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「お嬢様、袖が伸びてしまうから、その着替え方はダメだといったでしょう!!!」

世にも珍しい、袖口からのジャミラ状態の岡井さんを捕まえて、風紀いんちょーさんはキャンキャンとお説教をかます。

「でも、これが一番効率がいいのよ。なっきぃも試してみたらいかが?」
「私は結構です!」

そんな激昂状態の相手を前にしても、岡井さんのふわふわしたテンションは変わらない。
セレブ特有の、“相手が自分に合せるのが当たり前”という雰囲気。だけど、日ごろ常に一緒に過ごしている風紀いんちょーさんには、そういうのは通用しないみたいだった。

「そ、そんな、ししし下着を大公開なさるようなの、なっきぃは認めませんからねっ」
「まあ、なっきぃ。この着替え方はね、あまり長い時間、着替えている姿を人前で晒さないよう、め・・・村上さんが、教えてくれたの。たとえ一時、肌を晒す間が出来たとしても、それはほんの一瞬。
御見苦しい時間が短い方が、千聖はいいと思うの」
「ぐぬぬ」

おお、なかなかの岡井美学・・・だが、服の一部を頭にひっかけた状態では、説得力も皆無というもの。
見苦しいなどとは言わないけれど、何せおなかからお胸にかけて、大胆に露出した状態だ。

「岡井さぁーん・・・見えてる、けど」

おそるおそる指摘すると、岡井さんは一瞬キョトンと子犬みたいな表情になったあと、「きゃんっ」と小さく悲鳴を上げて、胸の前でサッと手をクロスさせた。

「おそっ!恥ずかしがるのおそっ!」
「もう、なっきぃが途中で千聖を止めるからよ」
「キュフゥ・・・」

いや、それにしても、岡井さん・・・


「ねえねえ、岡井さんて、何カップなの?」

勢いついでにそう聞いてみると、またほっぺたがサァッと赤くなる。
こんな小柄で可愛らしい、しかも半下着状態の女の子にイジワルをしてるなんて、何か妙な気分だ(私は有原さんみたいにソッチ系じゃないけどね!)

「か、かっぷ・・・えと・・・」
「前から思ってたんだけど、結構胸おっきくない?」
「あの、そ、そそんなことは・・・その、えっと」

女の子しかいないこの学校で、特に珍しくもない話の内容だと思うんだけど、岡井さん、目、泳ぎすぎ!

「だ、だから!お嬢様にそういう話題を振らないで!びっくりなさっちゃうでしょ!」

もじもじと身をよじらせる岡井さんに変わって、様子見って感じだった風紀いんちょーさんが、目を見開いて詰め寄ってくる。

「えー、なんでぇ、これぐらい・・・」
「で、でも、梨沙子も結構あるよね!」

そこで、いんちょーさんの大爆発を避けるためか、友達が私に話を振ってきた。

「私?」
「うん、うらやましー!」
「でも邪魔だよ、おっきくたって!ね、岡井さん?」
「ひゃんっ!?」

岡井さんのブラ紐をちょいっとつまんでパッチンすると、ピョコンと飛び跳ねるマンガみたいなリアクション。

「り・さ・こ・ちゃん!」

いんちょーさんは爆発寸前だけれど、もうこうなったら開き直るっきゃない。

「いんちょーさんもそこそこですよね」
「そこそこゆうな!」

「まあ、実際なかさきちゃんは●カップやけども(事情通)」
「ギュフーッ!」

そこへ現れたのは、我が軍団のにょきにょきチャンピョン。
猛り狂ういんちょーさんのふくらみをガシッと掴んで、「ほら、やっぱそんぐらいだ(事情通)」と満足げ。・・・うわー、ちょー痛そう・・・。

「てか、その(事情通)って何よ」
「ウチ、今後は闇のフィクサーを目指すことにしたから。よくあるじゃん、(事情通)とか、(政界関係者)(某芸能レポーター)みたいな」
「ちょー胡散臭いじゃん、それ」

しかし、熊井芸能デスクは私のツッコミぐらいじゃ怯まない。

「そんなうちが掴んだ極秘情報によるとー、これ絶対内緒なんだけどー、お嬢様は(いんちょーさんより1サイズアップ)カップらしいんだよねー」
「思いっきり言ってるじゃん・・・」
「フガフガフガフガ」

しかも、岡井さんのリアクションからして、ホントっぽいし・・・。熊井ちゃんの情報網、怖すぎでしょ。

「ゆゆゆ、ゆりなちゃん!あ、あんたってひとは・・・」
「えー?お嬢様のカップのことなら、教えてくれたのはぁ、栞」
「それはわかってるから!じゃなくて、こ、こんな公衆の面前で、なんて恥ずかしいことを・・・!」

涙目で、ぷっくり唇を震わせるいんちょーさん。
美人がこんな顔したら、多少は罪悪感とか感じちゃいそうなものだけれど、熊井ちゃんはそんないんちょーさんを冷やかな目で見た。

「恥ずかしい?今、恥ずかしいって言ったの?なかさきちゃん」
「当然でしょうが!ゆりなちゃんにはデリカシーというものが」
「なかさきちゃん!」

突然、熊井ちゃんがいんちょーさんの腕をガシッと掴んだ。そのまま、真顔を近づけていく。
フツーの女子なら泣いてもおかしくないようなシチュエーション。だけれど、いんちょーさんはなんとか気丈にニラミを返している。

一触即発・・・どちらが先に、口を開くのか。
私たち一般市民は、かたずをのんでそれを見守ることしかできない。岡井さんも神妙な顔で小さく歌っている。人生楽ありゃ苦もあるさ。涙のあとには虹が・・・と。それ、どっちの応援歌?


「・・・はずかしくなんか、ないんだよ」

やがて、熊井ちゃんは良く通る声で、いんちょーさんに訥々と語りかけた。

「なかさきちゃん、おっぱいというのは、母性なの。赤ちゃんを育むための、大切な愛のかたまり。
それを恥ずかしいだなんて、なかさきちゃん・・・あんたって人は」
「ちょ、なんで熊井ちゃん涙目」
「梨沙子はだまらっしゃい!・・・ああ、そう。梨沙子も結構おっぱいちゃんだ。これはいい赤子を生みますぜ(出産評論家)」
「熊井ちゃん、脱線してるから」
「ん?ああそう?もう、なかさきちゃんのせいだからねっ」
「オゥフwひどいケロ!」

いつもの漫才を横目に、私は岡井さんを手招きで呼び寄せた。・・・もー、怖がっちゃって、かわいそうに。

「胸のことは、まあどうだっていいの。岡井さんの着替え方、面白いねって話してただけ」
「え・・・ええ」
「着替え?」

なぜか、熊井ちゃんの眼光が鋭くなる。

「そう、早替えの技術がはんぱないんだよ、岡井さん」

「へー!おっぱい引っかかっちゃいそうなのにねぇ」
「だから、お嬢様に失礼なこと言うのやめるケロ!」

いんちょーさんのお怒りはごもっともだけれど、あまりにも熊井ちゃんがあけすけに言うもんだから、返って岡井さんは緊張感を解かれたみたいだ。

「ウフフ」
「うち、見てみたいな!その着替え技術!」

熊井ちゃんからの打診に、岡井さんはにっこり笑ってうなずく。
さっき、いんちょーさんが止めちゃったから、中途半端なところまでしか見れなかったんだよね・・・。私も、周りのみんなも、かたずをのんで見守る。


「だめです、おj」

――そして、私たちは奇跡を目の当たりにすることになる。


いんちょーさんの手が静止するように伸ばされるその一瞬のうちに、ジャージ姿だったはずの岡井さんが、制服のブレザーを身にまとっていた。


「え?どーゆーこと?」
「何で?見えなかったんだけど!」

そう、さっき同様、一瞬ブラチラを晒しただけで、岡井さんの着替えは完了してしまっていた。
熊井ちゃんの目がカッと見開かれる。


「もう一回!」

アンコールにお応えするように、岡井さんは器用にブレザー→ジャージ、ジャージ→ブレザーと、交互に早替えを見せつけてくる。・・・熊井ちゃんの指摘どおり、そのご立派なたゆんたゆんに服がひっかかっちゃうセクシーハプニングはご愛嬌。
お嬢様で、ぼーっとした感じの子なのに、やっぱり岡井さんって計り知れない何かがある。


「うちも覚える!!!!どうやるの?こう!?」
「ギュフーッ!!!」


興奮状態の熊井ちゃんが、なぜか自分じゃなくて、風紀いんちょーさんのジャージをガバッとまくり上げる。・・・へ、へー、意外とハデな色の・・・


「お、お嬢様!私にもぜひレクチャーを!」
「私もお願いします!」


なかなか訪れない、学園一の有名人との交流の機会とばかりに、ロッカー室にいるみんなもワラワラと押し寄せて、ちょっとした集中混雑状態。


――あ、本礼のチャイム鳴ってる。こういう時、オトコの先生って大変だよね・・・まさか入室できないし・・・。などと実に余計な心配をしながら、私も周りに流されるように、自分のジャージに手を掛けたのだった。


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