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――やはり、生徒会長ともなると、学校のこととか、隅々まで把握しているんだろうなあ。

高等部の昇降口あたりで青色のサンタ帽を探しながら、私は一人、そんなことを考えていた。

ちさとちゃんからの、たった一人だけのために用意されたクリスマスプレゼント。
それをゲットするためには、まず、校内のどこかに隠れている、生徒会長さんを探し出さなければいけない。
ちさとちゃんはさすがというか、やっぱりすごい人気があって、さっきからすれ違う人の手元を見ると、結構な確率で、青色のカードを所持している。


「愛理さんのプレゼント、もう引き渡し先が決まっちゃったらしいよ」
「嘘!?まだ始まってすぐじゃん!」

そんな気になる会話もちらほらと耳を掠めていく。・・・ほんと、まだ10分も経ってないんじゃねーの。よっぽどかくれるのが下手だったんだろうな、鈴木さんのペアだった人は。
その点、生徒会長さんって手ごわそうな感じがする。
学校の、考えもしないような場所に隠れてそう。しかも、見つけたとしても、そこで終わりじゃない。クイズに答えなければならない。
勉強系は絶対ムリだし、私にはなかなか高いハードルだ。だけど、ちさとちゃんのプレゼント。どうしてもあきらめるわけにはいかない。ちさとちゃんのことなら何だって知りたいし、ちさとちゃんに関係のあるものならできるだけ全部手に入れたい。
戦いであれば勝ち上がる自信はあるけれど、生徒会長さん、全っ然そういう雰囲気ないしなぁ・・・。しかし、諦めるわけにはいかないのだ。

「・・・ん?」

ふと、右肩の当たりにチリチリするような違和感を感じる。
振り向いても、そこには誰もいないし、何もない。だが、私は即座に口を開いた。


「誰かいるんでしょ?ハルに何か用っすか」

私が感じた違和感・・・それは、“視線”だ。実際に何かが体に触れたとか、そういうことではないんだけれど、経験上、なんとなくわかる。

案の定、何人かの上級生が、ふてくされたような顔で、私の前に現れた。

「何すか」
「あなたでしょ、工藤さんって」
「はあ」

なんだなんだ、喧嘩でも売られるのか。
見たところ、さほど戦闘民族臭はしないんだけど、言葉がとげとげしいっつーか。
手元を見ると、青い“℃”が入ったカードを持っている。ということは、ライバルってわけか。

「あなた、千聖お嬢様になれなれしくしすぎなんじゃない?」
「一般人のくせに」

――はいい?


「別荘にまで行ったんですって?お嬢様のご迷惑を考えなさいよ、これだから初等部は」

ああ、要するに、嫉妬ね。めんどくせー・・・。


「ハル、プレゼント譲る気ないっすよ」
「なんですって」
「ちさとちゃんに近づけないからって、こっちに八つ当たりするのはおかしいと思いますけど」

どうやら私の指摘は的を射たものであったらしく、上級生たちは怒りで顔を真っ赤にしているものの、それ以上言い返してくる様子はない。
私だって別に、変な八つ当たりさえしないでくれるなら、これ以上揉めるつもりもない。そんなことよりも、今は生徒会長さんの居場所を見つけなきゃならんのだし。

「じゃ、お互い頑張りましょう。ッス。」

とりあえず穏便に、と頭を下げて、一度校舎を出てみることにした。
校庭側から中廊下を目指して小走りになっていると、・・・まただ。さっきと同じ、チリチリするような妙な感覚。

「あのー、なんなんすか」

私は結構、耳と勘はいい方だ。振り向いて声をかけると、やっぱり、あの上級生たちがついてきていた。

「ついてこられても困るんすけど」
「ついて行ってなんかいないけど?偶然同じ方面を探してるだけじゃない?」
「はぁ?」

クスクス、ニヤニヤ。すげえやな感じだ。こういうの、イライラするんだよな。同級生や下級生なら、この場でしかるべき手段にでているところだけど、一応みずきちゃんの教え(上級生は敬っておいたほうがいいわよウフフ)が私の気持ちを何とか押さえつけている。


「ハル、マジで生徒会長さんの居場所なんて知らないっすよ。ついてきたって時間の無駄じゃないですか」
「えー?なんのことだろ。自意識過剰なんじゃない?」

――あ、ヤバイ。このままこいつらと会話してたら、絶対取り返しのつかないことになる。
しかし、“それ”をやってしまえば、ちさとちゃんにどう思われるか。私の行動にブレーキをかけてくれているのは、いつもちさとちゃん。・・・見ててくれ、ちさとちゃん。ハルは、ちさとちゃんが恥ずかしくないような立派な(ry


「あっそーっすか。そりゃ失礼しました。じゃ、ハルいなくなっても問題ないっすね」
「え?」

言うが早いか、私はロケットダッシュでその場から逃げだした。

「あっ、逃げた!」
「待ちなさいよ!」

んだよ、やっぱり尾けてたんじゃねーか!
校庭から渡り廊下へ滑り込んで、廊下の太い柱の陰に身をひそめる。
バタバタと探し回る音が近くを通過して、遠く離れていったところで、私はため息を1つついて、くるりと振り返った。


「ねえ」
「うっわあびっくりした!」

そこにいたのは、さっきの奴らとは違う・・・っていうか、制服がうちの学校のとは違う、まったく見覚えのない人だった。

「いきなりごめんなさい」
「ああ、別に、いいっす。何か、ありました?」

もしかして、ゲームに参加してて、迷っちゃったのかな?なんて思って聞いてみると、彼女は首を横に振った。
大人しそうな感じの顔。中学生・・・ではなさそうだな。落ち着いてるし。ハルがイメージする、男にもてそうなタイプって感じ。清楚系っていうの?


「さっきの遣り取り、物陰から見てたんだけど。助けてあげられなくてごめんね」
「お?・・・ああ、別にあんなの、うん。ハル全然気にしてないし」

小学生がいじめられてるとでも思ったのかな。どうってことないのに。
だが、彼女の本題はそれではなかったらしい。
私からの返答に微笑した彼女は、スッとカードを見せてきた。

「青っすか」
「そうですねえ」
「もしかして、ハルのこと当てにしてるとか」

すると、彼女はまたなぜか楽しげに微笑んだ。
さっきの人たちと違って、小ばかにされてる感がないからか、別に腹が立ったりはしない。マイペースで、不思議な感じ。なんとなく、ちさとちゃんに雰囲気が似ているような。

「ううん、むしろ、逆かも、なんて」
「逆?」

すると、彼女は意外なことを口にした。


「花音・・・私の友達がね、生徒会長さんの居場所を見つけてくれたの。だから、あなたと行こうかと思って。・・・あなたと、勝負をしたいと思って。ふふふ」



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