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「風紀!常識的な行動!清く!正しく!(ry」

エクソ●ストな美人二人を正座させて、風紀委員長さんのキャンキャンと甲高いお説教が響き渡る。
だけど、肝心の矢島さんとちさとさんは、こっそり目配せして微笑みを交わしあったりなんかして、全然反省していない模様。
お嬢様でも、こういうイタズラ心は庶民と全然変わらないのかな。可愛らしくて、親近感を覚える。

「・・・ま、まあこのぐらいでいいでしょう。お嬢様、それで、どの競技にご関心が?」

しばらくして、納得できるまで雷を落とし終えたらしい風紀委員長さんが、やっといつもの冷静な感じに戻った。

「お嬢様は運動神経がいいですからね、どんな種目もおこなしになると思いますよ。キュフフ」

そんな風紀委員長さんの言葉を受け、前生徒会長さんはなぜか嬉しそうにうなずいた。

「そうそう、お嬢様、陸上部って一口に言っても、色々な種目があるんですよ!どれにしましょうか!フリスビー?ハンマー投げ?砲丸投げ?」
「みぃたん、何で投げる系ばっか勧めるの?」
「あはは、私が投げてお嬢様が取りに行くの!わんわん、とかいってw」
「ギュフーッ!お嬢様はペットちゃんじゃないケロ!そうだ、みぃたんたらこの前もお庭でお嬢様に・・・」

――あ、あはは・・・。かなり失礼なこと言ってるなんじゃないかと思うけど、ちさとさんはニコニコ笑って聞いてるから、別にいいんだろう。


「・・・あの、お話し中にすみません」

そんな空気の中、真顔の里保ちゃんが、先輩たちの輪の中に声を投げかける。


「あー、鞘師ちゃん!お嬢様、彼女ですよ、ウワサの陸上部のエース!」

なぜか、陸上部の現部長を差し置いて、矢島先輩は張り切ってしゃべっている。

見た目的には清楚で大人しい美人、って感じなのに、色々とギャップがすごい人だ。
そんな先輩たちに対して一礼すると、里保ちゃんは口を開いた。

「岡井さん、はじめまして。初等部の鞘師と申します」
「ごきげんよう、里保さん。香音さんから、お噂はかねがね」

里保ちゃんは噂?とばかりに私をチラッと伺ってきたけれど、変なことは言ってないよと目線で返すと、すぐに安心した顔に戻る。

「私こそ、かりんちゃんさんから、岡井さんのお話はよくうかがっています」
「まあ、かりんを知っているの?」
「はい。初等部の生徒会に所属しているので・・・」

ちさとさんの丁寧な応対で、さっきのブリッジ滑走の衝撃は薄れたらしい。
生徒会で会計をやっている真面目な優等生らしく、普段通り、上級生と丁寧に会話を交わす里保ちゃん。


「・・・ところで、折り入ってお願いがあるのですが」

しばらく世間話を続けた後、ふいにつないだままの里保ちゃんの手に、力が入ったのがわかった。

「お願い?まあ・・・千聖がお役に立てることかしら」
「里保ちゃん?私、どいてたほうがいい?」
「ううん、行かないで。ここにいて」
「でも」

大事な話なら、私なんかが・・・と思ったけれど、ちさとさんも深くうなずいて、にっこり微笑みかけてきた。


「香音さんがそばにいたほうが、安心してお話できるのでしょう」
「ええ、親友ですから。親友」

親友、というところにやけに力を込めて、里保ちゃんは繰り返した。
う、嬉しいんだけどさ・・・。はずかしいよ。だって、やっぱり、私なんか・・・

「それで、お願いというのは?」
「はい。・・・あの、まだ陸上部に入部なさると決めたわけではないのに、このようなことを申し上げるのは恐縮ですが、岡井さんは大変運動神経が良いと聞きまして」
「そんな、お褒めいただくような能力はないのよ」
「いえいえ、さっきのエクs・・・まあ、それはおいといて、つきましては、私と勝負していただけないでしょうか」
「・・・はいい!?」

ちさとさんが反応するより先に、私がマヌケな声を出す。

「そ、それは・・・ねえ?」

場を取り持とうと、おどけた顔と声でちさとさんを見ると、目をパチパチさせてあっけにとられている。

「わ、私、かしら?あの、舞美さんではなくて?」
「はい、是非」
「わあ、いいんじゃない?すごいね、なっきぃ!」
「キュフフ、お嬢様、いかがでしょう?」

先輩たちは明るい声で応えてくれたけれど、当のちさとさんは何が何だか、という感じで、困ったように里保ちゃんを見つめた。

「私なんかでは、里保さんのお相手には」
「「ほらまた言った!」」

その瞬間、里保ちゃんと風紀委員長さんの声が揃い、ビシッと立てた人差し指が、岡井さんに向けられる。


「ひえっ」
「“私なんか”はやめるお約束だったでしょう、お嬢様!」

なぜか得意げに、ドヤッ!って感じの顔でお嬢様に言い放つ風紀委員長さん。
対照的に、ちさとさんはお口ぽかーん状態で、困ったワンちゃんのようだ。
そして、放たれた言葉に、全員一斉にずっこけることとなる。


「・・・特に、なっきぃとそういったお話を聞いた覚えはないのだけれど」
「・・・・・・・ケロ?ま、まあ、今そう決まったので!私と里保ちゃんの間で!ねえ!」
「は、はい。そうです!香音ちゃんも岡井さんも、すぐ“私なんか”って・・・。そんな言葉は、よくないと思います」

先走り&早とちりな風紀委員長さんの言葉はともかくとして、里保ちゃんの真剣なまなざしに、ちさとさんの表情は少し引き締まる。


「陸上競技で、勝負をしましょう。種目は岡井さんにお任せします。
私が勝ったら、もう“私なんか”って言わないでください。香音ちゃんもだよ!」
「なるほど、オッケー☆って私関係ないやないかーい!」

私のノリツッコミは、あはは、香音ちゃん面白い!すごいねなっきぃ!と前生徒会長さんにだけは大ウケだった模様。
一方、ちさとさんは神妙な顔で細く息を吐き出した後、「わかったわ」とよく通る声で答えた。

「香音さんのための勝負、ということね」
「いえ、香音ちゃんと岡井さんの口癖をかけての勝負です」
「すごいですねー、お嬢様!」
「ええ、気合いを入れて取り組まないと。香音さんの運命を、千聖が握っているのだから」
「いえ、ですから岡井さん(ry」

はたして、わかっているのかいないのか。


「まあ、香音ちゃんも苦労人だよね、色々と・・・」

風紀委員長さんに肩を抱かれながら、なすすべもなく、ウォーミングアップを始めた一行を見守ることしかできなかった。



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