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「なっきぃ!」

寮に戻るなり、目をキラキラさせたみぃたんが、アメフト選手よろしくドカッとタックルをくらわせてきた。

「ぐえっ」

とっさに足を踏ん張って全身に力をいれたから、一瞬呼吸が止まるぐらいで済んだ。
みぃたんの無邪気で無慈悲な暴力行為。どういうわけか、私はそのターゲットになることがヒジョーに多いため、もう本能レベルで、最小限のダメージに食い止める術を身に着けてしまっているようだ。

「あ、あのね、みぃたん・・・私はともかく、くれぐれもおじょじょ、お嬢様に」
「あはは、細かいことはいいじゃないか!それより、座って座って!」

私の頭を片手でつかんで、寮のロビーのソファにぶん投げるみぃたん。・・・キュフフ、受け身の取り方なんて、一般女子大学生は知らないことだと思うんだけど・・・。身も心も、すっかりみぃたん色のアタシ、輝いてる!


「私ね、すごいことがわかっちゃったの!昨日、一晩寝ないで考えたんだ。一睡もしてないのに、何か元気!あははは」

興奮した様子で、そこまで一気に吐き出したみぃたんは、笑顔のまま唐突に黙り込んでしまった。

「・・・」
「あのね、みぃたん。いくらアタシがみぃたんの元補佐だったからって、それだけで何のことかわかったらエスパーだから」
「あはは、すごいね、なっきぃ!」

――まったく、相変わらず人の話を・・・。でも、この満面の笑顔を見ているだけで「まあいいや」なんて思わされちゃうんだから、やっぱりすごい人だ、みぃたんて。


「で、みぃたんは夜通し何を考えてたの?」

ひといきついて、話の軌道を修正してみる。

「私ね、思ったんだ。恋にルールなんてないんだね!」
「・・・はい?」

もうそろそろいいかげんにふっきらなければ・・・ってそれはいいとして、唐突に何の話をしているんだ、みぃたん。
例によって、また私が察するのを黙ってニコニコしながら待っているようだ。


「恋って・・・」


みぃたんからそういう単語を聞くのは、なんだか新鮮だ。
でも、そうか。みぃたんだって、もう大学三年生。
お友達と恋愛トークしたり、恋の悩みを持ちかけられたりすることだってあるだろう。
それに女子大とはいえ、ガッチガチに女子で固められた中高時代とは違って、単位交換やサークルの交流なんかで、他大の男子学生との交流だって・・・


「ま、まさかみぃたん」

みみみ、みぃたんが、恋を・・・!?

「ま、待って、みぃたん。そんな・・・そりゃあ、その美貌で今まで浮いた話ひとつなかったのがおかしいのかもしれないけど・・・」

なんだか、目の前のほえほえ笑顔の美人さんが、急に遠い存在になってしまったようで、焦燥感を覚える。
しかもさっきみぃたん、すごいこと言ってなかった?「恋にルールなんてない」とか・・・。
もしや、友達の彼氏を・・・!?っていうか、下手したら妻子ある人と・・・!

「ギュフーッ!!!」
「あはは、なっきぃ顔色が信号機みたいになってる!とか言ってw」
「み、みぃだん!!」

果たしてこの地球上、いや銀河系すべての惑星に、みぃたんのような超絶美人に好意を打ち明けられて、拒絶できるような男性などいるのだろうか(反語)。
だからといって、私はこの純粋培養の美人女子大生に、昼ドラみたいなドロドロした恋愛道なんて突き進んでほしくない。引き返せるのなら、今のうちにこのアタシが(ケロキュフッ)

「相手はどこの誰?!どんな人?」
「ん?もちろんなっきぃも知っている人だよ」

私も知って・・・え、まさか、学園の先生!ショショションナ!

「うぅ・・・」
「えーっ、どうしたの!?なっきぃ、泣かないで?」

こんな事態に、号泣せずにいられるわけないでしょうが!!
尊敬していた恩師・・・大好きな寮の仲間・・・そんな大切なものが、ぐらぐらと揺らいでしまってるのだから。

「でも、まさかこんなことに・・・ねえ?とかいってw」
「みぃたん、そんな軽く考えちゃダメ。これはとても大事なことなんだからね」

さすがに少し声を低くすると、みぃたんの表情もキリッと引き締まる。

「じゃ、じゃあ、聞くよ。みぃたん、その、人っていうのは・・・」
「うん、ほら、あの、よく熊井ちゃんたちと一緒に行動してる男の子。えーと、舞のことが好きって」
「ってあいつかい!!!!!!」

私は横っ飛びに吹っ飛んで、ソファの手すりに思いっきり頭をぶつけた。


「えー、なっきぃ、すごいね!芸人さんみたい!とかいってw」
「お、おお・・・そ、そんなことより、な、なななんでよりによって!」

私の脳裏に、あのデレデレーっとした奴の顔が浮かんでくる。
あかん・・・あれはアカン奴や。舞が好きと言いながら、友理奈ちゃんに付きまとってみたり、あの嗣永さんとかかわりがあるとか。
挙句の果てにお庭でのプールの日、おじょじょ、お嬢様のお屋敷に忍び込んだり(!)と、やりたい放題のとんでもない男子。なんで、みぃたん・・・いったい、何がどうなったら、奴を・・・

「キュフゥ・・・」
「まさか、こんなことになっちゃうとはねー、あははは」
「み、みぃたん、そんな他人事のように」
「んん?・・・あ、そうそう。肝心なもう一人なんだけどね」

肝心?もう一人?衝撃が大きすぎて、もはやみぃたんの言っていることが頭まで回ってこない。

「なっきぃ、なっきぃ、耳貸して!」

なぜかテンションの上がっているみぃたん。私の耳を半ば強引に引っ張り上げ、思いもよらぬことを言ってきた。

「あの男の子とね、・・・ふふふ、若執事さんだよ」
「ギュフーーーッ!!!」

ど、どうどう、どどうして、なんでなの、みぃたん!あんな冴えなi・・・地m・・・ええと、つまり、みぃたんとはあらゆる意味で住む世界の違う二人に!?衝撃的過ぎて、ぽっかり開いた自分の口から、魂が出ていくのが見えるようだ。

「み・・・みぃたんは、夜な夜な、あの男子と若執事さんのことを考えていたっていうの・・・?」
「そうそう!考え出したら止まらなくなって!恋って不思議だよねー!」

略奪愛じゃなくてよかった、と思うべきなのか?ここは・・・
しかし、みぃたんが間に入って揺れるにはどう考えても似つかわしくないΣ(少△年;)Σ(執△事;)二人の顔を思い浮かべて、さらに私の頭はこんがらがっていくのであった。




時系列的には件のBuono!ライブのすぐ後
つまり少年となっきぃ→大1、舞美ちゃん大3 のお話です
前後編です


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