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――にしても、本当に今日はたくさん人が来ているなあ。

「まーちゃん!どうしたの?何でいるの?呼ばれたのー?」
「うおおヤッシー!ナマター!」

マサキは何気に顔が広いようで(地元のダンススクール関係者らしい)、うちの学校の制服の人たちとも結構楽しそうにワイワイやってる。
なんとなく手持無沙汰にしていると、ツンツンと後ろから背中を叩かれた。

「はい?」

振り向くと、割かし小柄で、小麦色っぽい肌の初等部の生徒が私をじっと見ていた。ちょっとぷにっとしてて、明るくてとっつきやすそうな雰囲気の顔立ち。あれ・・・どっかで会ったような。

「・・・鈴木香音。12歳。初等部。親友の鞘師里保とともに、陸上部に籍を置く。家族構成は・・・」
「はい、ストップもうわかったから」

どうやら、みずきちゃんのキモ・・・じゃなくて、人物名鑑(?)に掲載されていた人っぽい。可愛い子の情報は全部集めてるからね、うふふふ・・・とかなんとか言ってだような。
1個上か。みずきちゃんが年上は敬え、とか言ってたし、一応敬語だな、敬語。

「あー、ハルになんか用すか」
「うん、何か、さっき生徒会の人にこれもらって。周りにいる人に配ってほしいって言われたから」

そういって差し出してきたのは、さっき萩なんとかさんからもらった、あのカード。

「あ、それさっき貰ったんでハルはいいっす。あざっす」

すると、そのかのんさんという人は、目をパチパチさせて私を見つめてきた。

「・・・工藤遥さん、だよね」
「っス」
「最近千聖お嬢様と親しい初等部生って、工藤さん・・・」

お、なんだなんだ?嬉しいこと言ってくれるじゃん。
ちさとちゃんは人気者だから、うちの学校の生徒なら、誰でもその存在を知っている。
そんな学園の中心人物の関係者として、私も知られているってことか。ふっふっふ、名実ともに、確実にちさとちゃんと仲良くなっていっているということだな、こりゃ。

「あー、結構喋ったりしてるけど。何か、ウワサになってる?」

あ、やべ、タメ語。どうも親しみを覚えるキャラクターだから、ついつい言葉が崩れてしまう。
でも別に香音さんは気にしないタイプらしく、あはは、と快活に笑った。

「噂っていうか、あの千聖お嬢様と、っていうから。何か意外だなーって思って」
「そうかなあ」
「ま、それはそうと、工藤さんもやっぱり、千聖お嬢様狙いなの?そのカード」
「狙い?」

何のことだろう。まだその用途もわからないカードと香音さんを交互に見比べていると、ちょっとイタズラっぽく笑われた。

「あれー、もしかして、知らないの?私、カード貰う時に簡単に説明受けてたんだけどな。それとも、めんどいからちゃんと聞いてなかったとか?なんつって」
「それはありえない。ハル、ちさとちゃんのことだったら絶対聞き逃さねーし!」

――くそー、萩なんとかめ。わざとハルに、あんまり情報を与えてくれなかったのか。あの℃Sっぽいニヤニヤ顔を思い出して、私は軽く地団太を踏んだ。

「これはね、このカードを・・・」


“お待たせいたしましたー!それじゃ、次のイベントに参りまーす!”


その時、ステージ上から明るい声が聞こえてきた。

「あ、多分ちゃんと説明あると思うから、いっか。またね、工藤さん」
「あ・・・親切にどうも」

友達でも待たせていたのか、香音さんはとっとと後ろの方の人混みへまぎれていってしまった。
その背中を見送ってから、再度壇上でマイクを持つ人を眺める。
生徒会・・・っぽくはないな。もっとはっちゃけてそうな感じ。でも、司会やってるんなら、無関係ってわけじゃなさそう。千聖ちゃんとも関係あるのか?


「・・・徳永千奈美。高等部3年生。新聞部兼バドミントン部兼・・・」
「みずきちゃん、可愛い人が目に入った途端にキモ解説入るのやめろよな」

そのスラッと背の高い、徳永さんという人は、高くてよく通る声で、会場中の注目を即集めた。
さっきの千聖ちゃんたちと同じく、カラフルなサンタ帽・・・だけど、彼女はものすごく、おかしな恰好をしていた。
具体的には、体育の時に着る学校指定のジャージ。そこにサンタ帽を合わせてるもんだから、手抜きっつーか、やる気のなさすぎるサンタって感じで、かなり笑える。

“えー、私の恰好を見て、オメー、ココおかしいんじゃねーか?(AA略)とか思っちゃった人もいるかもしれませんがー、これには深い理由があるんで!みんな、カモンッ!”

徳永さんの呼びかけでワラワラと出てきたのは、さっきのクリスマスソングメドレーでは見なかった、生徒会の残りのメンバー。・・・と、何人か知らない人たち。プラス、出やがったな、でかリボンのももなんとか!

“はぁーい、みなさぁーん、おひさしぶりのももちでーす♪ウフフッ、皆のアイドルが再び学園に降臨しましたよぉー”
「桃子!桃子!僕のぴーちっち!!!!11」
「落ち着けみずきちゃん、お前のじゃねーぞ!」

髪を振り乱しながら連写に連写を重ねる、私の残念な友人を宥めながら、ももなんとかのその久しぶりの勇姿(?)を見つめた。

「・・・ぷぷっ」

ももなんとかも、徳永さんと同じく、サンタ帽のその下のコスチュームはジャージ。デカいリボンのツインテールが、サンタ帽を突き破っているというのに、着ているのはジャージ。
よく見れば、生徒会長さんやまつげくるんくるんさん、めっちゃ背の高い人など、今ステージにいる7人すべてが、その異様な装いだった。

“はい、はい!笑わないの!いい?ゲームの説明始めるよっ!・・・さっき、皆さんの歓談中に、生徒会と新聞部、それからクリスマス会実行委員で、とあるカードを配布しました。お手元にありますでしょうかー?”

徳永さんが頭上に示したのは、やっぱりこの、名刺サイズのカード。
ちゃんとまんべんなく行きわたってるらしく、周りの人たちは、カードを振って返答している。

“よし、OKですね!えーと、配った時に簡単に説明をしましたが、実はこのカード・・・”
“ねえ、ちぃ、ちょっと待って!”

ようやく説明か・・・というタイミングで、今度はすごい背の高い人が、ももなんとかのマイクを奪って徳永さんの隣に並んだ。

“な、なによ熊井ちゃんいきなり”
“うち思ったんだけどさ・・・カードは、受付の段階で配った方が良かったんじゃない?配って歩いたんじゃ、本当に漏れがないかわかんないし。それにさ・・・”

唐突に始まったダメ出し。何でこのタイミングで?裏でやればいいじゃんと思いながらも、そのあまりにも真剣すぎるまなざしに、口を挟む余地が全くない。

“ああ・・・まあ、そうだね、ま、それは次回の反省点として・・・”
“でもでも、持ってない人がいたら困るから、うち今ちゃんと確認するねっ!カード持ってない人―!正直に手を挙げてくだすゎーい!怒らないから正直に言ってくだすゎーい!!”

そんな必死の呼びかけにも関わらず(っていうか迫力ありすぎて・・・)誰もレスポンスを返さず、その大きい人はますますいぶかしむように眉をしかめる。

“あー・・・そうだよね、おとなしい人だったら言いづらいのかもしれない。よーし、それじゃ、一人一人・・・”

まさかこんなとこでストップがかかるとは・・・げんなりしてきたその時、“まあまあ、熊井ちゃん”と生徒会長さんが笑いながら口を開いた。

“もし万が一、持っていない方がいたら、後で生徒会の者に声をかけてください!予備はまだまだありますからね!・・・ほい、これでOK?熊井ちゃん”
“んー・・・ま、いっか!ほらほらいちぃ、ゲームの説明でしょー?先進めて!”

おお・・・手慣れている。私だったら思わず言い返して、あの大きい人とバトルになっちゃうところだろうに、さすが、懐が広い。
徳永さんも慣れっこなのか、軽く首をすくめてから、“じゃ、説明に戻りまーす”とさっさと切り替えた。

“お気づきの通り、皆さんの持っているカードは、今、目隠しのシールが貼られていまーす。
それをはがしてみてください、どーぞ!”

号令に従って、接着面をペリペリしていくと、赤色で温度の“℃”という記号が記されていた。

「なんだこれ?」

続いて聖ちゃんに貰ったカードも開けてみる、すると、そっちにはピンク色で温度の“℃”。これ・・・一体なんだろう。


“はーい、開けましたね!果たして、何色を引き当てたでしょうか!・・・ふっふっふ、皆さんには今から、このカードを使って、かくれんぼをしてもらいまーす!”

――わ、わからん。これで、どうやって?


ヘイ、寮生、カモン!なんて徳永さんの号令で、ちさとちゃんたちが壇上に戻ってくる。
壇上の14人・・・よく見れば、サンタ帽の色は7色で、最初にクリスマスソングのパフォーマンスをした、ちさとちゃんたちと、今ゲームの説明のために壇上にいた人たちで、対になっている。

青色のちさとちゃんは生徒会長と、紫色の萩なんとかはギャルッぽいすげー美人な人と、ピンク色の桃なんとかは、あのキック力はんぱない前の生徒会長さんと・・・といった具合に。

“勘のいい方ならもうお気づきでしょう!私たち、サンタ帽にジャージを着たメンバーは、それぞれプレゼントを1つ持っています!そして、そのプレゼントを用意したのは、同じ色の帽子をかぶっている人・・・つまり、オレンジの私の場合、副会長の中島さんということになります”
「遥ちゃん、頭、ついていっている?」
「お、おう。なんとか。・・・じゃ、ちさとちゃんのプレゼントは、生徒会長が持ってるんだな」

どうだろう・・・生徒会長さん、優しそうだけど、パワーありそうだしなあ。後ろから忍び寄って、吹っ飛ばされたりしたらたまったもんじゃない。

“はい、お静かにー!今から私たちジャージ組は、校内のどこかに隠れます。その私たちを見つけて、なおかつその場で私たちが出題するクイズに答えられた人に、プレゼントを差し上げまーす!
しかも、それだけじゃないんです!昨年の学園祭のビンゴゲームで大好評だった、生徒会メンバーがなんでも言うこと
聞いちゃうぞキャンペーンも復活しまーす!”
参考だかんな!

うおお、ちさとちゃんがハルのお願いを!???あばばば、そんな、でも(ry
豪華すぎるそのプレゼントに、わあっと沸き起こった歓声を、両手で“まあまあ”と遮る徳永さん。


“た!だ!し!これにはいくつか、ルールが付随します。
捕まえるといっても、暴力はダメ。破壊行為もダメ。数人で組んで探してもらってもいいですが、プレゼントをもらえるのは一人。まあ、ジャンケンで決めてもらおうかな。
それから、勝者には学校新聞に載ってもらいます。特集組んじゃいます。写真も載るし、今回は近隣の皆様にもご参加いただいてるイベントですから、当然外部にも配布します。
それをご了承いただける方のみ、どしどし参加してくださーい!”
“ちぃ、ちぃ。忘れてる。カードのこと”
“んあ?あー、ごめんなさーい、一番肝心なこと言うの忘れてた。
そのお手元のカードですが、皆さんは、そのカードと同じ色のサンタ帽を被った生徒会メンバーしか、捕まえることができませーん!
つまり、オレンジのカードを持ってる方以外が私を見つけても無駄無駄無駄ァ!というわけ!”

「ということは・・・えー!」

赤とピンクを持っている私が追いかけていいのは、まつげくるんくるんさんと、ももなんとか。
どっちかを見つけて、クイズに正解したら、前生徒会長さんか、・・・有なんとかさんのプレゼントがもらえる、という・・・。

「なんだよー・・・ちさとちゃんは・・・」

“はい、お目当ての生徒会役員のカードを引き当てられなかったあなた!もちろん、トレードもOKですよ?参加しない方から、回収するのもアリ。でも、限られた時間の中で、そんなに何枚もカードを持ってて本当に意味があるのかな?
ふっふっふ、二兎を追うものは”
“あー、千奈美、長いよー!!とにかく、今から私たちは隠れますから。20分後から、ゲームスタートです。
参加希望の方は、生徒会役員テントにて、受付を行ってください。
なお、不参加の方々には、料理部によるクリスマスケーキの調理パフォーマンス&実食会と、さきほどのクリスマスステージの第2部、ここでは皆さんも一緒にダンスを踊って楽しみましょう!聖歌の合唱もありまーす!”

ギャル美人さんが半ば無理やり話を切り上げさせて、いったんこの場はお開きになった。

「どうするー?」
「プレゼント・・・でも・・・」


周りの反応を伺ってみたところ、どうやら、全員がかくれんぼに参加するというわけでもないらしい。
私も正直なところ、迷っている。
張り切ってお目当ての人のカードを回収してる人もいるみたいだけれど、それで絶対にちさとちゃんのプレゼントを探し出せるという保証はない。生徒会長さん、手ごわそうだしなあ。

しかも、居残り組のイベント・・・ダンスや歌なら、むしろそっちのほうが、確実にステージに立つであろうちさとちゃんと一緒に居られるんじゃないか。
そう思うと、なかなか簡単に結論が出せない。
大体、新聞部にマークされるってのもなぁ。私と同じような理由で参加をためらっている人も多いのか、意外と居残り組も多いようだ。

「うふふ、どうするの?」
「みずきちゃんは?」
「私は残るわよ。写真、まだまだたくさん撮りたいからねえ」

「うーむ」

なるほど・・・。まあ、それなら私も居残っても、と考えが傾いて行ったところで、“すどぅ!どぅどぅどぅ!”といきなりタックルを食らった。

「いってーな!何すんだよマサキ!」
「どぅーはなにいろでしたか!」
「ああん?・・・カードなら、ほれ。赤とピンクだよ」
「うおおおおお」

マサキは私の手から赤いカードをひったくると、地鳴りのような雄叫びを挙げた。

「な、なんだお前」
「なりひらさんの!」
「なり?・・・いや、ありはらさん、だろ」
「ウフフ、遥ちゃんが訂正ツッコミだなんて。今夜は大雪かもしれないわねえ」
「ちゃかすなよ、みずきちゃん。何マサキ、これほしいの?」

マサキは満面の笑みで、うんうんとうなずく。・・・ほんと、変わってるよなコイツ。なんでまたあの℃変た・・・まあ、喜んでるしいいとしよう。

「じゃあさ、マサキのカードは?何だった?」
「んー」

マサキは急に口を尖らせて、じりじりと私と距離を取り始めた。・・・コイツがこういう態度をとるときは、だ。
またろくでもないイタズラを考え付いたのだろう。

「あひゃひゃひゃ」

案の定、突然マサキはくるりと方向を変え、ダッシュで逃げていこうとした。

「あっ待て!見せろ!カード!」

こ、こいつ意外と足速いな。
するすると人の間を潜って、マサキがどんどん離れていく。
闘争心に火が付いた私は、即座にその後を追って走り出した。

「あっひゃー!」
「待てコラ!見せろって!」

後ろから飛びついて、わき腹をコチョコチョしながら動きを封じると、ようやく奴は降参して、私にカードを手渡してきた。


「・・・あっ!」
「ドゥフフフ」

何ということでしょう。
マサキが持っていたカード。そこに記されていた“℃”の記号は、鮮やかな青色に輝いていた。


「それ・・・」
「ちさとーの!どぅーにあげる!」

一度、そのカードを目にしてしまったら、もう私の気持ちは決まったも同然。

「・・・プレゼント、絶対ゲットしようぜマサキ!」
「わっしょい!」

かくして、私たちは意気揚々と受付に向かうことになった。



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