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学校で、クリスマス会を開催したいわ。
そう岡井さんが言い出したのは、11月の頭のことだった。

「キュフフ、いいんじゃないですか?他には誰誘います?とりあえず、ここにいるみんなと・・・」

お昼休みの生徒会室。
お弁当を食べながらの雑談の最中、皆で耳を傾けながらうんうんとうなずく。

「ああ、違うのよ。親しい皆さんとの、ではなくて」

岡井さんは手にしていたバゲットサンドをそっと紙ナプキンの上に置くと、一際よく通る声で、「学校の行事として、クリスマスをお祝いしたいの」と目を三日月にして言った。

「ほー、行事として、かぁ」

あまり、自分発信で意見を言うことの少ない岡井さんからの提案だからか、茉麻はいったん箸を止めて、思案顔になる。

「そんなのより、今年は舞と二人っきりで過ごそうよ、ちしゃと」
「はーん?寝言は寝ていえや。あたしとお嬢様は聖夜ならぬ性y」
「言わせないケロ!」

いつもの三人組が、一斉にごちゃごちゃと騒ぎ出したところで、岡井さんは軽く眉をしかめた。

「個人的なパーティーのお話ではないと言ったでしょう。それに、舞はいつもクリスマスになると、意地悪を言うじゃないの。サンタクロースさんが、本当はいないだなんて・・・」

――え、なに、岡井さん。まだサンタさんとか信じてるんだ。
ふつーの友達だったら、ちょっとどうかと思うところだけど、岡井さんだからなあ。
枕元におっきい靴下ぶらさげて、ウキウキしながらベッドに入るところとか想像すると、可愛らしすぎてニヤニヤしてしまう。


「・・・でもさー、お嬢様」


ふと、私の右横、かなり高い位置から、くまくました声が降ってきた。

「げっ」

マジレッサー・熊井。よくも悪くも、正直余計なことを言い出すんじゃないかと、背中に冷や汗が流れ落ちる。

「ちょ、ちょっと熊井ちゃん」
「安心して、梨沙子。私は小さな子の夢を壊すようなことは言わないわよ。うふふ。大人のオンナのデキる気づかいっていうのは(ry」

今度は何に感化されたのか、熊井ちゃんは唇の前で人差し指を立てて、「うふん」とウインクをかましてきた。
舞ちゃんが寸でのところで吹き出すのをこらえるのが見えた。


「・・・で、ね。お嬢様。クリスマスを皆でお祝いするとなると、大変なことがあると思うんですよ」
「まあ、何かしら」

すると、熊井ちゃんはおもむろに電卓を取り出して、キリッとした顔で、ぐるりと教室を見渡した。

「だって、計算してみて。我が校は決して大きい学校ではないとはいえ、初等部~高等部まで各学年3クラスずつあって」
「ええ」
「1つのクラスにおよそ30人・・・ということは、30×30×30×・・・ぎゃふん!」
「さ、30、30がいっぱい、フガフガフガ」

自分の脳内で処理しきれなくなったのか、熊井ちゃんと岡井さんの頭が揃ってショートしたのがわかった。

「何なに、落ち着いて!」
「あわわ・・・だってそんな、そんなにたくさんプレゼントを用意したら、サンタさん破産しちゃうよ!武道館公演と同じぐらいの人数だよ!サンタさんかわいそう!」
「それは言いすぎでしゅ。大体ね、破産するとしたら、サンタさんじゃなくて生徒かあばばばば」

さっきまで熊井ちゃんは、“サンタさんいないけど信じてる子のためにいることにしておく派”みたいな立ち位置だったのに、すっかりブレちゃってる。まったくもう・・・。


「はい、はい!いったん落ち着いて!」

混沌としてきたところで、茉麻ママの鶴の一声。
皆が大人しくなったのを見届けたママは、岡井さんの方へ向き直った。


「クリスマス会、いいと思うよ。でも、実行するなら、詰めて考えていかないとね。ということで、お嬢様に宿題!
明日までに、クリスマス会でやりたいことを幾つか挙げておく。同時に、ちょっとこれはできないかな?というものを理由も添えて挙げておくこと。どう?」
「わかりました。素敵なクリスマス会を実行できるように、努めさせていただきます」
「先に言っておくけど、寮生のみんな。それから梨沙子に熊井ちゃんも、手を貸したらダメだからね。これは、お嬢様への課題なんだから」

おお・・・何かよくわからんけど、大ごとになった。
クリスマス会、楽しそうだけど。岡井さんの“課題”の成果次第ということなんだろうか。
先手を打たれたのが面白くないのか、舞ちゃんが口を尖らせて有原さんにちょっかいを出し始めた。


「はーん?」
「ああん?」
「ほら、ケンカしないの。・・・っと、とりあえず、時間がないからお昼食べちゃおう」

慌ただしく、でもいつもの感じでランチタイムは過ぎていく。
でも、私は思ったのだ。あの人たち・・・。手伝わない、なんて約束、本当に守れるのかな?なーんて。。



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