍団の偉い人たち。
部室の中の空気が固まった。

笑顔のまま動きが止まってしまっているこの2人。
その光景に僕の背筋が凍りつく。

これ、怖すぎでしょ!
ぼ、僕は何の関係も無いですからね!



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