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グズグズ悩んでいるうちにキャプテンが私とみやを呼びにきてしまった。
「ちょっと待ってて、梨沙子と話がしたいんだけど。」
「みや、後でいいよ。」
「でも何か言いたいことがあったんでしょ?」
「いいってば!」

自分でもどうしていいかわからない気持ちになって、思わずみやに大きい声を出してしまった。
「・・・・そか。ごめんね。先、行ってるから。」
「あ・・・」
みやはちょっと悲しそうな顔で笑って、キャプテンと一緒に歩いていってしまった。
人に当り散らすなんて、一番やっちゃいけないことなのに。
それも、私を心配してくれているみやを傷つけてしまった。

「うー・・・最低だ。」

何だか悲しくなってきた。
今日は何もかも全部がうまくいっていないような気がする。
どうしてこうなっちゃったのかな。千聖の秘密を知ったとき、誰にも言わなければよかったのかな?
それとも、ももだけじゃなくてみんなに言って相談するべきだったのかな?


「梨沙子、行こっか。」
まぁが何にも聞かないで、優しく肩を抱いて一緒に歩いてくれた。
みんな私に優しくしてくれてるのに、私は迷惑をかけてばっかりだ。

私なんか、ダンスの振り覚えるのは遅いし、歌だってももやみやみたいにかっこよく歌えてないし、すぐ集中力がないって怒られるし、


あ、ヤバイ。泣きそうになってきた。


「まぁ~・・・。」

私はちっちゃい子がママに甘えるみたいに、まぁの腰にしがみついて、引きずられるように部屋を移動した。



当然コメ撮りも最悪な感じで、私のところで何度もつっかえて撮りなおしの連続になってしまった。
なんだかんだ言っても、ももや千奈美は仕事になれば頭を切り替えてちゃんと仲良く目を合わせて笑ったりなんかしている。
みやだって、さっきのことはなかったように私に話を振ってくれる。

あぁ、私だけ子供だ・・・。

マネージャーから何度も何度も怒られてるうちに、大きな手に胃がギューッと握られてるような感覚になって、私はついにうずくまってしまった。


「梨沙子?」
「どうした?」


「・・・・・・・・・・・おなか、痛い。」






その後すぐのことは、あんまりはっきり覚えていない。
貧血みたいに体がグワングワンして、多分まぁと熊井ちゃんに抱えられて医務室に連れて行ってもらったんだと思う。
しばらく休んでいるように言われたから、体を横にしてブランケットに包まった。
午後の気持ちいいお日様のにおいに和んでウトウトしかけた頃、小さなノックの音が聞こえた。
ちょっとめんどくさいから、眠っているふりをしていたら、「シーッ」なんて言いながら人が入ってきた。

「寝てるね・・・」

この声は、愛理だ。嬉しくて飛び起きそうになったけれど、横にもう一人誰かいる感じだったから、そのまま寝たふりを続けた。
「ベリーズもコンサートが近いから、スケジュールが詰まっていて疲れてしまったのかもしれないわね。」
「だね。」
・・・この喋り方。
私が自販機の前で、偶然聞いてしまったあの時と同じだ。
舞ちゃんの吐き出す言葉を、優しく包み込んでいた・・・・

千聖だ。
ももや私に見せていたのとは違う、今の千聖の本当の姿でここにいるんだ。



目を開ける勇気は出なかった。
私が起きてると知った時の、愛理と千聖の慌てる顔を想像したらなんだか辛くなってしまった。

「お熱はないみたいね。何か、飲み物でも用意しましょうか。」
ちょっと体温の高い、丸っこい指が私のおでこに触れた。

「あ、じゃあ小銭あるから私行って来るね。梨沙子のこと見ててあげて。・・・あと、今のうちに明るい方の千聖になっておいて。」
「ええ。」

愛理が扉を閉める音がした。
ついに2人っきりだ。

もう今からじゃ、ももに助けを求めることなんてできない。
薄目を開けて見つめた千聖の顔は、別人みたいに落ちついた優しい顔で、私はなんともいえない恐ろしさを感じた。



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