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「な、何?あの子また余計なこと言ったとか」
「・・・」
「あー・・・ほら、千聖ってたまに、よくわかりづらいこととか言うじゃん。素直じゃないっていうか、言い回しが独特で言いたいことがよくわからないっていうか」


舞と千聖はラブラブだけど、ぶつかることも結構多い。
親友の私から見ても、千聖って子は「お前は詩人か!」と思うような独特の表現をしたり、言葉の誤用も多いタイプだから、とにかく誤解を生みやすいのだ。


「・・・ちしゃとの好きなブランドの服、マネキン買いしたの。ほら、あの・・・」


そう言って舞ちゃんが出したブランド名は、千聖が日ごろから好きと公言しているタレントさんが手掛けているものだった。


「え、それ絶対ハズレとかないじゃん。千聖喜ばなかったの?」
「・・・」
「舞があげた服、もう持ってたとか?」

いやいや、しかし岡さんという人は、気に入った服をのび太君買いするし、舞を不機嫌にさせるような不躾な態度はとらないはず。だとしたら・・・


「いや、嬉しがってはいた」

しばらくして、ぶぜんとした表情の舞が再び口を開いた。


「ショップの紙袋見せた瞬間は、うおおお!とか言って雄叫びあげて抱きついてきたもん」
「そ、そっか」
「千聖に似合うと思って、ブルーのタンクキャミ、裾が可愛い小花柄のショートパンツ、、ラクチンルームウェア・・・頑張ってチョイスしたんだよ、舞」

こと千聖に関してはマメで几帳面になる舞だから、かなり早いうちから、バースデープレゼントを考えいたのだろう。
力を入れていた分。プレゼントを見た千聖のリアクションにも、それなりに期待をしていたに違いない。


「ちしゃとはテンションあがってわけわかんなくなっちゃったワンちゃんみたいに、服一式抱えてぐるぐる回転してた。そのまま壁に激突して、うずくまりながらもゲヘヘと笑っていたのでしゅ」
「そ、そう。それ、かなり喜んでるんじゃ・・・」
「だから、喜んでたってば」

――ああ、この会話の無限ループ!ナカジマ、こういうの大好き!ザ・女子ってカンジケロ!



「・・・でね、一通り試着とか済ませたあと、いきなりちしゃとはこう言ったの。“舞って、ほんっとエロいことばっか考えてんね!ひゃひゃひゃひゃ”」


バリン!
舞様がお咥えになっていた最後の塩せんべいが、勢いよく真っ二つに噛み切られた。



「ひぎぃ!」
「舞別にそんなつもりなかったんですけど!」


激昂したような舞の声に、愛理と千聖も視線をこちらへ向けてくる。


「・・・あー、ごめん。なんでもありません」

愛理には神妙な顔で、千聖にはべーっと舌を出しながら、舞は大声の非礼をおわびした

「うわ、こえー」

そんな舞の態度に、千聖は弟くんや妹ちゃんの癇癪を受け流すみたいに対応する。
ちょちょちょ、ちょいまち、岡さんよ!舞はアンタのために、こんなにプンスカしてるんだからね!
他人事?いや違うね。親友の過ちは、親友が説いてあげるべき!それができるオンナ(ry

「千聖!!」

私たちにお尻を向けて寝っころがろうとする千聖のワキに腕を突っ込んで、正座の姿勢に直させる。


「なんだよー、千聖、プレゼントの開封で忙しんだからね」

ギュフーッ!
暇なら舞に遊んでもらいなね?なんて、お姉ちゃんモードで往なしてくる千聖。
違うだろーが!アタシは、一言あんたに言いたいことがあるんだケロ!


「真面目に聞いてよ!」


声を張ると、さすがの千聖も表情を改めて私を見た。
なんか怒らせることあったっけ?という感じに、小首を傾げて記憶をたどっているようだ。


「なっちゃん」

すると、舞が私の腕に手を絡めて、千聖の真ん前にあぐらをかいて座り込んだ。


「うーわっ」
「何そのうわーっって!失礼じゃん!」

「だってさー、そこ二人つるむと、絶対千聖に文句言ってくんじゃん!デリカシーがないとかいってさー」
「実際ないでしょ!デリカシー!舞まだ怒ってんだからね!」
「そーだそーだ!舞の気持ちも考えなよ!」


――あれ、なんかこういうの、ずっと昔にも経験したような気がする。
小学校で、友達が好きな男子に詰め寄る感じ。帰りの会で、女子全員で男子の行動を糾弾する感じ。あれを思い出す。
事実、私たちからの正当な抗議(ケロキュフッ)を受けた千聖は、“あーうっぜめんどくせ(ry”という、お手本のようなげんなりした表情で私たちを見比べている。


「心当たりないんですけどー」
「本当に!?ないの!?」

舞は大きな目をさらにカッと見開いて、千聖の肩を掴んで揺さぶる。


「うわうわ!何なの?はっきり言ってくれなきゃわかんないし!」

な、なんてことなの!舞がこんなに怒っているっていうのに、鈍いにもほどがあるでしょうが!


「ちしゃとは舞とファンの人とどっちが大事なの!?」
「・・・舞、いったんちょっと落ち着こうか」


元凶のくせに、千聖ったら急に冷静になって、大騒ぎする舞の両手を捕まえて座らせた。
おまけに横目で私をチラ見して、アゴで“お前も座れや”と指示してくる。・・・な、なによもとはといえば(ry


「千聖バカだから、舞の言っていることがよくわからないんだ。
でも、きっと千聖が悪いんでしょ。なら、はっきり言ってほしいな」

一言一言、はっきりした口調でそう告げると、千聖は舞に顔を近づけた。
そうやって色仕掛け(?)すれば、舞が落ち着きを取り戻すってわかってるんだから、ずるい!
案の定、千聖の茶色い瞳に射抜かれた舞は、惚けたような表情になって、もうメロメロだ。


「落ち着いた?」
「ん・・・」
「ちょーっと待ったぁああ!アタシにはそういうの通用しないんだからねっ!!」


有耶無耶にされてはたまらん!と止めに入ると、ヤンキーマンガの不良みたいに、思いっきり眉をしかめた岡井さんにガンを飛ばされる。


「あー、あー、そうやって純粋な舞をたきつけて、おおごとにしようとしてんでしょ!マジないわー」
「ち、違うし!ねぇ舞?」
「あー・・・なんだっけ」

ギュフーーッ!!!はい出ました、このパターン。これあれですわ、私が悪者になるやつですわ。もはや様式美。べ、別に?全然泣いてなんかいないケロ?


「なっきぃ」
「な、何?もういいし。舞が納得してるなら・・・」
「いや、でもなっきぃは納得してないんでしょ。全然よくないじゃん」

――ほんと、岡さんって、ものわかりがいいんだか悪いんだかわからない。


「まあ、これでも飲めや」


プラコップに注がれる、金色の泡立つ飲み物。・・・こどもビール。


「飲みの席じゃ、遠慮はなしだぜ。何でも千聖に話しなよ!」
「・・・ねえ、そういうの、どこで覚えてくるわけ?」
「いやそれより、だから、舞となっきぃは何をそんなにオコだったの?」
「えー、わかんない。なんかなっちゃんが勝手に」
「ギュフーッ!!なんでそうなるの、もう!」


愛しのちしゃとにお酌してもらってご機嫌な舞は、あんなに騒いでいたくせに、もはや千聖への文句はどうでもよくなったらしい。・・・キュフゥ、友情に燃えて文句言いに来たのに、この梯子の外されっぷり!
いくらアタシが物分りの良いオトナのオンナだからって、物事には限度というものがあるケロ!


「・・・違うでしょ、舞が千聖に言われたことに腹が立ったから、文句言いに来たんでしょ」

そこで、私は持ち前の演技力(ケロキュフッ)を駆使し、ちょっと盛った話でイジワルをしてやることにした。


「あー・・・そうだっけ」
「そうそう!舞がせっかく誕生日プレゼントあげたのに、千聖が“舞ってエロいグヒヒヒ”とか言って罵倒してきたんでしょ!」

大げさなアクション付きでそう言ってみると、怒りが再燃してきたのか、舞の口がへの字に曲がっていく。


「・・・そうだ、思い出した。ちしゃと、あれ、どういう意味!」


表情を一変させた舞に、“テメーギョカイおぼえてろよ!”とばかりに睨みをきかせてくる千聖。キューッフッフ、何とでも言うがいい!さあ、好きなだけ言い争いなさい!それが愛という(ry

「舞、エロいことなんて考えてなかったし!」
「なんだよ、千聖だけが悪いみたいじゃん!それは舞ちゃんがさぁ」

言いかけて、千聖はキッと私の方に視線をぶつけてきた。

「な、なによ!やややんのかコココラ(震え声)」
「やんねーよ。お前ボコッたらいじめみたいになるじゃん。かわいそーだから遠慮しとく」
「うわあ微妙に屈辱的ケロ」
「じゃなくて、千聖わかった!悪いのはなっきぃ!」
「「はぁ!?」」

犯人は、お前だ!と某探偵漫画の主人公のごとく、ドヤ顔で指を突き付けてくる千聖。
――言っている意味がわからない。超絶理論はK井さんだけで十分ケロ!
あまりのことに、口をパクパクして絶句していると、舞ちゃんが千聖のアゴを掴んで、ガッと自分の方へ向かせた。


「ぶにゃあ」
「千聖、舞は千聖に怒ってるんだけど?なっちゃんは全然関係ないでしょ?」


そうだ、もっと言ったれ!


「らってひゃあ、みへよ、これ!!」


千聖の手が、バタバタと何かを探している。
そのタイミングで、振り向きもせず、レポート作成中の愛理が、傍らに置いてあった雑誌を、千聖の頭の上に置いた。


「おお、ヘンキュー!・・・舞、ほっぺいひゃいよ!」
「ふん、愛理とはそんなに通じ合えてるんだね、ちしゃと。舞の気持ちはわからないくせに」

どうやら嫉妬対象が拡大してしまったようだけれど、永世中立人物の愛理は全く意に介していないから、舞もそれ以上は口撃を与えるつもりはないようだ。
やっと頬肉潰しの拷問から逃れた千聖は、いそいそとその雑誌をめくりだした。


「・・・あった!ほらこれ!」


やがて、モノクロのページを指で押しあてると、舞の眼前にそれを突き付ける。


「は?なにこれ?・・・女子必見!男子からのナイショのラブサイン!」

私も舞の後ろから、その雑誌を覗いてみる。
そこに書いてあったのは、“あなただけからかってくるのは、大好きの裏返し!”“よく目が合う男子?それは・・・”などと、眉唾ものの情報が羅列されていた。
そのうちの1つに、こんなことが書いてあったのだ。


「服をプレゼントするのは、脱がせたいというメッセージ・・・?」
「そう!それ!千聖は舞からのプレゼントを見たとき、まっさきにそれを思い出した!」

どうだ!とばかりに声を大きくする千聖。しかし、疑問は半分しか解けていない。


「で、なんでアタシのせいになるの?」
「だってこれ、なっきぃから借りパクした雑誌じゃん」

か、借りパ・・・。だが、言われてみれば、それは確かに私が買った雑誌だ。
℃-uteの現場に持ってきて、そのまま行方不明になっていたんだった。
一度、お気に入りのマンガをなくしてからというもの、仕事場に大切なものを持ってこないということを心がけていたから、暇つぶし用に購入した、ぶっちゃけわりとどうでもいいような雑誌で、今指摘されるまで、その存在すら忘れていた。


「いやいや、でも!私が持ってきたからって、私のせいにされるのは納得いかない!」


千聖ってば、時々突拍子もないこと言い出すんだから。冷静に対応しないと、ついつい流されてしまって、不本意な謝罪を余儀なくされることが、今までもたびたびあった。
だが、今日はそんな気分ではない。年上のオンナらしく、屹然とした態度で立ち向かわなくては!


「千聖、あのねぇ」
「あ、いいや。よく考えてみたら、別になっきぃ悪くないね。ごめんちゃーい」
「おろ?」


だが、鼻息も荒い私のテンションとは違い、千聖はあっさり白旗を上げてきた。き、切り替え早っ・・・。
だけど、舞にはまだ言い足りないことがあるらしく、「舞ちゃんさぁ」と再び口を開いた。


「これがなっきぃとかあいりんからのプレゼントだったら、千聖別にどうも思わないよ?でも舞は前から色々とさぁ」
「あー、はいはい!どうせ舞が悪いんでしょ!それでいいよもう!」

千聖が穿り返そうとした過去の事象・・・手錠ムニャムニャや、夜這いムニャムニャ等、舞には少々耳の痛い話だったのだろう。
末っ子特権の逆ギレで千聖を遮ると、拗ねた口調で続けた。

「脱がすとかなんとか言ってるけど、どーせ、舞のあげた服が気に入らなかったんでしょ?だからそうやって」
「は?違うし。そこまで言うんならなー、見てろよ、舞!」


千聖はいきなり立ち上がると、おもむろに着ていたTシャツに手を掛けた。

「ちょ、何やって」

止める間もなく、豪快に服を脱ぎ捨てた岡さん。去年より若干ちょっと白くなったお肌に、ピンクベージュの可愛らしいふりふりブラが映える。
後ろに目でもついてるのか、ひゃっほうDカップ!と愛理様がつぶやいたのはご愛嬌。


それにしても、こういうの、千聖の趣味だっけ・・・?と思っていると、座り込む舞が千聖の足首をガシッと掴んだ。


「・・・それ」
「おう、誕生日に舞にもらったやつだよ!つけてきた!下も見たい?」

そう問われた舞は、一瞬うなずきかけたものの、ムードを重視したのか慌てて首を横に振った。

「・・・いい。ちゃんと着けてくれてたんだ。舞のあげたの」
「うへへ、ちゃんと手洗いしてんだからな、これだけは!」

舞の顔が可愛らしく、ふにゃっと弛緩していく。・・・岡さん、アンタって人は・・・。アタシはもしかして、とんでもない手練れに喧嘩を売ろうとしていたのかもしれない。


「服は、今度オフの日に着るよ。だって、大事な服は着てこないほうがいいでしょ?ね、前になっきぃがそう言ってたし!」
「お、おぅ」

こうやって、私への謎の配慮まで・・・。二人して猛抗議を仕掛けたつもりが、なんだかよくわからないうちに、有耶無耶に片づけられてしまった。


「じゃあさ、舞とデートしよ!その時着て!舞が一番に見るんだから!」
「おう、いつにしよっか!」

「・・・ケッケッケ、懲りないですなぁ」


私の背後から、肩にアゴを乗っけて、愛理がささやいてきた。“懲りない”のが私なのか舞なのか、それとも千聖なのか、はたまた全員なのか。すべてに心当たりがありすぎて、もはやその発言に突っ込む気も起こらない。

「キュフゥ・・・愛理のその、安全定位置からケンカショーを楽しむスキルが羨ましいですよ、アタシとしては」
「ケッケッケ、でも、こういう楽しみ方もあるんだなぁ~」

愛理はいつものふわふわした動きで、イチャつくちさまいのところへ歩いていく。
そのまま、舞に何か耳打ちをしたかと思うと、幸せそうだったその表情が一変する。


「は・・・?夜景・・・?二人きりの、デュエット・・・?満天の星空をプレゼント・・・?ちしゃと!」
「はわわ、あいりんちょっとその話はさぁ」


無事、舞のシッポに火をつけることに成功した愛理は、スキップルンルンで「舞美ちゃん探しにいってきまーす♪」と楽屋を出ていってしまった。


「あばばば」
「ちょっと、なっちゃん!!!知ってたの!!?またそうやって、舞だけ!」
「ギュフーッ!!!」


私の悲鳴を遮るように、バタンとドアが閉まる。

キュフフ、そうやって、私を生贄にするケロね・・・!いいぜ、私は調整のプロ。デキるオンナはこんなアイタタタ、舞、足蹴にするのはやめるケロ!


かくして、ちしゃまいのバースデー場外乱闘の、第2ラウンドのゴングが鳴り響いたのであった・・・。


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